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Housing File 08 「木箱・八千代の家」

回遊を楽しむ一大住空間、変化に自在に対応する「木箱」の家

白で統一された一室空間
構造材の白い肌と大理石によって、圧迫感から開放された空間。オリジナルのキッチンは、レストランの厨房を思わせるざん新なデザイン

窓に囲まれた「箱の家」
東西南面に大きく開かれた窓から、室内空間を回遊するための「移動装置」が顔を見せる
オブジェのような螺旋階段
広い空間にポンと置かれた階段は、窓からの光を受けて様々なシルエットを描く
回遊できる室内空間
視線を遮らないスロープと階段は、空間を楽しむための移動装置


  「室」の概念を超えた一大空間 自由自在、手づくりスペース
 
高さ2.4メートルのポリカーボネート製の扉を開ければ、ベッドルームも一室空間の一部
壁材に吸音板を使用し、内装に変化を持たせた。構造材を利用して、子どもたちが自らつくった収納スペースは、成長に伴って自由に変更できる

 ここは東京の新しいベッドタウン。鉄道が開通し、急激に発展しつつある郊外の住宅地です。まだ空き地の目立つこの街で、ひときわ目を引くガルバリウム(*)の外壁に囲われた「木箱」。そのシンプルな箱型の建物は、筋交いや内壁を必要としない特殊工法で建てられた、全く柱のない正真正銘の「箱の家」です。

 「木箱」と名付けたこの家は、2×4工法の規格材を使用し、独自に開発した「架構システム」によって、家全体が1室である住空間を実現。さらに、このシステムによって、南面に大きな開口を取ることが可能となりました。住まい方の変化に自在に対応できるこの架構システムを考案して10年。阪神大震災を教訓に改良を加え、木造3階建てで十分な耐震性を持たせました。

 455ミリメートル間隔で、規則正しく配置した構造材は、仕上げを施さずに、そのまま内壁として機能させます。木に仕上げ材を張らないことは、木の呼吸を妨げず、耐久性を高めることにもなります。さらに、室内に現れた構造材に棚板を渡すだけで、多様な収納スペースが誕生します。家族みんなでつくる楽しみが、構造自体に組み込まれているのです。

455ミリメートル間隔で配されたSPF材(S:スプルース/えぞ松、P:パイン/松、F:ファー/もみ)   一方向の外壁に耐震性を持たせた「架構システム」のアイソメトリック


 1階は、24畳のLDKとバス&トイレ。2階は寝室とワークスペース、3階は予備室と、箱の内部には、レベルの異なる4つの床があります。中央には、高さ約7メートルの吹き抜け。この天井は、規格材の寸法を最大に利用した高さです。そして、吹き抜け空間には、「変化を楽しむ移動装置」として、螺旋(らせん)階段、直階段、スロープを設置しました。これらによって、各床は動線的にも視覚的にもつながり、一室の空間を回遊する楽しさをもたらしました。

 南の全面および東西両面に設けられた窓、さらにトップライトから注ぎ込む日差しは、構造材の白い木肌と調和し、木のぬくもりに包まれた温かみのある空間を演出します。どこにいても光があふれ、昼間は照明の必要がありません。

 空調には、吹き抜けを活用し、1階床全体に温水式床暖房を設置しました。天井の真ん中には、大型クーラーを埋め込んでいます。冷たい空気は上から下へ、逆に、床暖房の温かい空気は自然に上昇します。大きな窓から得られる光と風、そして、自然に生じる空気の流れを利用することで、光熱費を最小限に抑えることができます。熱環境の設計が容易なことも、一室空間の利点のひとつです。

 1階の床材には、白い大理石を採用。その白い色は、レフ板のように光を反射させ、室内を明るく保つとともに、室内全体を暖めます。また、夏には、石のもつ冷ややかさで、涼しさを演出する効果を狙っています。

 「1家4人、お互いの気配を感じながら生活できる空間をつくりたい」。そう要望した施主は、40代前半のインテリアデザイナー。空間演出のプロです。家族がいつも一緒に過ごせる住空間として用意した「木箱」に、施主自らが設えを施し、イスやテーブル、ソファを選びました。

 私は、様々な生活が営まれる住宅空間は、「ただの箱」でいいと思っています。居住スペースは、住む人が自分たちでつくり上げていくもの。いつでも手を加えられるという安心感が、住まいづくりをより楽しくしてくれるはずです。また、単純であればこそ、変化に柔軟に対応することができます。内部に柱や壁のない「箱の家」は、無限の可能性を秘めた住空間であり、これからもチャレンジしていきたいと考えています。
(葛西 潔・葛西潔建築設計事務所)

*ガルバリウム:亜鉛とアルミニウムの合金めっき鋼板のこと。安価で、亜鉛めっき鋼板(俗にトタン板と呼ばれる)の3~6倍以上の耐久力を持つうえ、耐熱性、熱反射性などに優れる。


「木箱・八千代の家」


建築データ
  所在地: 千葉県八千代市
  家族構成: 夫、妻、子供2人
  竣工: 2000年4月
  敷地: 155.94平方メートル
  建築面積: 70.05平方メートル
  延べ床面積: 150.37平方メートル
  構造・規模: 木造、地上3階建て
  総工費: 約2450万円
  設計: 葛西 潔(葛西潔建築設計事務所)
  写真: 葛西潔建築設計事務所
連絡先
  葛西潔建築設計事務所
  代表: 葛西 潔
  住所: 〒180-0002
東京都武蔵野市吉祥寺東町1-7-16
  TEL: 0422-22-8516
  FAX: 0422-22-3689
  E-MAIL: kkasai@d4.dion.ne.jp
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