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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 07 「保土ヶ谷の家2」

造成地に生まれた浮遊住宅、建物と土地の新しい提案

透明空間のマジック
透けた階段とポリカーボネイトで仕切った収納スペースが、地下階から2階まで建物を貫抜く。透過する光がモアレを起こす、アート的な楽しい空間

生活必需「ユーティリティースペース」
建物と隣地の擁壁に囲まれた北側の庭には、視線を遮るために物置を設け、洗濯物干場などのユーティリティースペースとした。庭に面する窓が、リビングの閉塞感を和らげる
敷地に浮かぶ居住空間
船のような形をした造成地の上に建つ建物。南側角地の庭に、ハナミズキを植え、外からの視線を遮った
ユニークな発想から生まれたパーキング
東西の道路をつなぐように擁壁および盛土部分を切り取ってつくられたパーキングとエントランスのスペース。建物の基礎をパーキングのレベルに置き、構造面の安定性を確保した

リビングはホームシアター
リビングの南面の大きな窓は、日差しをふんだんに取り込む。引き戸形式のスクリーンを閉めると、臨場感たっぷりに映画を楽しむホームシアターに早変わり

「見せる」エントランス
パーキングから、ポリカーボネート製の仕切りパネル越しに書庫スペースを見せ、暗くなりがちな地下スペースに開放感を与えた

自然を楽しむ和室
「住む人」自身がこの部屋に合わせてコーディネートしたリビング&ダイニング。桃色のソファーを黒い布に張り換えた

 施主は30代半ばの自動車メーカーのエンジニアで、大変な車好き。奥さんは、数多い本のコレクションを所有する、美術館の学芸員。それまでは近辺の建売住宅を買って住んでいたのですが、それぞれの趣味やライフスタイルを確立できる家に住みたいと、土地を探すところから、一緒に家づくりをスタートしました。

 数十カ所の土地を検討した結果、見つけた敷地は、変形した四辺形。造成地の南側斜面にあり、船の舳先のような形をしています。北側の1辺が隣地に接しているほかは道路に面しているのですが、敷地は擁壁の上で、道路から直接アプローチすることはできません。そこで、ご夫婦の2台分の駐車スペースを確保するために、擁壁および盛土部分を、敷地のほぼ中央で東西の道路をつなぐように切り取って、パーキングとエントランスのスペースとしました。

 居住部分はこの上に載っています。建物の基礎は、このパーキングのレベルにあり、古い擁壁には負担がかからないため、構造的にも安心です。結果的に居住部分は、地面から浮く形となるので、ステンレスのトラス構造で支えています。

 建物を敷地の中央に配置したので、南北に庭ができました。建物と隣地の擁壁に囲まれた北側の庭には物置を設け、砂利敷きとして、洗濯物干場などのユーティリティースペースとしています。南の庭は芝生とし、ハナミズキの木を植えました。これは、室内のプライバシーを守るスクリーンであると同時に、周囲の造成地の中における「大きなプラントボックス」のような存在にもなっています。

 パーキングからは、建物の地下部分に設置した収納スペース(書庫)を、ポリカーボネート製の仕切りパネル越しに見ることができます。ポリカーボネートパネルで仕切った収納スペースが階段に沿って各階を貫き、室内に統一感を生みだしています。また、半透過性のパネルは、収納物をインテリアとして見せる効果を持つとともに、閉塞感を抑えて、空間をより広く感じさせます。

 1階はワンルームとしてリビング、ダイニングキッチンを配置。南面の大きな窓には、引き戸形式のスクリーンを収納しました。これは、ご夫婦の趣味である映画鑑賞を楽しむ、ホームシアター仕様としたもので、周囲の壁を黒くしたのもそのためです。ソファーやテーブル、椅子は、ご夫婦自身がこの部屋に合うものをコーディネートし、手持ちのソファーの布を張り直したり、新たに買い足したりしています。

 2階には、寝室と予備室、浴室があります。予備室は、ご両親や友人などが泊まることも想定したスペースです。南西面に地窓を設置して、直接目に入る強い光は遮り、やわらかい光を間接的に採り入れるよう設計しました。

 「どんな暮らしをしたいのか」。家は、住む人のイメージからつくりあげられるものです。私は、住宅の設計には一般論はない、そして、決まったスタイルに固執したデザインを押しつけることは正しくない、と考えています。また、建て主の生活に必要以上に介入したり、細かく規定することは避けたいとも思っています。建築家の仕事は、敷地と向き合い、周りの環境との関係を考えながら、「建主の生活の背景となるような空間」を提案していくことではないでしょうか。
(佐藤光彦・佐藤光彦建築設計事務所)


「保土ヶ谷の家2」


建築データ
  所在地: 神奈川県横浜市
  家族構成: 夫、妻
  竣工: 2001年7月
  敷地: 142.17平方メートル
  建築面積: 41.02平方メートル
  延べ床面積: 96.06平方メートル
  構造・規模: 木造+鉄骨造り+鉄筋コンクリート造り
  総工費: 約2500万円(植栽、冷暖房工事を除く)
  設計: 佐藤光彦(佐藤光彦建築設計事務所)
  写真: 佐藤光彦建築設計事務所
連絡先
  佐藤光彦建築設計事務所
  代表: 佐藤光彦
  住所: 〒108-0074
東京都港区高輪2-15-15
栄光高輪ビル4F
  TEL: 03-5795-4052
  FAX: 03-5795-4053
  E-MAIL: msaa@msaa.jp
  HP: http://www.msaa.jp
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