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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 117「階段箪笥の家」

先人が使い込んだ古材や古道具、現代の住まいに生かして使う


シンプルでモダンな四角い外観

道路側外観。正面から見るとごくシンプルな四角形の建物である。1階は鉄筋コンクリート造り、2階は木造の混構造。2階に規則正しく並んだ3つの窓は、3人の子どもの部屋


新旧が混在する1階土間

玄関ホールは庭まで抜ける通り土間。設計の戸田晃さんが自ら調合し再現した土間は、昔ながらの土と砂のタタキ。玄関ドアと階段には、それぞれ古道具の蔵戸と階段箪笥(かいだんだんす)を組み込んだ


コンクリート階段と階段箪笥が合流

階段箪笥と並走するコンクリート階段が踊り場で合流し、2階へと至る。階段室と2階の生活空間の間はガラスで仕切られている。階段正面が洗面コーナー、右手奥にキッチンがある


リビングの北側に子ども室が並ぶ

リビングダイニングから子ども室方向を見る。3本の柱の前に古いソリを、右手の壁の前に水屋を置く計画(本文中スケッチ参照)。ロフト付きの子ども室には、いずれ間仕切りを付ける


勾配天井で2階全体が一体に

2階見通し。右手が子ども室、左手がリビングダイニング。正面に階段室、その左手にキッチンが見える。柱や壁で仕切られてはいるが、天井はつながっていて一体感がある


室内と戸外をつなぐバルコニー

敷地は傾斜地にあり、2階は眺望が開ける。室内の床と同じレベルのバルコニーは、端に立ち上がりを設けず、風景との視覚的な連続性を狙った。手すりの支柱も薄くしてデッキ材の間に挟み込んでいる


 この家の建て主は、雑誌で私の自宅兼事務所を見て連絡をくれました。これまでに買い集めた古道具や古材を使って家を建てたいという依頼でした。

 6年ほど前に建てた私の家は、敷地にもとあった古家の床板や建具を再利用し、コンクリート躯体(くたい)に組み込んだ建物です。その古材とコンクリートの組み合わせが、建て主のイメージにぴったりだったそうです。

 敷地の条件から、建てられる家は40坪足らず。そこへ2世帯7人が住む計画です。しかも、使いたいという古道具は十数点に上る。限られた面積の中にどうやって取り入れるか、頭を悩ませました。

 いかに古い物が好きでも、ただ置いただけでは飾りにすぎません。古い物を新しい家の一部として消化し、日々の暮らしの中で使いこなしてもらいたい。どんな素材、どんな形なら、古い物の持つ存在感と渡り合えるか、スケッチを繰り返しながら模索しました。

 最大の難問であり、結果としてこの家の最大の特徴となったのが、階段箪笥(かいだんだんす)です。私はこれを、収納としてだけでなく、階段としても使えるようにしたかった。けれども、安全面でも建築法規上でも、箪笥をそのまま階段にするわけにはいきません。

 そこで、コンクリートのがっしりした階段をつくり、階段箪笥と並べました。2つの階段は踊り場で合流し、2階へと続きます。

 階段箪笥の傍らは、玄関から庭へ抜ける通り土間。石灰と砂と赤土を突き固めただけの、昔ながらの土間です。玄関には、古道具屋で買った蔵戸を用いました。飴(あめ)色の古材と土とコンクリートが響き合う、力強い空間です。

 子世帯の生活空間となる2階は、予算の問題もあって木造にしました。この空間の中心は、長さ2.6メートルもある古いソリと大型の水屋です。ソリにはクッションを置いて、ソファ代わりに使います。


 2つの大きな古道具を仕切りとして、リビングダイニングの東を主寝室、北を3人の子どもの部屋に充てました。子ども部屋は机とクローゼットでいっぱいになってしまう程度の広さですが、それぞれに専用ロフトとトップライトがあります。

 細かく仕切っているように見えて、2階全体が天井でつながっています。勾配天井がずっと見通せるので、「一つ屋根の下」に暮らす実感が得られるだろうと思います。

 古道具の寸法は一つ一つバラバラで、現代の建材の規格にも合いません。そのことだけとっても、設計に組み込むのは生やさしい作業ではありませんでした。

 すでにある物に合わせてイメージを組み立てることは、イメージに合う物を探して設計するのに比べ、倍以上の力量が求められます。しかも、前提となる物は先人が使い込んだ、存在感のある古道具なのです。楽しかったけれど、とても難しい仕事でもありました。
(戸田晃/戸田晃建築設計事務所)

階段箪笥の家

建築データ
  所在地: 東京都多摩地域
  家族構成: 夫婦+子ども3人+両親
  竣工: 2006年5月
  敷地面積: 163.07平方メートル
  建築面積: 64.71平方メートル
延べ床面積: 128.51平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り、一部木造、地上2階
  設計: 戸田晃
  施工: 森屋建設
  写真: 古田陽子
連絡先  
  戸田晃建築設計事務所
  代表: 戸田晃
  住所: 〒192-0902東京都八王子市上野町64番地
TEL: 042-626-7690
FAX: 042-626-7609
E-MAIL: toda-art@
rmail.plala.or.jp
URL: http://www14.
plala.or.jp/akiratoda/
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