TOPLiving Styleこだわりのデザイナーズ住宅

こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 129「Momiji-House」

光の陰影で質感を浮かび上がらせる、和を意識したシンプル空間


焼き杉の壁に挟まれたアプローチ

西面のアプローチ外観。道路と母屋部分が細長い通路でつながる旗竿(はたざお)状の敷地だ。正面の黒い箱形空間が道路からの視線を受け止め、背後に建つ母屋の存在感を薄めている


アプローチに変化を与える黒い箱

黒い箱形空間の内部。アプローチを歩いてきた人はここで一端折れ、玄関へ向かう。スリットから差し込む光が視覚的にも変化を与えている


黒と白のコントラストを見せる1階リビングダイニング

シンプルな空間構成と素材感を意識した1階のリビングダイニング。玄関扉を開けると目の前にオープンな空間が続く。壁は珪藻(けいそう)土と黒いナラ材の突き板張り、床には30センチ×60センチのタイルを敷いた。壁にかかる書は、書道家である奥様の作品


光に浮かび上がる夜の中庭

リビングの南側に確保した小さな中庭。コンクリート打ち放しの素材感が好きという建て主のために、目隠しを兼ねたコンクリートの壁を立てた。現在は、壁の手前にもみじを植えている


にじりぐち風の小さな出入り口でつながる和室

リビングに続く3畳和室の出入り口。開口の高さを1メートル50センチに抑えて少し腰をかがめて入るようにし、和室の独自性を高めた


書を創作する2階アトリエ

奥様のためのアトリエ。正面収納棚の左端には、筆の洗い場と筆を掛ける棚をしつらえた。右の壁面に見える横のラインは鉄製で、マグネットを用いて作品を留められるようにしている。左の黒い壁の奥はご主人の書斎


2階のアトリエから見た寝室

階段から続くアトリエの奥に、寝室を配置している。全体に窓の大きさを絞り、反射した柔らかい光が室内を照らすようにした。左のはしごは、階段上部につくったロフトへ続く


 住宅が密集する地域に住んでいる夫妻が、住んでいた古屋を建て直しました。

 道路から15メートルほど奥まったところに建物がある、いわゆる旗竿(はたざお)状の敷地です。アプローチの通路が細長く続き、建物の周囲は隣家に取り囲まれています。一般に不利と思われる条件を逆手に取り、質感と光を味わえる気持ちの良い家を目指しました。

 まず意識したのは、道路から建物へとつながるアプローチのつくりです。

 黒い焼き杉板を張った壁面で両側を覆い、正面に、やはり焼き杉板を用いた黒い箱形空間を置きました。突き当たって折れ曲がり、スリットから光が注ぐ箱形空間の内部を通り抜けると1階の玄関にたどり着きます。

 アプローチまわりは、住宅をつくる際に大切な場所。住み手が家に帰ってくるときのオフタイムへの切り替えを、アプローチの距離感が手助けしてくれます。ここでは、狭い路地を通って母屋へ導く、日本の伝統的な空間演出を活用しました。

 黒い箱形空間は、アプローチから歩いてくる人を受け止めると同時に、背後にある母屋を隠す役割も果たしています。母屋は外部から見えないため、コストバランスを考え、特に凝った外観としているわけではありません。それだけに、アプローチ途中の箱の存在感を印象づけたいと考えました。

 1階はリビングダイニングです。住宅に囲まれ日照を確保するのが難しい立地なので、本来なら2階にリビングを設けたいところでしょう。ただ、飼っているラブラドールレトリバーとよく散歩に出かけるとのことでしたので、出入りしやすいよう1階に配置しました。

 また周囲の建物が近接しているため、外に対しては大きく開きたくありません。開口の分量を絞り込み、小さな中庭に面した障子窓のほかは、ご要望でもあった細長いガラスブロックの開口とキッチンのガラス扉だけを設けました。

 一方で、間接的な光を積極的に取り入れるようにしました。

 例えば、階段はあえて南面する障子窓沿いに配置しました。階段を通して、2階からの光が注ぐようにしたのです。障子の外に続く中庭には、コンクリート打ち放しの壁を立てました。壁は外からの視線を遮りつつ、反射した光を室内に届けます。

 このように取り込んだ間接的な光は室内を柔らかく包み、黒いタイルの床と珪藻(けいそう)土の壁でまとめた空間の質感をきれいに浮かび上がらせてくれます。開口を絞ったことで、空間にも陰影が生まれました。

 建て主は、ご主人と書家の奥様という二人家族です。1階はワンルーム状のリビングダイニングキッチンの北側に、3畳の小さな和室と水回りを配置しました。2階には書のためのアトリエと書斎、寝室を並べています。

 間取りはごくシンプルなもの。ただ、無理に難しい間取りにしなくても、質感や光の取り入れ方に配慮すれば気持ち良い空間は実現できることを証明できた気がします。

 実際、家が完成すると予想以上の雰囲気が実現したことをとても喜んでいただきました。設計者冥利(みょうり)に尽きる思いでしたね。
(猿田仁視/キューボデザイン建築計画設計事務所)

Momiji-House

建築データ
  所在地: 神奈川県藤沢市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2007年11月
  敷地面積: 136.70平方メートル
  建築面積: 61.51平方メートル
延べ床面積: 108.73平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階
  設計: (建築)猿田仁視/キューボデザイン建築計画設計事務所
  施工: 日本住研(ASJ湘南スタジオ)
  写真: サカタヤスノ
連絡先  
  キューボデザイン建築計画設計事務所
  代表: 猿田仁視
  住所: 〒253-0011 神奈川県茅ケ崎市3-17-20
TEL: 0467-54-6994
FAX: 0467-54-7035
E-MAIL: cubo@
cubod.com
URL: http://
www.cubod.com/
平面図
おすすめ情報(PR)