デザイン性に優れたハイグレードな住まいを紹介。建て主の意見を盛り込みながら、建築家が自信作に込めた意図を読み解きます。 >バックナンバーはこちら >3月までの連載はこちら
No.010
大パノラマを楽しみながら
“棚田の風景”そのものに住む
広島県安芸高田市
H・Mさん宅
大量の石を積み上げて建物の壁や敷地の擁壁(※)としているMさん宅には、独特の重量感と質感があります。この石は、もともと棚田の一部だった敷地から出たもの。そのため、石垣で補強した棚田の風景にしっくりと溶け込んでいます。また、壁の大部分をガラス張りにして、日々の暮らしの中で豊かな自然のパノラマを満喫できることも大きな特徴。先祖代々暮らすこの土地に強い愛着を持つMさんと、敷地条件を生かしたデザインを心がける建築家の土井一秀さんの思惑が一致して、このようなスタイルの家が生まれました。一部の石積みの作業にはMさんご一家と、すぐそばで暮らすご両親、そして土井さんも参加。Mさんは、「自分で積んでみて、ご先祖さまが棚田を造るときはさぞ大変だったろうと、感謝の念をあらためて抱きました」と語ります。
※土地の段差部分が崩れないように補強する壁。
ロケーション
敷地は、小高い山の北面にある緩傾斜地。南側に山林を背負い、北側で道路に接する棚田の一部を改修しました。住居から見下ろした道路の先にも水田が広がる、のどかな田園風景の中にあります。
いちばんのこだわりスペース
LDから一望できる
重厚でぬくもりある石の壁
Mさんにとって最も思い入れが深いのは、何といっても石積みの部分です。ガラスを大胆に使った室内からは、重厚でありながら手仕事のぬくもりを感じさせる、新旧の石垣を一望することが可能。Mさんは、「この家も時間が経てば、元からあった石積みと同じ色になっていくはず。それが今から楽しみです」と語ります。
建て主からの要望
- ● 自然に包まれた、突き抜けたデザインにしたい。
- ● 田舎ならではの良さを生かしたい。
- ● 建て主の家族に寄り添うような住まいにしたい。
建築家からの提案
- ● 敷地から出た石を、躯体や擁壁に余すところなく活用。
- ● 壁の大部分をガラス張りにして風景を楽しめるように。
- ● 日差しや風の流れを生かして、室内環境を快適に保つ工夫を凝らした。


