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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 10 「千川・スクリーンの家」

狭い土地に二世帯で住む、縁側は生活を演出する舞台装置

生活空間を演出する装置
階段を取り込んだ縁側。縁側+階段+雨戸は、風や光を調整する「厚みのあるスクリーン」
閉塞感のない雨戸
3:1の割合でスリットを設けた折れ戸の雨戸。閉塞感から解放する
南面に大きく開放された窓
折れ戸を閉じてセキュリティーを守る。光を遮りつつ、通風を妨げないため、夏の夜も自然風で心地よく眠ることができる

トラス構造で建物の荷重を分散
細いスチール材で階段手すりを組み、風や光を遮ることなく、強固に建物を支える
高い天井と縁側で空間をより広く
ロフトを設けることでより広い空間を演出。どの階にいても南面に縁側を感じさせるプラン
整然とした家のファサード
スリットのスクリーンで、整然とした住まいの外観をつくる

 ここは、都心から電車でわずか10分足らず、30年ほど前に売り出された建て売りの住宅地です。その一角に住まう施主は、結婚し、子どもが生まれるというライフスタイルの変化に伴って、「家族と奥さんのお母さんと一緒に住まう家」、いわゆる二世帯住宅への建て替えを希望されました。

 大きな課題は2つ。その1つはまばらに建て替えが進み、街並みとして乱雑な感のある周囲環境との関係をどうするか。もう1つは建坪約10坪の中で二世帯の暮らしをどう機能させていくか。お互いの気配を感じながらも、プライバシーを守るための工夫が必要でした。

 2つの暮らしを独立させるため、1階をお母さんの居住スペースに、2階とロフトを施主夫妻とお子さんの住空間としました。また、キッチンをそれぞれに設けることで、互いの生活を分離。そして、1階中央に位置する和室から廊下を隔てて、2世帯の共有スペースである洗面所や浴室、玄関を配しました。これは、お母さんのプライベートスペースが守られることを狙ったプランです。

 施主の一番の要望は、「夏は窓を開け放し、自然な風で心地よく寝たい」というもの。そこで、2世帯がそれぞれより広い住空間を確保しながら、風を取り込む大きな開口部を設けるために、建物は、南面をすべて開放し、柱や間仕切りを最小限に抑えたシンプルな形を目指しました。

 その解決法として、105ミリメートルの角材と、2インチ×12インチサイズのSPF材(*)を交互に重ね合わせて構成した折版状の屋根でコの字型の壁を覆っています。建物は、横から見ると、北側斜線により南面に開放された“コ”の字型の箱型住宅になっています。

 しかし、南面に外壁がなく、全く支えのないこの形状では、強度面での問題が生じます。そのため、各世帯の生活空間をつなぐ階段を住空間から独立させて、南面の縁側部分に設置し、筋交いとして機能させました。この階段は、風や光を遮らないように細いスチール材を用い、トラス構造に組んで、建物にかかる荷重を分散させています。また、縁側でもある半屋外空間に位置するため、スペースの有効活用とプライバシーの保護にも役立っています。

“コ”の字の壁に載る折れ曲がった屋根。市販の木材を交互に重ね合わせて自立させ、柱や間仕切りを極力抑える   アクソメトリック
筋交いの役割をもった縁側と階段は、四角い枠によって独立している


 南側のファサードには、セキュリティー確保のため“スクリーン”を設置しました。普通の雨戸では、閉めると光も風も遮断するため、3:1の割合でスリットを設けた杉材の折れ戸です。このスクリーンは、風雨や光を調整するだけでなく、猥雑な外環境を整理して室内空間とつなぐ役割を果たします。縁側+階段+雨戸は、それぞれの機能を満たしつつ、自然を取り込み、人の気配を伝え、プライバシーを守るための「厚みのあるスクリーン」として、内と外との新たな関係を生みだしました。

 この家のファサードは、季節や天候、また朝夕と様々な表情を見せます。洗濯物が縁側に干してあったり、子どもが遊んでいたり、その時、その瞬間の家族のあり方が、この「厚みのあるスクリーン」よって演出されます。適度な暮らしの表出によって、町は楽しくなるのです。

 私は、住宅にはあえてつくらない部分、いわば建築の「隙間」が必要だと考えています。生活しながら、常に変化させられる要素を残すべきだ、と。住まう人を柔軟に受け入れて、なおかつ、時間の経過と共に、建築家の目指した“コンセプト”に近づいていく建物。住宅設計では、計算された「隙間」をいかにプランの中に組み入れるか、それがポイントになると考えます。
(田井幹夫・アーキテクト・カフェ)

*SPF材:えぞ松(S/スプルース)、松(P/パイン)、もみ材(F/ファー)という、成長の早い安価な木材を集成して、断面を規格化した建材


「千川・スクリーンの家」


建築データ
  所在地: 東京都豊島区
  家族構成: 母親、夫、妻、子供1人
  竣工: 2002年4月
  敷地: 66.03平方メートル
  建築面積: 39.56平方メートル
  延べ床面積: 94.34平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階+ロフト
  坪単価: 約80万円
  設計: 田井幹夫(アーキテクト・カフェ)
  構造: 空間工学研究所
  写真: 木田勝久(上から3点)
  その他写真提供: アーキテクト・カフェ
連絡先
  アーキテクト・カフェ
  代表: 田井 幹夫
  住所: 〒101-0051
東京都千代田区神田神保町1-21
南洋堂書店5階
  TEL: 03-3294-3251
  FAX: 03-3294-3252
  E-MAIL: a_cafe@gb3.so-net.ne.jp
  HP: http://www.architect-cafe.com/
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