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Housing File 124「百日紅の家」

建て主夫妻自ら漆喰仕上げ 愛着の持てる自然素材の家


塗り壁の面で建物を覆った北側外観

落ち着いた住宅地の一角に建つ。建築協定によりこう配屋根にしなければいけない地域の中で、壁面を強調したファサードとすることで周辺の家とはひと味違った外観としている。同じく建築協定によって各敷地にシンボルツリーとして百日紅(さるすべり)を植えることが定められており、光が漏れている1階の窓の外にそれを植えている


大開口を設けた大屋根の南側外観

外部からの視線の遮断を意識した北面とは一変して、南面には開放的な大開口を設けている。1階と2階、上下に連なる右側の大きな窓の内部は吹き抜け空間となっている


アイストップに坪庭を配した玄関まわり

1階の玄関を入ると目の前に小さな坪庭が続く。坪庭を挟んで右側にリビング・ダイニング、左側に離れ風の和室を配置した


百日紅の見える和室

坪庭から6畳の和室を見る。床の間に当たる空間の壁をガラス張りにし、外に植えた百日紅を楽しめるようにした


2階寝室と吹き抜けでつながるリビング・ダイニング

家の中心となる吹き抜けのリビング。2階の障子を開けると寝室と一体化する。壁面の漆喰(しっくい)は、建て主夫妻と設計者たちの手で塗り上げた


ムクの青森ヒバやスギを用いたリビング・ダイニング

リビングからダイニング方向を見る。玄関から入って正面に当たる左手の壁は、建て主夫妻の希望で青森ヒバの羽目板張りにしている。床暖房を施した床面は燻煙(くんえん)スギのフローリングとした


屋外テラスとつながる2階予備室

北側の予備室は現在、書斎として利用している。正面方向が道路に面しているため屋外テラスも壁で覆い、視線を気にせずに過ごせるようにした


 自然素材を用いた家です。共働きの夫妻が週末に家庭菜園をすることを楽しみにしながら、家づくりに取り組みました。

 室内の壁は、吹き抜けでつながる1階のリビング・ダイニングと2階の廊下まわりを漆喰(しっくい)塗りにしました。一部、リビングを入った正面の壁には建て主夫妻が希望していた青森ヒバを使っています。2階の床はカラマツ、床暖房を入れた1階の床には燻煙(くんえん)スギを用いました。

 漆喰塗りは職人さんに教えてもらって、養生や下地処理から仕上げまですべて、自分たちで行いました。建て主夫妻を中心に、私と助っ人として呼んだ私の知人など5人掛かりです。

 まず下地ボードの継ぎ目に下地テープを張り、パテで処理して滑らかにします。この作業をいい加減に済ませると、仕上げの美しさに響いてしまうのです。仕上げには、ホタテの貝殻を材料にした「貝てき漆喰」という素材を用いました。

 薄く均一に塗れるようになるまでがひと苦労。1日当たり一人で5平方メートル施工するのがやっとです。土日を使い、特に建て主夫妻は3週作業してようやく塗り上げました。

 でもこうして苦労したからこそ、出来上がった後の愛着もひとしおになります。仕上げに多少の汚れがあったとしても、職人さんの苦労が分かる。最近は、とかく工業製品のような精密さを家に求める人が増えてきましたが、もう少し大らかに家と付き合っていくことも大切ではないでしょうか。

 実は、建て主は当初、どこかに青森ヒバを使いたいという希望は持っていましたが、すべてを自然素材にすることまでは考えていませんでした。設計が進み工務店を探す段階になり、建て主夫妻がウェブサイトで気になる工務店を見つけました。それが、今回施工を担当することになった工務店です。

 この工務店は「環境と健康に負荷をかけない建築」を掲げ、自然素材を用いた家づくりを進めています。私たちはモデルハウスを見せてもらい工務店の理念に共感して、特命で依頼することにしました。同社では独自に素材や施工法を定めているので、私は計画案の中で予定していた建材や工法を一部変更して、設計を仕上げました。

 基本的に、下地や隠れた部位にも合板や接着剤、塩ビの材料を用いません。合板や接着剤には有害な化学物質が含まれ、また塩ビは廃棄する際に環境負荷が大きいからです。

 例えば、ムクの幅広材の接着には米粒を使ったのりを使用しています。断熱材はPET素材や羊毛を用いた製品、給湯は塩ビを使わないステンレス配管です。キッチンも隠れた部分に塩ビがよく使われているものですが、ほぼすべてステンレス製の製品を採用しました。

 ただし、どうしても塩ビが入ってしまう設備機器があります。2階の浴室に採用したハーフユニットバスではプラスチックを使っています。しかし、廃棄する際にきちんと分別が可能です。

 自然素材を施工するには手間を要します。例えば、床の下地には一般にベニヤ板を敷くのですが、合板を使えないので細いスギ板を1枚ずつ張っていく。その分、時間はかかります。

 仕上がりの状態も均一な製品のようにはいきません。ムク材は、表面の節が気になる人には不向きでしょう。また、外壁にはドロマイトプラスターを用いましたが、石灰岩の一種を原料にしたこの塗材は最近の吹き付け材に比べて弾性が低い。そのため細かいクラックが入りやすくなります。

 自然素材の家づくりを行うには、こうしたマイナス面も理解しておく必要があります。

 建物は、家庭菜園との間を行き来しやすいよう1階南側にリビングを配置し、その上部の吹き抜けを介した2階を夫妻の寝室とし、夫妻が互いの気配を感じつつ適度な距離感を得られるようにしています。

 建物の北半分には玄関や坪庭を隔てて、1階に和室、2階にテラスと予備室を置きました。離れ風の和室からは坪庭を楽しめるほか、反対側には床の間の代わりにガラスの壁を設けて外に植えた百日紅(さるすべり)がきれいに見えるようにしています。

 2階のテラスは壁で囲っているので、外からの視線を気にせず快適に過ごせます。このテラスには、予備室と浴室を隣接させました。囲まれたテラスに面して浴室を設けることが私はよくありますが、浴室の窓を開け放すことができて、とても気持ちいいものです。

 この家は特別自己主張の強いデザインではありません。オーソドックスな気持ちの良い家を求めた建て主の意図をくみ、その中で住宅メーカーの家とはひと味違った建物を目指しました。建て主や土地の個性を読み取り、建て主にとってどういう空間が心地良いのかを想像していく。そんな家づくりを私は心がけています。
(水口裕之/水口建築デザイン室)

百日紅の家

建築データ
  所在地: 横浜市中区
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2007年2月
  敷地面積: 165.00平方メートル
  建築面積: 65.14平方メートル
延べ床面積: 120.34平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階
  設計: 水口裕之/水口建築デザイン室
  施工: 磯崎工務店
  写真: 水口裕之
連絡先  
  水口建築デザイン室
  代表: 水口裕之
  住所: 〒231-0045 横浜市中区伊勢佐木町1-7-3 NTビル3-B
TEL: 045-243-3715
FAX: 045-243-3716
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