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鈴木敏彦さん(建築家)空間に機能を与える道具“モバイル・アーキテクチャー”
問「“建築と家具の中間”とは、たとえば最近分譲マンションにも導入されているSI(スケルトン・インフィル)のインフィルとは違うのですか」
 今言われているSIは、あらかじめ壁や設備の位置を変えやすい構造にしておき、リフォームで“間取り”を変えることに主眼を置いています。“間取り”は依然として建築に付属しています。

 これに対して、私が考えるのは“間取り”そのものを建築から切り離すことです。建築には、がらんとした空間があるだけでいい。それを、家具と間仕切りを兼ねた“動く道具”(=モバイル・アーキテクチャー)によって使いこなせば、より自由度が高くなります。
動く家1 動く家1
動く家1 動く家1
動く家1 写真/Sadamu SAITO
 上の写真はマンションの改装ですが、建築については、既存の間仕切り壁と内装材を撤去して、何もない空間に戻しただけ。キッチンセットもクロゼットも可動式で、取り外して引っ越すこともできます。どちらも家具よりは大きなスケールを持ち、空間の使い道を決める機能を持ちます。

 調理が終わったキッチンセットの上に天板をスライドさせると、ダイニングテーブルに変わります。同じ場所が、台所から食堂に変わるわけです。クロゼットは可動間仕切りを兼ねており、ワンルームを2室に分けることもできます。建築に手を加えなくても、プロダクトを移動するだけで空間が変化するのです。
動く家2
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動く家2 写真/Sadamu SAITO
 これからは、50年、100年と長持ちする建築が求められます。しかし、その間もライフスタイルは変わるし、使う人間は交代する。変化に柔軟に対応するには、空間の機能を、建築でもなく家具でもない中間的なプロダクトに担わせることが効果的だと思います。移動可能なモバイル・アーキテクチャーが、動かない建築を持続可能にするのです。

インタビューを終えて
「モバイル・アーキテクチャー」という魅力的な言葉の意味が知りたくて、インタビューに伺いました。どうやらそれは、従来の建築より小さい“動く建築”と、従来の家具より大きい“動く家具”に分類できそうですが、どちらも“空間を変える”働きは共通しています。移動し、変化させることで持続可能性を目指す。鈴木さんのモバイル・アーキテクチャーがこれからどう発展していくのか、まだまだ興味は尽きません。

「クリエーターたちの挑戦」は今回が最終回です。
長い間、ご愛読ありがとうございました。
(萩原詩子/フリーライター)

鈴木 敏彦(すずきとしひこ)

建築家
東北芸術工科大学助教授

1984年、工学院大学大学院建築学科修士課程修了。黒川紀章建築都市設計事務所、フランス新都市開発公社EPA marneを経て、1990年、鈴木敏彦一級建築士事務所設立(2002年アトリエOPAに改称)。1992~1993年、文化庁芸術家インターン、1995~1999年、早稲田大学大学院建築学専攻博士課程、1999年から東北芸術工科大学生産デザイン学科助教授。一連の「モバイル・アーキテクチャー」をはじめ、家具、プロダクトを、国内外の見本市や美術展で発表、デザイン活動を続けている。



■連絡先
アトリエOPA
〒106-0044 東京都港区東麻布2-6-5
TEL/FAX:03-3589-1009
e-mail:tsuzuki@product.tuad.ac.jp
URL:http://www.product.tuad.ac.jp/suzuki_lab/
鈴木 敏彦さん

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