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クリエーターたちの挑戦
Igarashi Hisae
五十嵐久枝さん(インテリアデザイナー)ものの「形」を通して心に語りかけるデザイン
店舗や家具のデザインを中心に活躍する五十嵐久枝さん。第12回にご登場いただいた榎本文夫さんと同じく、日本を代表するインテリアデザイナー、倉俣史朗さんの最後の弟子の一人だ。しかし、「素材から発想することが多い」と語った榎本さんとは対照的に、五十嵐さんは今、「デザインは、やはり形では」と考えているという。そのきっかけとなったのは、「ハート」をモチーフにつくった、子供用の小さな椅子(いす)だった。
 
問「ハートモチーフの椅子は、最初、展示会用につくったそうですね」
 「小学生のための椅子」というテーマを与えられたので、1、2年生ぐらいの小さな女の子を想定してデザインしました。その子が小さいうちに座るのはもちろん、成長して椅子としては使えなくなっても、ベッドサイドに置いて慈しまれるような、そんな椅子をイメージしています。

  体が小さかったころの感覚は、大人になると忘れてしまいます。小さな椅子は幼少時の感覚をよみがえらせ、記憶を呼び覚ますよすがになるのではないでしょうか。
「open heart」2000年(写真:藤塚光政)
 ハートというモチーフはあまりにも直接的で、日常の仕事ではなかなか使う機会がありません。この時は1回限りの展示会だったからこそ、思い切って使えたんです。それが思いがけないほどの反響をいただいて、量産の可能性を探ることになりました。

 1作目の「open heart」は曲げ木ですが、ハート部分のカーブがきついので加工が難しく、とても量産できるようなものではありません。そこで、成形合板を使うデザインに変更し、サイズも少し大きくしたのが2作目の「open heart」です。
「open heart 」2001年(写真:藤塚光政)
 私にとって「open heart」シリーズが新鮮だったのは、それまでになかったほどストレートな反応が得られたことです。たとえば、シンプルなデザインが琴線に触れたとしたら、「ああ、いいな」と心の中でつぶやくのが普通でしょう。でも「open heart」の場合は「かわいい!」と思わず声に出すような反応が返ってきたんです。直接的な形は、直接的な反応に結びつくんですね。
 
 もちろん、いい反応ばかりとは限りませんが、形によってさまざまな反応が引き出されることが面白くて楽しくて、ハートのモチーフでもう一つ椅子をつくりました。それが「heart to heart」というスツールです。今度はハートが水平になって、お尻の形にも見えるし、並べると四つ葉のクローバーにもなるという、少し発展した形です。
「heart to heart」2002年(写真:村角創一)

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