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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 135「寺ノ内の家」

光と風を導き入れた、京都のモダン町屋


道路に面した北側外観

伝統的な町屋が建っていた京都市内の一角に建つ。縦格子や直線的なデザインによって、およそ3.6メートルという小さな間口の建物でモダンさと和の感覚を表現した。2階の縦格子の内側は天井の高い子ども室となっている


折り曲げて視線に変化を与えた1階廊下

玄関を入ると、カギ形に折れ曲がった廊下が延びる。建物の細長さを感じさせないようにする工夫だ。両側にはそれぞれ収納と鏡を用意している


町屋ならではの細長さを生かしたリビングダイニング

折れ曲がった廊下の先には、細長いリビングダイニングが広がる。うなぎの寝床のような敷地形状がそのまま反映した空間だ。2階から差し込む光や正面奥に据えた中庭からの採光によって、十分な明るさを確保した


リビングダイニングとの連続性を意識した中庭

隣地との間に白い壁を立ち上げ、家族の生活空間の中に取り込んだ中庭。床面をリビングダイニングとそろえているため、引き戸と開き戸のガラス面を開放するとさらに一体感は高まる


コンパクトに配置したキッチンと階段まわり

中庭側からキッチンまわりを見る。壁沿いの天井には、すのこ状の2階廊下がそのまま見える


明るい廊下と2階の子ども室

子ども室から階段(右)と主寝室へ続く廊下(左)方向を見る。引き戸を開け放つと、子ども室は階段や廊下とつながった空間となる。風や光が家の中を通り抜けるよう意識した


明るい光が差し込む2階廊下まわり

ハイサイドライトやトップライト、あるいは奥の主寝室から入り込む光によって明るさを確保した廊下。1日の中で光と影は刻々と移り変わる。床面は一部すのこ状にし、1階へ光を巡らせている


 手工業と住居が混在した伝統的な街並みの残る京都市内の一角に、現代の町屋を提案しました。

 103平方メートルの敷地は、奥に細長く延びた典型的な“うなぎの寝床”状の形です。前面道路の間口は、わずか2間(約3.6メートル)。この小さな正面部分で、どこまで和を感じさせ、モダンになりすぎず、街並みに溶け込ませたデザインを施すかが一つの課題でした。

 ここでは、2階の窓にしつらえた縦格子や余計な要素をそぎ落とした白い壁の対比などで、静的なたたずまいを表現しています。

 伝統的な建築を見ると、太い柱や梁(はり)を使う寺院建築は力強さを備えています。一方、数寄屋をはじめとする住宅は、細い線を多用する中に一種のモダンさをたたえています。今回も数寄屋を意識し、様々な場所の部材が細く見えるようにしました。

 伝統的な要素を心がけたのは外観だけではありません。表と奥を分けるという生活様式のあり方も、この家の大きなポイントです。

 昔の町屋では、表に面した“ハレ”と生活の場である“ケ”の空間を明確に区別していました。人の目に接し、公共とつながるハレの場は、毎日水をまいてきれいに整えます。一方、洗濯物など家族の生活を映し出すものは奥にあるケの場で処理し、けっして表には見せませんでした。

 しかし、最近はこうした昔ながらの町中でも、道路側にバルコニーを配して洗濯物を堂々と干している家をよく見かけます。昔の京都の町屋ではあり得なかった風景です。

 そこで「寺ノ内の家」では、外に対しては表の顔を持つ白い壁面と縦格子だけが見えるようにしました。一方、反対側の奥にはリビングと連続的につながるデッキ状の中庭を用意し、日常生活はこちらを向いて行うようにしています。

 1階は、折れ曲がった廊下が玄関からワンルームのリビングダイニングへと導きます。わざわざ廊下を折り曲げたのは、建物の細長さをできるだけ感じさせないようにするため。さらに、リビングダイニングに入ったときに感じる広がりを強調する狙いもありました。

 2階は、建物の中央部分に浴室と洗面を配置し、両側に主寝室と子ども室を振り分けました。ここでも、階段から主寝室へ導く廊下は水回り空間の周囲をぐるりと巡らせ、動線に変化を与えています。

 伝統的な町屋の弱点としては、古い建物ゆえの断熱性や気密性の低さのほか、細長い形状のため中央部に光や風が入りにくい点が挙げられます。私自身、京都の町屋で生まれ育ったため、昼でも照明が必要だった光景をよく覚えています。ですから、光や風を気持ちよく取り込む空間づくりも大きな目標でした。

 例えば、傾斜した2枚の屋根を上下にずらし、ハイサイドライトを設置しています。このハイサイドライトやトップライトから、暗くなりがちな建物の中央部に光を取り入れたのです。2階の廊下も一部すのこ状にし、1階のリビングダイニングに光が差し込むようにしました。

 また、建物内の扉は基本的に引き戸としています。引き戸を開け放しておけば各空間は一体化し、視覚的な広がりが得られると同時に風の通りも確保できます。

 現在、2階廊下のすのこの上には、子どもたちの安全性を考えてアクリル板を敷いています。ただし、将来はアクリル板を取り払うことも可能です。そうすれば、すのこ部分も風の通り道になり、家の中をさらに気持ちよく空気が流れようになるでしょう。
(澤村昌彦/澤村昌彦建築設計事務所)

寺ノ内の家

建築データ
  所在地: 京都市
  家族構成: 夫婦+子2人
  竣工: 2007年2月
  敷地面積: 102.55平方メートル
  建築面積: 58.88平方メートル
延べ床面積: 116.45平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階
  設計: (建築)澤村昌彦、玉田倫世/澤村昌彦建築設計事務所
  施工: 西村工務店
連絡先  
  澤村昌彦建築設計事務所
  代表: 澤村昌彦
  住所: 〒602-8116 京都市上京区大宮通下長者町下ル清元町739
TEL: 075-411-2556
FAX: 075-411-2557
E-MAIL: masas@
poppy.ocn.ne.jp
URL: http://
sawamuramasahiko.com/
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