TOPLiving Styleこだわりのデザイナーズ住宅

こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 110「MY邸」

擁壁から突き出す四角い箱、光の“スロット”で各階をつなぐ


高い擁壁から飛び出した箱形の住居空間

2面が道路に接した傾斜地に建つ2世帯住宅。最大で高さ6メートルある擁壁(ようへき)から飛び出すように、シンプルな黒い箱形の家を配置した。地盤改良した土地に鉄筋コンクリート造りの地下部分を設け、木造の地上部分を載せている


光と緑を身近に感じる吹き抜け

地下の玄関を入ると目の前に続く「スロット」。地下まで光が入り込むように設置した細長い吹き抜け空間で、階段室を兼ねている。隣接する緑地の樹木が目に飛び込んでくる


視線の抜ける開口を随所に設けた親夫婦のLDK

1階の親夫婦スペースのLDK。外部空間に開いた窓だけでなく、スロットや下階とつながる開口も設けて、空間同士のつながりを意識させた。右側の黒い収納の内部は、将来ホームエレベーターを設置できるようにしている


いつも愛車を見られる1階LDK床の“窓”

車を趣味とする父のため、親夫婦のLDKの床に“窓”を開けて、ガレージの車を常に眺められるようにした


スロットやガレージとつながる父の寝室

2階LDKから床面を下げた父の寝室。ガラスを通して光のスロットやガレージへの視線を確保し、小さいながら広がりのある空間にした


中庭を挟んでつながる寝室とダイニング

2階の息子夫婦のためのスペース。寝室から中庭越しにダイニング方向を見る。ダイニングの奥には、スキップフロアで低くなったリビングが続く。中庭に設置したはしごからルーフテラスに上れるようにした


床面を下げて高い天井を確保した2階リビング

息子夫婦のリビング。床面を低くして空間に変化を与えた。壁面には空調機や窓と一体化する什器(じゅうき)を製作した。場所によって、テレビ台やテーブルと高さをそろえたカウンターになる


 傾斜地にそそり立つ擁壁(ようへき)から、それと同じようなボリュームをもつ四角い箱状の建物が飛び出している。――そんな形の面白さを意図した2世帯住宅です。

 敷地が風致地区内に位置しているため、建物の壁面を道路や隣地境界から一定距離後退させる必要がありました。その中で最大限のボリュームを確保しようとすると、建物が擁壁からはみ出してしまう。その形を空間構成にうまく生かせないかと考えたのです。

 南側の隣地には間近に住宅が建ち、採光や見晴らしを十分に得るのが難しい状態でした。一方、南西側は傾斜して低くなっているため視界が開け、冬の晴れた日には富士山が見えます。しかも、小さな緑地が隣接しています。

 そこで建物は、眺望の良い西側に対して開いた間取りとしました。南側には大きな開口を設けていないため、北側に「スロット」と呼ぶ細長い3層分の吹き抜けを設置。トップライトの光が地下まで入り込むようにしました。

 このスロットは縦動線の場も兼ねており、玄関からスロット内の階段を上ると、ガラス越しに緑地の樹木が目に入ります。また所々にはめ込んだガラス窓を通じて、各階の部屋と視覚的なつながりを与えるようにしました。

 東側の前面道路から建物の下へ潜り込むように入っていく地下階には、2台の車を置けるガレージを置いています。お父さんも息子さんも車好きで、赤いフェラーリと黄色いポルシェを所有しています。ビルトイン式の車庫をつくることは当初からの要望の一つでした。

 1階は親夫婦のスペースで、LDKを挟んで2つの寝室を並べました。LDKの床には四角い穴を開けてガラスをはめ込み、ガレージの愛車を見られるようにしています。床を一段下げたお父さんの寝室にガレージをのぞける窓を設けたのも好評です。

 息子夫婦のスペースである2階では、スキップフロアでつないだリビングとダイニングを眺めがいい西側に向けて配置しました。ガラス張りの中庭を介して、広い寝室を設けています。

 外観はシンプルな箱ですが、中の構成はスキップフロアもあり、意外と複雑です。それぞれの部屋から光のスロットやガレージが見え隠れし、あるいは中庭越しに寝室が見える。生活の中でいろいろなシーンを楽しんでいただけるように考えました。

 実は当初、1階も2階も西側にリビングを置くつもりでした。しかし途中で、お母さんから自分の寝室を西側にしたいという希望が出たために、設計変更した経緯があります。

 その結果、一つ面白い試みができました。高い天井の欲しいリビングの位置が1階と2階でずれたため、リビングと天井の低い寝室と上下で組み合わせることができました。縦方向の空間を有効に使い、しかも変化のある間取りが可能になったのです。

 建て主との対話をヒントに、当初は考えもしなかったアイデアが生まれる。そこに、建て主と一緒に進めていく設計の面白さがあります。家は、建て主と設計者が一緒につくっていくものです。プロセスをいかに楽しむかが大切。それを大変だと負担に感じる建て主には不向きなのでしょうね。
(山縣洋/山縣洋建築設計事務所)

MY邸

建築データ
  所在地: 東京都世田谷区
  家族構成: 息子夫婦+親夫婦
  竣工: 2006年9月
  敷地面積: 153.27平方メートル
  建築面積: 68.62平方メートル
延べ床面積: 191.34平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り、一部木造、地下1階・地上2階建て
施工: アイガー産業
設計: (建築)山縣洋/山縣洋建築設計事務所、(構造)坂根伸夫/坂根構造デザイン
  写真: 奥村浩司
連絡先  
  山縣洋建築設計事務所
  代表: 山縣洋
  住所: 〒214-0034 神奈川県川崎市多摩区三田1-26-28 ニューウェル生田ビル302
TEL: 044-931-5737
FAX: 044-931-5738
E-MAIL: yo-yamagata
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URL: http://www5d.
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