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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 127「稲田堤の家」

既存の山桜を残して建て替え、中庭を巡って景色が展開する


プライバシーを守りつつ山桜を町と共有する

東の道路側外観。右手の緑地はかつて敷地内にあった山桜の木と稲荷社。町に開放して地域と共有する。塀と外壁が一体になったアースカラーの建物が、柔らかく生活のプライバシーを守る


1階と2階、室内と中庭が連続

玄関を入ってすぐの「ギャラリー」から住まいの奥を見る。中庭に面してダイニング、リビングが続く。ダイニングの上は2階の和室。障子は引き込み式で1階空間と視覚的につながる


「戸外の部屋」のような中庭

1階居室と中庭は、床のレベル差が小さく、内外の境界があいまいに感じられる。中庭は「戸外の部屋」のような感覚だ。中庭の向こうにガレージがあり、愛車が眺められる


中庭に守られて日差しを享受するリビング

南からの光がたっぷりと入るリビング。建具はすべて写真奥の壁の中に引き込まれている。テレビの上にある高窓からは、季節折々に変化する山桜の姿が眺められる


吹き抜けに掛けたブリッジのような2階廊下

2階廊下を見通す。写真右下がギャラリー、列柱の左に階段がある。ブリッジのような廊下の突き当たりが、宙に浮く和室。和室の奥には机を造り付けた書斎がある


「ただいま」を象徴する物見の塔

アプローチ夕景。玄関の上には象徴的なタワーがあり、夜には9つの小窓から黄色を帯びた光がこぼれ出す。「この家にしかない表情」が、我が家に帰り着いた気分を盛り上げてくれる


 敷地は眺めのいい丘陵地にありますが、北下がりの斜面で、南隣の家から見下ろされるのが難点です。このため、かつては東向きに家が建てられていました。日差しが入らず、大層寒かったそうです。建て替えに際しては、プライバシーを守りつつ、家全体に光を行き渡らせる工夫が求められました。

 建て主は50歳代のご夫妻。ご主人の趣味はバイク、奥さまは家の中に花やグリーンを飾って楽しみたいそうです。気候のいい季節には戸外で食事をしたい、という希望もありました。

 そこで、建物をコの字型のコートハウスに。南翼1階に日照の必要ないガレージとホビールーム、2階に寝室を、北翼にLDKを配しました。リビングは中庭に南面し、南翼によって隣家の視線から守られます。

 玄関は建物の中央にあり、門から中庭を通ってアプローチします。玄関の上にはシンボリックな塔がそびえ、帰宅する家族や訪問客を出迎えます。

 建物全体は中庭を介してつながっていますが、移動につれてさまざまな景色が展開します。たとえば、門を入ると、アプローチの左手はガラス張りのガレージで、ご主人のお気に入りのバイクが目に入ります。その奥に、ホビールームが続いています。

 玄関をくぐると、右手は吹き抜けのギャラリー。その先のダイニングの上には2階和室が浮かんで見え、さらに行くと再び吹き抜けのリビングが広がります。

 リビングダイニングの建具はすべて壁の中に引き込めます。中庭との床レベル差が小さく、開放すると内外が一体に感じられます。吹き抜け上の和室も障子を引き込めるので、中庭と室内、1階と2階が連続し、全体をひとつの空間ととらえることもできます。

 建物がそのまま塀の役割を兼ねるコートハウスですが、閉鎖的な印象にならないよう、敷地の一部を道路に向かって開放しました。昔からあった山桜の木と小さな稲荷社を建物の外側に残し、町と共有します。このことで、地域との接点が持てたのではないでしょうか。

 近年、カップルの家の設計を依頼される機会が増えました。年代も暮らし方もさまざまで、その夫婦のありようが家のありように現れます。やはり住まいは、最終的には夫婦という単位に帰結するものなのだと思いました。

 子育ての最中に家を建てると、どうしても子ども中心に考えてしまいがちです。しかし、子どもが家で過ごすのは、せいぜい10年ぐらい。巣立ちの後に建て替える方法もあるでしょうが、せっかくなら、いずれ夫婦2人になったときのことを見据えて建てた方がいいのではないかと思います。
(杉浦英一/杉浦英一建築設計事務所)

稲田堤の家

建築データ
  所在地: 神奈川県川崎市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2006年1月
  敷地面積: 205.20平方メートル
  建築面積: 99.81平方メートル
延べ床面積: 136.35平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階
  設計: 杉浦英一
  施工: 本間建設
  写真: 堀内広治
連絡先  
  杉浦英一建築設計事務所
  代表: 杉浦英一
  住所: 〒104-0061 東京都中央区銀座1-28-16杉浦ビル2階
TEL: 03-3562-0309
FAX: 03-3562-0204
E-MAIL: sugiura@
sugiura-achi.co.jp
URL: http://www.
sugiura-arch.co.jp/
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