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Housing File 202「二子新地の住居」

建て坪10坪の小さな箱に 無限の広がりを生む光の連鎖



 路地状の敷地に建つ、典型的な都市型住宅です。路地部分が長さ11メートルもあり、建て坪はわずか10坪しかとれません。周りを隣家に囲まれている中で、どうすれば広がりのある住空間がつくれるだろうかと考えました。

 建物は、外側から見れば3階の高さのシンプルな直方体ですが、内部は、スキップフロアの6つのレベル、2層の吹き抜け、階段室に分かれ、それらが相互につながりあって、入り組んだ関係をつくっています。

透明図

 玄関を入って正面北側は、地面と同じレベルのアトリエ。ここは、建て主がバイクを乗り入れて、その整備をしたり、趣味のDIYを楽しんだりする場所です。一方、玄関の西側は地面を少し掘り下げて寝室を設け、その上に、2階ダイニングキッチン、3階ゲストルームを重ねました。

 アトリエの上に当たる2階リビングは、ダイニングキッチンより3段高くなっています。2つは視覚的につながった空間でありながら、段差によってはっきりと仕切られているわけです。

 リビングは、路地に開いた南面の窓に加え、隣家の庭を望む2面の窓を持ち、外光が直接差し込みます。これに対し、ダイニングキッチン側の壁面には、換気用の窓しかありません。太陽の光は、ダイニングの6メートル上にあるトップライトから、光の井戸のような吹き抜けの中を反射しながら落ちてきます。かたや気候の変化を直接感じる場所、かたや外の天気にかかわらず、いつも柔らかな光に包まれる場所で、それぞれ個性が異なります。

 さらに、この住宅のもうひとつの特徴は階段室です。都市型の狭小住宅では、階段を居住空間の中に取り込む例をよく見ますが、ここではあえて、階段室を独立させました。1階から2階、2階から3階への階段を上下に重ね、その上にトップライトを切っており、ここもやはり、光の井戸のような空間です。

 動線は、玄関から2階ダイニングキッチンへ、振り返って3段上のリビングに至り、そこから右に折れて階段室に入り、さらに体の向きを変えて3階へ、とらせん状に上昇します。各居室から階段室の中は見えませんが、トップライトの光がにじみ出て、空間がどこかへと続いていく気配が感じられます。その見え隠れの効果が、小さな建物の中に無限の広がりを生みます。

 私は、自分の“スタイル”をつくることにこだわりません。この住宅の場合、建て主の好みがはっきりしていましたから、そのスタイルが現れていると思います。そうでない場合には、人の暮らしの「冗長性」を考慮して設計します。つまり、住まいというものには、人間の生活に伴う雑多な要素が、延々と持ち込まれ続けるものだということです。住宅という建築空間は、その冗長性を受け入れても揺るがない、確かな包容力を備えているべきではないかと考えています。
(島田陽/タトアーキテクツ)

二子新地の住居

建築データ
  所在地: 神奈川県川崎市
  竣工: 2010年1月
  敷地面積: 77.63平方メートル
  建築面積: 35.05平方メートル
延べ床面積: 92.45平方メートル
  構造・規模: 木造、地上3階建て
  設計: 島田陽/タトアーキテクツ
  施工: 成幸建設
  写真: 北村光隆
連絡先  
  タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所
  代表: 島田陽
  住所: 〒650-0002
兵庫県神戸市中央区北野町2-13-23
  TEL: 078-891-6382
  FAX: 078-891-6620
  E-MAIL: daaas@e.email.ne.jp
  URL: http://tat-o.com/
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