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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 107「生田H」

単純な四角い箱を2つ連ねて、複雑に変化する景色をつくる


見る場所によって姿を変える外観

角地に建つ住宅。周辺には起伏があり、さまざまな角度から建物を見ることができる。写真は北側から見下ろしたところ。奥の屋根は手前の半分ぐらいの高さにしか見えないが、同じ2階建てである


2つの直方体で構成された建物

前面道路から見た外観。2つの箱をずらして連ねた構成。2つはほぼ同じサイズのように感じられるが、手前の箱の方が面積は大きく屋根は低い


見え隠れしながらつながるLとDK

2階リビングからダイニングを見る。隣の部屋が見えてはいるが、隠れた部分もあることで、心理的な奥行きが感じられる。リビングの方が天井が高く、はしごを上るとダイニング上の屋上デッキに出る


天井高が違う正方形の2つの部屋

ダイニングからリビングを見る。それぞれの部屋は正方形で、床の目地も同じように正方形になるように張っている。窓の配置は、「景色を見る」というより「景色が見える」という感覚を狙った


緑地の眺めを享受するLD

リビングにはピクチャーウインドウ、ダイニングには掃き出し窓の外にテラスが続き、隣接する緑地の眺めが楽しめる。アイランドキッチンの上にはトップライトを設けた


2階とは対照的な1階空間

1階ホール。写真右手が玄関、突き当たりは個室。建物の形状がそのまま感じ取れる2階と異なり、1階は写真左手に走る壁の方向性が意識される。フローリングも壁の向きに合わせて張った


洗面室は内装の色を変え独立性を強調

プライベートな洗面室や書斎は、壁はグレーに、造作家具はダークブラウンに塗装して、ほかの白い部屋とは印象の異なる空間にした


 この住宅は、2つの直方体で構成されています。それぞれ、4.8メートル角と5.4メートル角の正方形の平面を持ち、小さい方が高く、大きい方が低い。大きさ高さは異なるけれど、どちらが主でも従でもない、対等なボリュームを与えました。

 敷地は多摩丘陵の尾根にあり、緑に囲まれた環境のいい場所です。周辺は起伏に富んでいるので、建物はさまざまな角度から見られることになります。山並みの景色が見る場所によって変化するように、この家にも、多彩な表情を持たせたいと考えました。

 坂を上って近づいてゆくと、最初は手前にある低い直方体の方が高く見え、それが次第に逆転していきます。2つの屋根のラインが水平につながって見えるポイントもあるし、高低差が拡大して見えるポイントもある。建物全体のプロポーションも、縦長に見えたり横長に見えたりします。

 敷地の周囲には遊歩道が通っているので、人目を避けるため、1階は開口部を最小限に抑え、代わりに2階に大きな窓を開いてLDKを配しました。

 オープンな2階空間では、2つの直方体が持つ特性が、そのまま空間の特徴になっています。天井が低く面積が広い方をダイニングキッチンに、天井が高く面積が小さい方をリビングに充てました。

 2つの直方体は少しずらしてあるので、DKとリビングは、互いにつながりつつも独立した部屋になります。ある部屋にいるとき、隣にもう1つ別の部屋が見え隠れすると、空間に奥行きや広がりが感じられるでしょう。

 それぞれの部屋は、正方形という自律的な形をしています。各面が同じ大きさを持ち、方向性がありません。この特性を損なわないよう、床は目地が正方形を描くように張り、窓はランダムに配置しました。外へと視線をひきつけるのではなく、自然に緑が目に飛び込んでくるような開口になっていればいいと思います。

 開放的で方向性のない2階に対し、1階は、連続する壁で空間を仕切って特徴づけました。この壁にはOSBという独特の模様のある木質ボードを用い、外周の白い壁と区別し強調しています。

 OSBの間仕切り壁の内側に、包まれるように書斎と水回りがあり、外側に2つの個室空間があります。書斎と水回りの内装はグレーと焦げ茶で、ほかの白い部屋とは少し違う雰囲気になっています。

 単純な箱形の建物は構造面でもコスト面でも合理的で、住宅に適しています。その単純な形から、どれだけ豊かな住空間を生み出せるかが課題です。

 「生田H」では、2つの箱を組み合わせて1つの家をつくることで、倍以上の豊かさが得られたと思います。外から見ても中に入っても、居場所によってさまざまな形や奥行き、方向性を感じることができるでしょう。

 住宅は、住む人が長い時間を過ごす場所です。竣工した瞬間にすべてが感得されるような、分かりやすく完結した形であってほしくはありません。暮らしていくうちに、少しずつ新しい発見がある、そんな住宅をつくりたいと思っています。
(都留理子/都留理子建築設計スタジオ)

生田H

建築データ
  所在地: 神奈川県川崎市多摩区
  家族構成: 夫婦+子ども2人
  竣工: 2006年9月
  敷地面積: 152.97平方メートル
  建築面積: 53.44平方メートル
延べ床面積: 104.4平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階
施工: 飯塚工務店
設計: 都留理子、大澤祥代/都留理子建築設計スタジオ
  写真: 中川敦玲
連絡先  
  都留理子建築設計スタジオ
  代表: 都留理子
  住所: 〒213-0033 神奈川県川崎市高津区下作延
TEL: 050-7506-7804
FAX: 050-7513-5209
E-MAIL: rtas@ricot.com
URL: http://www.ricot.com/
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