TOPLiving Styleこだわりのデザイナーズ住宅

こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 102「RSH:4」

居場所を生む凹凸空間、ほどよい距離感を保つ家


くし型に部屋を配置して奥行きのある中庭を設けた外観

南側に貸し駐車場があるため、建物に凹凸をつけて、外部に対して適度な距離感を得られるようにした。中庭には竹を植えている


2つの室内空間と中庭

キッチンのある「テーブルの居場所」から2つのスペースを見る。「ソファの居場所」と「畳の居場所」は中庭に隔てられ互いに見えないが、テーブルの居場所からは双方が見える。場所によって見え隠れする空間構成によって、家族との心地よい距離感を自分で選び取れるようにした


視線が通り抜ける玄関方向への見返し

家の中心に延びる通路の両側にスペースを段違いに配した。壁や窓のまわりに巡らしたベンチは、どこでも自分の居場所をつくれるようにするための仕掛けとなる


トップライトが差し込む室内空間

「テーブルの居場所」から「畳の居場所」を見る。中庭に面した外壁にはガラスをはめ、中庭の風景が映り込むようにした


『テーブルの居場所』まわりの夕景

ひょうたん形のテーブルは建物の様々な凹凸に対応し、どこにでも置ける


『ソファの居場所』から中庭と『テーブルの居場所』を見る

ソファやテーブルは、壁や窓のまわりのベンチとも組み合わせて自由にレイアウトできる。吊り照明も、天井面に設けた四角のグリッド上に自由に設置できる


 空間を互い違いに並べ、間に細長い中庭を挟み込んだ家です。夫婦と中学生、小学生の男の子という4人家族が住んでいます。

 西側の玄関から入ると直線状に通路が延びていき、その左右に、「子供の居場所」「主寝室」「畳の居場所」「テーブルの居場所」「ソファの居場所」と水回りが続きます。それぞれの空間は基本的につながっていますが、建物の凹凸によって視線が開けたり閉ざされたりするようにしました。

 敷地は、4、5メートルの段差があるがけの上に位置しています。がけの下には、富士山の湧き水に連なる川が流れています。地質は硬くて安定しているのですが、規制上、北側のがけに建物を寄せて配置できません。

 一方、南側の隣地は賃貸駐車場になっています。砂利を敷いたスペースに、不特定多数の人が出入りしており、将来は建物が建つかもしれません。ですから、今回の住宅を南側に開いた建物にすることも難しい状態でした。

 こうした条件の下、今回のようなくし形のプランを採用したのには2つの狙いがあります。

 第1は、外部環境と室内の関係です。

 南側に寄せて建物を配置せざるを得ないが、目の前は駐車場。こういう状況では、南面した窓がいくら大きくても気持ちよい風景は得られません。むしろ間口が狭くても、窓の外に広がる空間の奥行きがあった方が心理的な安心感と心地よい距離感を得られるはずです。

 そこで、細長い庭を室内空間の間に挟みました。内側から外を見た時の視線の奥行きを確保し、内と外のほどよい関係を生み出そうと考えたのです。

 第2は、室内における家族間の関係です。

 家族でもケンカすることはあるし、独りになりたいこともある。そんなときでも、リビングで常に顔を突き合わせるか個室に閉じこもるか、という2つの選択肢しかないと、息が詰まってしまうでしょう。もう少し、付かず離れずの中間的な間合いの取り方ができるようにすることが大切です。

 ですから、ここでは各スペースを段違いに配置することで、建物のあちこちにくびれた場所を設けました。また壁に沿ってベンチをぐるりと回しています。

 居場所というものは、4.5畳や6畳のスペースがあればいいというものではありません。奥行き30センチ、幅50センチのベンチでも、最低限の自分の居場所は見つけられます。部屋の出っ張り部分にあるベンチに向かい合って座れば、互いに話ができるし、いる場所によっては視線が遠くまで届きます。1人で部屋の片隅にいれば、自分の世界に閉じこもることもできます。

 このように家族との距離をコントロールすることによって、自分の居場所を確保できる場所を用意したいと考えました。

 子ども用のスペースも最小限に抑えています。「子供の居場所」と名付けた小さな部屋は、いわゆる勉強部屋。子どもにとって読書や勉強のために集中できる場所は必要ですから、そのための小さな空間を確保しました。

 ただし、寝るのは別に設けたロフトです。勉強する、遊ぶ、寝る、という機能をすべて1つの子ども部屋に集約してしまうと、閉じこもりやいろいろな悪いことの温床になりかねません。それぞれの機能を分離しつつ、自分の居場所を用意することで生活にメリハリをつけるようにしました。

 最近、設計をした際に「自分の居場所がない」と奥さんから訴えられたことが何度かあります。家族全員が集まれる空間は設けているのに、1人や2人になったときに居心地のいい場所がないというのです。

 家にいる時間を考えると、実際には1人や2人で過ごすときがほとんどのはず。私はこうした時間を拾い上げ、それぞれの家族にとって居場所のある家をつくっていきたいと考えています。
(岸本和彦/アトリエチンク建築研究所)

RSH:4

建築データ
  所在地: 静岡県駿東郡
  家族構成: 夫婦+子2人
  竣工: 2006年3月
  敷地面積: 264.36平方メートル
  建築面積: 89.35平方メートル
延べ床面積: 98.41平方メートル
  構造・規模: 木造 地上2階建て
施工: 平成建設
設計: (建築)岸本和彦/アトリエチンク建築研究所
(構造)鈴木孝夫/THR構造設計室
  写真: 上田宏
連絡先  
  アトリエチンク建築研究所
  代表: 岸本和彦
  住所: 〒253-0055 神奈川県茅ヶ崎市中海岸4-15-40-403
TEL: 0467-57-2232
FAX: 0467-57-2129
E-MAIL: a-cinqu@mxc.mesh.ne.jp
URL: http://www.ac-aa.com/
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