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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 119「王子の家」

変形敷地を生かして建つ、森を背にした郊外の家


窓の向こうに森を透かすT字路の家

古い住宅地の突き当たりに建つ住宅。大きな窓の奥に、建物の向こう側にある森の緑がかすかに透けて見える


通りと森をつなぐ開放的なリビング

天井高3.3メートルの2階リビング。南北両側が全面開口になっており、外から内、内から外へと抜けるような開放的な空間である。写真は南面のT字路の方を見たところ。反対側は森の景色を望む


敷地なりに張り出すダイニング

敷地のとがった部分に向かって張り出したダイニング。写真左手は街に、右手は森に向かって開く


階段を中心に家全体がつながる

リビングから階段方向を見る。階段を中心に空間が連続し展開する。写真右下に見えるのがダイニング、階段の上は家族の個室に続く。各階で色の異なる床を、白い階段がつなぐ


森に向かって突き出すキッチン

キッチンは北側に張り出し、ダイニングと直交する関係になっている。写真正面の勝手口から、ダイニングにつながるテラスに出られる


敷地の傾斜と変形に沿って展開する建物

森のある北側から見た外観。敷地の傾斜によって、1階テラスが宙に浮き上がる。その下に見える窓は、半地下の「アネックス」


 建て主一家が両親と暮らす2世帯住宅です。旧居の建て替えを検討中、近隣で魅力的な土地を見つけたため、計画を仕切り直したという経緯があります。

 敷地は住宅街の一番奥まった所にあり、人通りも少なく、静かな恵まれた環境です。背後はなだらかな斜面で、緑豊かな雑木林が広がっています。この森と建物と周囲の街並みとを、いかに関連付けるかという考察が設計の出発点でした。

 敷地はいびつな五角形で、なおかつ高低差があります。この個性的な形状に逆らわず、うまく生かしたい。そこで、敷地の中心から外へ、幹から枝を伸ばすように空間を配置しようと考えました。

 南側の道路正面に玄関、建物の中央に階段を配し、そこから東と西、北の3方向に延びるブロックをつくります。3つのブロックはいずれも南北に窓を持ちますが、位置がずれているので、景色はそれぞれに異なります。

 敷地の高低差に沿って、西側のブロックは東側より半階高く、中央の階段で少しずつ上がるスキップフロアの構成です。玄関を入って東に親世帯のスペース、半階上がって西にダイニング、さらに半階上がって子世帯リビング、と続きます。

 親世帯スペースにはキッチンも浴室もそろい、生活はそこで完結できますが、半階上のダイニングまでは、親子が行き来できる自由な共用スペースと位置付けています。東西振り分けのスキップフロアは、2つの世帯が適度な距離と交流を保つためにも有効でした。

 階段を中心に各室が上下左右にずれながら連続するので、建物全体をひとつながりの空間とみなすこともできます。フロアごとに窓の大きさや天井の高さは違っても、全体のまとまりは失いたくありません。そこで、内装や造作に共通の素材を用い、床のトーンだけをフロアごとに変えました。白・黒・グレーと無彩色を基調にしたのは、窓の外に広がる森の色彩を際立たせるためです。

 建て主の職業はカーデザイナーで、家族も建築やデザインに見識のある人ばかり。設計中には率直な意見をぶつけてくれました。

 とはいえ、それをそのまま建物に反映させたわけではありません。建て主の要望にはきちんと耳を傾けますが、それを設計者として咀嚼(そしゃく)し、統合する必要があると思います。

 一方で、設計者の主張があらわな建物にもしたくありません。建てる者の思い入れは思い入れとして、そこから一歩引いて、自分の考えを客観視する姿勢を保ちたい。

 住宅は、洋服や車と違って公共性のあるものです。建てた時点から風景の一部になる。建て主の要求や予算以前に、「その場所にふさわしい建築」があるのではないかと思います。それを探りながら、そこに住む人の生活を当てはめていく。そんなふうに設計を進めることが多いですね。
(川辺直哉/川辺直哉建築設計事務所)

王子の家

建築データ
  所在地: 神奈川県厚木市
  家族構成: 夫婦+子ども2人+両親
  竣工: 2007年3月
  敷地面積: 152.39平方メートル
  建築面積: 75.02平方メートル
延べ床面積: 184.96平方メートル
  構造・規模: 木造、一部鉄筋コンクリート造り、地下1階・地上2階
  設計: 川辺直哉
  施工: TTC建設
  写真: 鈴木研一
連絡先  
  川辺直哉建築設計事務所
  代表: 川辺直哉
  住所: 〒151-0053東京都渋谷区代々木4-17-3-F
TEL: 03-5333-5980
FAX: 03-5333-5981
E-MAIL: kawabe@
kawabe-office.com
URL: http://
kawabe-office.com/
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