TOPLiving Styleこだわりのデザイナーズ住宅

こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 120「REF」

多様な光が陰影を生む、要素をそぎ落としたピュアな空間


背後の宅地への抜けを設けた建物の南西側外観

マンションや木造住宅が混在する密集住宅地に建つ。建物の左手を通る細い通路の奥には数軒の家が続く。周囲への圧迫感をできるだけ抑えるため、建物を通路から1メートル強後退させて抜けの空間を確保し、シンボルツリーを植えた


1階の駐車場と奥に続く書斎

ガラスの間仕切りで一体感をもたせたビルトイン駐車場と書斎スペース。限られた面積を最大限に活用している


窓から多様な光が差し込む2階リビングダイニング

2階リビングダイニングには、正面の大きな窓のほか、右手の細長いハイサイドライト、階段の上のトップライトなど、多様な開口部を設けた。シンプルな箱形のワンルーム空間に、差し込む光が変化を与える


リビングダイニングと寝室を結び付ける吹き抜け状の階段

トップライトのある吹き抜けの階段が、狭小面積の建物に視覚的な広がりをもたらす。室内は、コンクリートと白い壁、ウォールナットの床というインテリアで統一している


彫刻のような階段と白い壁に落ちる光

壁から片持ちで突き出した段板の列が彫刻のような陰影を与える階段まわり。白い壁に開口部からの光が映し出され、壁の手すりがシャープな印象を際立たせる


外からの視界を遮ったインナーテラスが続く3階寝室

3階の寝室。コンクリートの外壁を建てて中庭のような雰囲気に仕立てたインナーテラスにつながる。左に見える吹き抜けとは、3枚の引き戸で間仕切ることができる。現在ワンルームで用いている空間は、将来、区分けすることも可能


インナーテラスから垣間見える周辺の街並み

インナーテラスからの風景。マンションや戸建て住宅が混在する街並みを、コンクリートのフレームが切り取っている


 反射という言葉を想起させる建物名「REF」は、ご主人による命名です。

 ハイサイドの窓や天井ギリギリの窓など、多様な開口部から光を取り入れ、陰影を強調しつつ空間の一体感を与えたい。そう考えて設計した建物にふさわしい名前だと思います。

 70平方メートル弱の敷地に建つ家は、3階建ての鉄筋コンクリート造り。駐車場と書斎として使うご主人の小さなスペースを1階に配し、2階にキッチンとリビングダイニング、3階に寝室を重ねました。

 暖色のウォールナットを用いた床以外は白い壁とコンクリート打ち放しの天井というモノトーンでまとめ、開口部から差し込む光をくっきりと反射させるようにしました。

 開口部のつくり方の違いが特に表れているのは、2階のリビングルームと3階の寝室です。

 夜のリビングルームとして位置づけた3階の寝室は、意識して開口部まわりのつくり方を2階と変えています。広い窓によって直接外部とつながるリビングルームに対し、寝室では室内から続くテラスを設けました。視線を遮る壁を外側に建て、中庭のような雰囲気に仕立てたのです。

 光の入り方も違うし、そこでの時間の過ごし方も変わる。リビングも寝室もシンプルな部屋ですが、空間の性格は全く違うものになるようにしました。

 建て主は、出版社に勤務するご主人と不動産会社に勤める奥さんという30代の夫婦。家に帰ることもままならない多忙な生活を続けてきたので、今回の家づくりを生活のリズムを変えていく機会としてとらえていました。

 競馬が好きなご主人に対し、奥さんは風呂につかったり食事をしたりという当たり前の時間をゆったり過ごしたいという意識を強く持っていました。また以前住んでいた賃貸マンションが狭かったので、広いワンルームとして使いたいという希望もありました。そこで各階とも空間のつながりを重視した、フラットなワンルーム状の間取りにしています。

 壁から突き出した形態の階段は、オブジェとして見せたいという建て主の要望を受けたものです。コンクリートの段板の間から光が差し、陰影を落とす。日常生活の中でこうした光景を楽しめるようにする一方で、ゆっくり上っていけるよう段差は緩やかに設定しました。

 この家には、奇をてらうようなデザインはありません。素材を統一したシンプルな構成の中で、いかに空間に変化を生み出すか。開口部の設け方などで工夫し、いわば「普通」のものを研ぎ澄ませていくことで生まれるぜいたくさを目指しました。

 今回の建て主もそうですが、若くして家をつくる最近の人は集大成となる「終(つい)のすみか」を求めません。「今はこういう時期だから」と客観的に自分たちの生活を見つめ、現在必要な家を考えていく傾向が強くなっています。

 ですからユニバーサルで普遍的な住宅は求めないし、とりあえず3LDKの家を買おうという気持ちもない。「まずはこの先の10年間を自分たちらしく丁寧に住みこなしていこう」という意識が強く、より高いレベルで家づくりにこだわっている。そんな建て主が増えているように感じます。

 そうしたこだわりは、狭小住宅をつくる際にも生きてきます。

 狭小住宅では、要望されたアイテムに優先順位を付けてそぎ落としていく作業が空間の切れにつながるものです。結果的に何かが欠落してしまうというのではなく、ポジティブに要素を取捨選択していくことで生活や空間がピュアになる。建て主とともに様々な要素を研ぎ澄ましていく面白さは、狭小住宅ならではの醍醐味(だいごみ)です。
(黒崎敏/APOLLO一級建築士事務所)

REF

建築データ
  所在地: 東京都板橋区
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2007年6月
  敷地面積: 69.10平方メートル
  建築面積: 38.88平方メートル
延べ床面積: 102.15平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り、地上3階
  設計: (建築)黒崎敏/APOLLO一級建築士事務所、(構造)正木健太/正木構造研究所
  施工: 前川建設
  写真: 西川公朗
連絡先  
  APOLLO一級建築士事務所
  代表: 黒崎敏
  住所: 〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-24-1 ニューシティレジデンスお茶の水301
TEL: 03-5283-2535
FAX: 03-5283-2582
E-MAIL: kurosaki@
olive.plala.or.jp
URL: http://www.
kurosakisatoshi.com/
平面図
おすすめ情報(PR)