|
建物の四周にデッキを巡らし、外から室内へ直接出入りできるようにした家です。出入り口は、玄関のほか居間や浴室など全部で6カ所用意しました。
東京近郊のベッドタウンに住む建て主は、夫妻と小学生の長男という3人家族。ご主人はサッカー部出身で、小学生の長男もサッカーが大好きです。
長男が練習で泥だらけになって帰ってきても、室内が汚れないようにしたい。そんな意図から、浴室や玄関横のシューズ・イン・クローゼットにもデッキから直接入れるようにしました。もちろん、デッキではボール遊びもできます。
周囲に建物が近接する都市型の住宅では、光を取り入れやすい2階にリビングを置くのが一般的かもしれません。しかし今回は、1階に台所と居間・食堂を並べ、デッキを介して周辺とのつながりを重視した構成にしました。居間に面したデッキには外部への目隠しを兼ねた植栽を配し、室内から緑を楽しめるようにしています。
室内空間の中心になっているのは、木製のらせん階段です。特に2階ではらせん階段から放射線状に壁を延ばし、階段を取り巻くように個室を並べました。
2階は部屋ごとに傾斜屋根をかけ、扇風機の羽根のようにずらしながら屋根を連ねています。屋根のすき間はハイサイドライトに利用し、外光を取り入れました。個室のいくつかの壁は天井まで立ち上げず、上部で空間を一体化。主寝室と子ども室はテラスを挟んで互いの気配が感じられるようにするなど、部屋同士のつながりを意識しました。
木製らせん階段について、もう少し説明しましょう。
1階のらせん階段は、空間の中に露出させました。当初は壁で覆う予定だったのですが、圧迫感を減らし、室内の一体感や開放性を高めるために現在の形に変更しています。
階段には、国産スギ間伐材を用いた36ミリ厚さの板材「Jパネル」を利用しました。らせん階段は鉄骨を使うのが一般的ですが、木製の板を切断して組み合わせる今回の方式は、大工だけで作業ができ、コスト面でも安く抑えられるのが特徴です。外周の柱と板材だけで階段を支える構造にしたのも、らせん階段の中心に柱を置く場合に生じる納まりの複雑さを避け、加工の手間を楽にする狙いがありました。
らせん階段では、上り下りする際の揺れやたわみが気になることも少なくありません。その点、スギ板材の階段は足元ががっちりしているので安心感を与えます。その後、財団法人ベターリビングの試験を受けて、住宅用階段としての安全性も確認しました。
ここは、かつて縁側で囲まれていた家を洋風にしたような、外との関係を重視した家です。子どもが階段を駆け上ったり下りたりする姿や、外のデッキと自由に出入りする姿を身近に見ることができ、個室も閉じた箱ではなく互いの気配が感じられます。我々は、いくつかの設計の工夫により、そんな生活を望んでいた家族の生活スタイルにふさわしい形を整えたのです。
(平木繁/シゲルヒラキアーキテクト)
|