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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 123「崖の家」

高低差10メートルの崖地に、気負わずに住む「普通の家」


崖(がけ)に根を張るコンクリートに鉄骨の箱を載せる

西側外観。崖上と崖下の平らな部分からそれぞれコンクリートを立ち上げ、間に鉄骨の箱を載せている。ちょうど崖に橋を架けたような構成だ


崖地を生かしながら空中に住む

崖下から建物を見上げる。玄関から2階・3階へはコンクリートの柱の中にあるエレベーターで上がる。鉄骨部分は宙に浮き、その向こうに元のままの崖の斜面が残されている


斜面に向き合う「子持ち」の予備室

鉄骨の箱の下にもう一つ、「子持ち」と呼ばれる小さな箱がぶら下がっている。ここはホームシアターを楽しむ予備室。窓は斜面に面しており、岩肌を伝う水流が眺められる


コンパクトで使い勝手の良いLDK

3階LDK。60代の夫婦二人暮らしなので、キッチンとダイニングはコンパクトな対面式とし、見晴らしのいい窓際にリビングを配した。同じフロアに食品庫や水回り、納戸を兼ねた書斎をまとめた機能的なプラン


木製ルーバーに囲われた柔らかな空間

2階廊下。掃き出し窓の外に木製ルーバーに囲われたバルコニーが並ぶ。ルーバーは風や日差しの向きに合わせて1本1本角度を調整できる。廊下の突き当たりは主寝室で、崖上の地上レベルにあたる


 敷地は高低差10メートルの崖(がけ)地で、平らな部分はわずかしかありません。我々の前にプランを立てた施工会社は、崖をごっそり削り取る提案をしたそうです。しかし、それには莫大なコストがかかります。

建築前の敷地の様子
 このあたりは江戸時代に安藤広重が富士山を描いた場所といわれ、由緒もあり、見晴らしもいい。雑木林や岩肌にも趣があります。土地の個性はなるべく生かしたい。我々は意匠設計と構造設計でチームを組んでいますから、こういう厳しい条件にはなおさら意欲がわきます。

 敷地に逆らわないように建物の配置を考えると、まず、崖上の平たい場所が目に付きます。ここに、コンクリートの箱を一つ置く。

 片や、崖下には駐車スペースが必要で、なおかつ法律上、一定の高さまで擁壁を設けなければなりません。この擁壁の基礎と一緒に、エレベーター用のコンクリートタワーをつくることにしました。コンクリートは、下から上へまっすぐ立ち上げる分には、それほど難しい工事にはなりません。


 こうして、上下にコンクリートの支えをつくれば、そこに鉄骨の箱を載せることで空中も利用できます。しかも、崖の一部は素のままに残せるのです。

 建て主の希望で、鉄骨の箱の下にもう一つ、おまけの小さな箱をつり下げました。この箱の窓は崖に面して開くことになります。崖地に建つ家は、たいてい崖に背を向けるものですが、この家には崖に向き合う場所がある。これも土地の個性を生かすことになると思いました。

 建て主夫妻は60歳を過ぎているので、室内は、それまでの生活と違和感なく暮らせるような設計を心がけました。崖下の玄関から生活空間のある2階・3階へはエレベーターで直行します。玄関そばには収納をたっぷり用意して、ゴルフバックなどの重い物を持って上がらずに済むようにしました。

 主寝室は2階にあり、崖上の地面に接しているので、万一のときはここからテラスを通って直接外へ避難できます。隣接してトイレと洗面があり、ここだけで身支度を済ませられます。

 二人暮らしなので、LDKはコンパクトに。近隣のマンションから見下ろされる西側にはバルコニーを回して木製ルーバーで覆い、風通しとプライバシーを両立しました。

 崖に取り付く外観を見て驚く人も、中に入ると「案外普通だね」という感想を漏らします。建て主夫妻も、崖地に住んでいるからといって、気負うことも不安を感じることもなく過ごしているそうです。

 最近、自分でも土地を探してみてよくわかったのですが、東京周辺には整形で平らな敷地などほとんど残っていないし、あったとしても手が届く値段ではない。難条件の土地に、できるだけ質の高い建物を建てて、価値を創造していくことが課題だと思います。

 住宅といえども建物は公共財なので、持ち主が変わっても使える耐久性と可変性を備えていなければなりません。そのためには、その土地の特性に応じた、シンプルで合理的な構造体を用意するのがいいと考えています。フレームさえ無理なくつくられていれば、内部はさまざまな用途に順応させていけるはずだからです。
(眞田大輔+名和研二/すわ製作所)

崖の家

建築データ
  所在地: 東京都目黒区
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2006年10月
  敷地面積: 115.09平方メートル
  建築面積: 68.81平方メートル
延べ床面積: 136.88平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り一部鉄骨造り、地下1階・地上3階
  設計: 眞田大輔+名和研二
  施工: 大同ハウジング
  写真: 鈴木研一(敷地原状・夜景はSUWA)
連絡先  
  すわ製作所
  代表: 眞田大輔
  住所: 〒151-0063東京都渋谷区富ヶ谷1-9-19-3B
TEL: 03-3468-7812
FAX: 03-3468-7813
E-MAIL: archi@
s-uwa.com
URL: http://www.
s-uwa.com/
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