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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 05  「nooks(ヌークス)」

自分だけのカフェがある家、コーナーを活用した憩い空間
自分だけのカフェがある1階スペース
コーヒーが好きな施主のためのカフェ。本当のお店のように椅子が並んでいる。名前は「クローズ・カフェ」。友達が来たときはシェフのマネごとをしてみたり。

アイデアが浮かぶコーナー
2階北側のコーナーには、傾斜屋根に設けた細長い天窓から光が落ちてくる。大きなソファーを置き、本を読んだり、壁にプロジェクターで映しだした映像を見ながら、アイデアを浮かべたりすることもあるという。

小さな隅っこ(nooks)をたくさん 光と緑を取り入れるスリット窓 エントランスから裏の畑へ視線を抜く
南側の壁は床から天井まで本棚。中央にある白い壁に、プロジェクターの映像を映し出す。ロフトの壁2面にも本棚がある。ロフトへの梯子は左右の移動が可能。小さな「隅っこ」があちこちに散りばめられ、好きな場所で本を読んだり、考えごとができる。
1階の床から屋根まで連続した窓が、室内から畑への視線を開く。土埃や風を考え、窓は開かないが、別の場所に換気用開口をとっている。
何の変哲もない表の通りから裏の畑の広大な空間が感じ取れるよう、建物の屋根を大胆に傾斜させている。地面から空までつながる風景。ガレージを通りに向いて開き、訪問者を迎え入れる。ガレージの上はテラスになっている。

畑と住宅地の境界線に建つ、白いシャープなフォルム
南側は畑が一面に広がる市街化調整区域。北側は区画整理された住宅街。その境界線に接してこの住宅は建っている。

 北側は整然と区画分けされた閑静な住宅街、南側には市街化調整区域の畑が一面に広がっている。その境界線に接してこの住宅は建っています。施主は30代のデザイナー。自分が子供のころから育った家を建て直したいと、僕たちの事務所に相談に見えました。両親はすでに地方へ移り住まれているので、彼ひとりが住まう家にしたいとのことでした。

  彼の職業柄、コンピューターがあれば比較的どこでも仕事ができるので、普段から気に入ったカフェを仕事場にすることも多かったそうです。それで「カフェのある家」をつくろうということになりました。「カフェ」という言葉に含まれた潜在的なニーズを探るために、僕たちは打ち合わせに毎回違うカフェへ出かけました。

 そこからくみ取った彼のニーズは、「サード・プレイス」としての自宅を望んでいるということ。つまりオフィスでもない、家でもない、パブリックとプライベートの中間にある場所が、彼にとって一番落ち着く生活の場なのだと。そこで、その希望を生かすよう設計を進めていきました。

 1階は彼専用のためのカフェになりました。お店のように椅子やテーブルが並んでいますが、頻繁に人を呼ぶことはありません。彼は「クローズ・カフェ」と名付け、「遊び」としてメニューやホームページもつくっているそうです。ガレージとの境にある扉は90度回転し、車を移動させれば外部と一体のオープンスペースになります。

 2階とロフトは彼のアトリエであり、ライブラリーであり、眠る場所です。CDやDVD、書籍のコレクションが多いので、壁一面の本棚をつくりました。特にどの場所で仕事をし、睡眠をとるかは決まっていません。それは、彼がその時の気分で決めているそうです。彼が心地よく過ごせるように、空間のあちこちに違った表情の小さな「隅っこ(nooks)」を散りばめています。

  僕はどの施主に対しても初めに、長いスパンで考えたとき起こるであろう生活の変化にどう対応するかを、一緒に考えてもらうようにしています。その上で「今どうしたいか」を大切にしながら設計を進めていきます。

  将来、発生するであろう課題に家をどう適合させるかは、無限の方法論があります。その妥当性を求めて、この家に厳格なプログラムを与えても、あまりよい結果を生みません。将来像というものは不確実ですから、逆にどんなふうにも対応できる余裕を残しておくようにしています。

 住宅に求められるのは、丈夫で安全で快適であること。もちろんそれをクリアした上で、僕たちは、施主本人も気付いていないニーズを探り出していきます。そのニーズを空間に生かして、まとめていくのが、設計の仕事です。

 この家も対話の中から「彼の望むもの」を探り、それをまとめていった結果として、用途を限定しない空間を多く持つことになりました。彼の今の生活を大切に考えればこその家です。だから、竣工した家を見て、「そうです。僕はこういう場所が好きなんです」と言ってくれた時は、本当に嬉しかった。

 僕は、施主が家に対して愛着を持てるような工夫を怠ってはいけないと思います。愛着がない家は、どんなに性能のよい家でもくたびれてきます。家に愛着がわけば、大事に住もうと思う、メンテナンスにも気を配る、それが家を長持ちさせることにつながる、と考えています。
(内海智行・ミリグラムスタジオ)


「nooks(ヌークス)」


建築データ
  所在地: 埼玉県新座市
  家族構成: 男性1人
  竣工: 2002年6月
  敷地: 120.12平方メートル
  建築面積: 63.41平方メートル
  延べ床面積: 126.55平方メートル
  構造・規模: 木造在来工法(一部鉄骨造り)、2階建て+ロフト
  総工費: 2300万円(外構除く)
  設計: ミリグラムスタジオ/内海智行 担当:竹田和正
  写真: 平 剛
連絡先
  ミリグラムスタジオ 一級建築士事務所
  代表: 内海智行
  住所: 〒150-0033
東京都渋谷区猿楽町10-14
代官山パシフィック401
  TEL: 03-5456-5615
  FAX: 03-5456-5616
  E-MAIL: info@milligram.ne.jp
  HP: http://www.milligram.ne.jp
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