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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 105「fu-house」

風車状に配した「壁柱」、空間を緩く分け、動きをつくる


角地に建つコンクリートのコートハウス

北西側外観。2方向を交通量の多い道路に挟まれているので、外周に強固な壁を立てて生活空間を保護している。写真右側は地盤が低くなっており、開口部の下段が半地下のガレージ、上段が法規上は1階のテラスコートに当たる


黒い「壁柱」で緩やかに仕切られた室内

1階北東部のワークスペースから南西のテラスコート方向を見る。間仕切り壁や建具の代わりに、黒く塗られた「壁柱」が空間を区分けする。階段の奥がリビング、左の壁の裏手がダイニングキッチン。正面奥に明るいテラスコートが開ける


内外の空間が変化しながら連続する

1階リビングからテラスコートを望む。建物の外周に当たる壁は打ち放しのコンクリート面のまま仕上げ、内側に立てた壁柱だけ黒く塗っている。室内からテラスコートへは同じ床レベルでつなげ、側溝を設けて雨仕舞いをしている。写真右手は半階下がって玄関に続く


道路越しに景色を切り取るテラスコート

ダイニングキッチンから正面のテラスコートを見る。開口部は前面道路を通る路線バスより少し高い位置で、向かいの家の屋根と樹木だけが見える。床面は室内と同じように白く塗った。建て主はこまめにふき掃除して、素足で出入りしているという


ダイニングと一体のオープンキッチン

建て主の希望により、キッチンとダイニングテーブルはステンレスの一体カウンターにした。テーブルの高さを作業台に合わせると市販のダイニングチェアが使えないので、通常より座面の高いオリジナルのいすをデザインしたそうだ


開放的な2階サニタリー空間

「家族だけなのだからお風呂もトイレも仕切る必要はない」という建て主の考えで、浴室・洗面室もトイレもオープンに。湯気の出る浴室をガラス壁で囲んだだけで、ほかには壁もドアもないという徹底ぶりである


 敷地は北西の角地で、2方向を交通量の多いバス通りに接しています。おおむね10メートル角の正方形に近い形ですが、東西にかなりの高低差がありました。

 建て主の望みは、庭と一体感のあるリビング。敷地の大きさと周辺環境を考えると、建物の外周を閉じ、内側に庭を設けるしかありません。

 庭をとった上で生活上要求される床面積を確保するには、3層は必要です。しかし、リビングを1階の接地面に設けると、3階との距離が開きすぎてしまう。生活の中心となるリビングは、できれば中間階に配置したいものです。

 検討を重ねた結果、敷地の高低差を利用して半地下にガレージを設ければ、その上を庭として使えることが分かりました。この部分は建ぺい率の計算から除外されるので、敷地をめいっぱい有効に利用できます。

 こうして、西側道路面から半階下がった地下にガレージと寝室、半階高い1階にテラスコートとLDK、2階に浴室と子ども室という計画が可能になりました。

 ほぼ正方形の建物の内側に庭をつくる場合、田の字型に区切って4分の1を庭に充てるのが合理的です。しかし、そこに壁を立てると内部空間が分断されてしまうし、庭と対角に当たる部分には光が届きません。そこで、壁よりぐっと狭く、その代わり厚みのある、「壁柱」を4カ所に立てることで、「空間を分けながらも仕切らない」方法を編み出しました。

 4本の壁柱はそれぞれ建物の中心に向かって薄くなるくさび型で、平面図で見ると風車のような形に配置してあります。室内を移動すると、角度の異なる斜めの壁が次々と視界に入り、動きのある空間が体感できます。

 壁柱は3層を貫いており、2本はテラスコートに面し、残る2本は階段と吹き抜けに接しています。それぞれ、上空から取り入れた光を地下まで落とす装置の役目を果たします。壁柱で支えることで、上下階にいくつもの“抜け”をつくることができたわけです。

 道路より半階高いテラスコートの開口部は、前を行くバスの頭越しに、向かいの日本家屋の瓦屋根と、その上に広がる空を切り取ります。一方、敷地が傾斜しているおかげで、テラスコートは南側の地盤と同じレベルになります。そこで、外壁と床面の一部を細く切り取ってコグマザサを植え、自然の地面との接点をつくりました。

 建築とは、環境の良さを生かすためのフレームのようなものだと思います。何もなかったところに建物をつくることで、ある時「内部空間」が生まれ、「外部」との新しい関係が始まります。建築を通じて環境の良さが引き出されるのでなくては、建築をつくる意味がありません。

 たとえば敷地の隣に森があったとして、単純に森に向かって窓を開くだけでは不十分です。どの位置にどんな窓を開ければ、どういうふうに森を感じることができるのか。窓を開ける意味を考えなければなりません。風、光、風景の取り入れ方を工夫して、そこにしかない、得難い環境を感じ取り、喜びを見いだせる内部空間をつくりたいと考えています。
(押尾章治/UA)

fu-house

建築データ
  所在地: 東京都世田谷区
  家族構成: 夫婦+子ども2人
  竣工: 2006年5月
  敷地面積: 100.39平方メートル
  建築面積: 60.15平方メートル
延べ床面積: 162.3平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り、地下1階・地上2階
施工: 新日本建設
設計: 押尾章治/UA
  写真: 大澤敏行
連絡先  
  UA
  代表: 押尾章治
  住所: 〒141-0001東京都品川区北品川5-12-6若林ビル3階
TEL: 03-5421-7188
FAX: 03-5421-3622
E-MAIL: tokyo@ua-office.co.jp
URL: http://www.
ua-office.co.jp/
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