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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 106「羽黒の家」

木立の中、陰影を楽しむ家、設計・施工一貫でこだわりを実現


うっそうと木の生い茂る斜面からの外観

市街地そばの、別荘地のような宅地に建つ。南西向きの斜面となっており、東側の道路から家にアプローチする


アプローチから見えるテラスまわり

深く出た軒の下に、2方向に開放したテラスを設けた。外壁と屋根に用いた小波加工の銅板が落ち着いたたたずまいを見せる


内装に用いたイペ材が重厚感をもたらすリビング・ダイニングとキッチン

細長い建物の中央に配置したリビング・ダイニングとキッチン。バルコニーとの境界を全面ガラスとし、外部の緑がそのまま飛び込んでくるようにした。深い軒の出、黒っぽいイペという南洋材の使用により、陰影を感じさせる空間となっている


建物の長手方向いっぱいに延びるロフト

居室の上部に長さ14メートルのロフトを設けた。将来はいくつかの空間に仕切って利用することを想定し、3カ所からはしごで上れるようにした


各室を結ぶ縁側のようなバルコニー

軒で覆われた半屋外のバルコニー。かつての日本家屋にあった縁側のように、各居室を結び付けている


落ち着いたたたずまいの寝室

西側の寝室。屋内の扉と半屋外のバルコニーによってリビングとつながっている。正面右側の壁の向こうは浴室まわり


バルコニーに面した洗面・脱衣・浴室

外部の緑と一体化した浴室まわり。主要な部屋はすべてバルコニーに面して配置している。バルコニーに沿って設けた雨戸は景色を切り取り、空間に奥行きを与える役割を果たす


 木が生い茂っており別荘地のように見えますが、愛知県犬山市の市街地の近くに建てた住宅です。

 家は様々な価値観が集積して出来上がるものです。限られた予算の中で、敷地やインフラ、建物に、どれだけ費用を配分していくか、というバランスを常に考える必要があります。

 皆が建てやすい土地は、当然価格も高い。私は「ここなら大丈夫」という手ごろな価格の土地を入手し、余力を建物の建設費に回したいと考えています。そのため土地探しから参加するケースが多く、建て主とじっくりお付き合いすることになります。羽黒の家でも、土地探しから家の完成まで4年ほど要しました。

 敷地は、バブル時に開発された何百戸という規模の住宅団地にあります。まだ多く売れ残っていた中から、ロケーションが良くて建てやすそうな土地を選びました。ご主人の会社がある名古屋市からは20キロほど離れていますが、眺望の良さと200坪を超える敷地、安い土地単価は代え難い魅力です。

 南西側の谷に向かって傾斜した敷地に、細長い切り妻の建物を配置しました。1階に寝室、リビングなどの居室と水回りを直線状に並べ、南西側のバルコニーでつないでいます。ひさしを深く突き出して陰影を楽しめる日本的な空間とし、居室の上には建物を貫く長さ14メートルのロフトを配しました。

 建て主夫妻、特に奥さんは本物志向の強い方でした。やるのなら本物にしよう、中途半端なものになるなら要らない。尺度がはっきりしていました。ですから、使っている素材にもこだわっています。

 まず、外観上の特徴となっている銅板。小波加工によって凹凸を設けた銅板を外壁と屋根に張りました。これは奥さんが銅の素材感が好きという話から発想したものです。一方、内装には硬くて黒いイペという南洋材を用いました。建物がもたらす陰影と合わせ、質感のある空間を生み出しています。

 設計とは、何を盛り込み、何を捨てるかを整理していく作業です。建て主の夢を実現させるためには、むやみに夢を膨らませるのではなく、かなえられる夢を積み重ねていくことが大切です。できないことははっきり伝える。さもないと後で現場にしわ寄せが来て、結果的に建て主の利益を損なうことになります。

 特にお金は、建て主が最も不安を抱く要素の一つです。そこで私は設計に取りかかる前に予算書を作り、コストプランニングを提示しています。

 まず予算と想定の建物規模をお聞きしたうえで、引っ越し費用、銀行融資や建物登記などの手数料、設計料、外構工事費、エアコン設置費など、建物を建てて住むまでに必要な費用をすべて拾い出します。そして、建物の本体工事にどれだけ回せるか、どの程度の規模の建物が可能かを明示するのです。

 実は僕の事務所では、住宅の場合、設計だけでなく施工まで担当しています。もともとは施工を外部に依頼していましたが、図面通りに施工できる工務店がほとんどない。自分の思い描く通りに建物をつくるため、次第に腕の立つ職人を直接指名するようになり、2004年11月に建設業の資格を取りました。

 こうして自分で施工も手がけるようになった結果、責任は重くなるけれど、楽しい緊張関係の中で仕事を進められるようになりました。現場への理解が深まって設計のスキルが上がり、より実感をもって図面を描くようになりました。見積もりも正確に出せるので、建て主にお金の不安を抱かせずに済みます。

 一方、デザインについては基本的に任せていただいています。それで大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、土地探しの段階から長い時間コミュニケーションを続けていくと、その家族にどういう家がふさわしいのかが自然と分かってくるものです。銅板を使った今回の家も、こちらの提案にすぐ共感していただきました。
(宇野友明/宇野友明建築事務所)

羽黒の家

建築データ
  所在地: 愛知県犬山市
  家族構成: 夫婦+子1人
  竣工: 2006年9月
  敷地面積: 803.57平方メートル
  建築面積: 76.51平方メートル
延べ床面積: 112.06平方メートル
  構造・規模: 鉄骨造り、地上1階建て
施工: 宇野友明建築事務所
設計: 宇野友明/宇野友明建築事務所
  写真: 山下茂治
連絡先  
  宇野友明建築事務所
  代表: 宇野友明
  住所: 〒464-0032 名古屋市千種区猫洞通1-13
TEL: 052-783-1213
FAX: 052-783-1265
E-MAIL: arch-uno@
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