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Housing File 136「鉄の家」

鉄板をボルトでつなぐ新工法で、間口の狭い敷地を有効活用


薄い鉄板を並べて組み立てた建物

西側外観。幅45センチのレール状の鉄板をつなぎ合わせた建物である。「斜線制限」と呼ばれる、建物の高さを決めるルールに従って屋根の形が決まっている


透けるスクリーンで視線と採光を調節

道路側外観。周辺の地形のため、道路面が地下にあたる。建物正面は全面開口になっているため、向かいの家と視線が合わないようにエキスパンドメタルを2枚重ねたスクリーンで覆った。半分は折り戸になっており、開き具合を調節できる


高く細長い空間に様々な「場」が展開する

2階南面のリビングから北方向を見る。正面がDK、吹き抜けの上の3階が、将来の子ども室に予定しているオープンスペース。右上の階段はルーフバルコニーに通じる


畳を埋め込んで低く使うリビング

リビング全景。縁なし畳を埋め込み、周囲をライムストーンで囲んだ。窓の外はエキスパンドメタルのスクリーンで守られたバルコニー。レースのカーテンを掛けたように、柔らかく光が差し込む


用途の自由な「オープンスペース」

3階のオープンスペースは、その名の通り壁のないオープンな空間。2人の子どもが大きくなったら仕切って使うことを想定している。正面の階段を上がるとルーフバルコニーに出られる


明るく風通しの良い1階浴室

1階南側にある洗面脱衣室・浴室。建て主の希望で、床から浴槽の縁までモルタルでつくった。浴室の外のバルコニーは物干し場に使う


 建築雑誌を愛読する建て主の要望は、ごくシンプルでした。断熱性能など居住性に配慮すること、2人の子どもが大きくなっても対応できる、十分な面積を確保すること。

 とはいえ、敷地は間口5メートル、奥行き16メートルと細長い形状です。法律の規定で隣地境界線と建物の間を50センチずつ空けなくてはならないので、建物の間口は最大で4メートルということになります。内部空間を大きくとるには、できる限り壁を薄くする必要がありました。

 なおかつ、建物の高さも、法律の制限いっぱいまで伸ばしたい。それには、木造では無理があります。このため、構造設計者と相談を重ねて編み出したのが、レール状の鉄板(軽量溝型鋼)を並べて外壁をつくる工法でした。

 一般的な平たい鉄板を溶接する方法では、鉄板の厚さは12ミリほど必要です。しかも、溶接には高度な技術が求められます。

 これに対し、レール状の鉄板は凹型に曲がっていることで強度が増すので、鉄の厚さは6ミリで済むのです。曲がった部分同士をボルトでつなぎ合わせていけば、比較的簡単に、短期間で建物を組み立てることができます。

 幅45センチの細い板を連ねた建物は、最高高さ10メートル。東西の壁で支え、南北両面を開いたトンネルのような空間に床をかけ、3フロアの居室と広いロフトを確保しました。

 1階は主寝室とサニタリー。2階から上はLDKとオープンスペース、ロフトで、3層が吹き抜けでつながり、上空からの自然光を全体に行き渡らせます。

 2階のLDKは一室空間ですが、DK側はテーブルを置き、リビング側は床を高くして畳を埋め込みました。やや天井高を抑えたDKの上は、将来子ども室に使う予定のオープンスペース。さらに、その上をロフトに充てています。

断面図

 こうした床の段差や天井高の変化は、床面積を効果的に確保するための工夫であると同時に、一連の細長い空間の中に雰囲気の異なる「場」を生み出す効果もあります。

 鉄は熱を伝えやすい素材ですが、鉄板のへこんだ部分に断熱材を入れることで、いわゆる「外断熱」を実現しました。さらに、冬場は上昇する暖気をダクトで1階まで落とし、夏は冷気を吸い上げる工夫を施してあります。

 薄い鉄板を利用できるということは、鉄の使用量が少なくて済むということです。コストダウンにつながりますし、省資源にもなる。シンプルな箱形の住宅であれば、ここで用いた鉄板よりさらに薄い、道路用のガードレールを使ってつくることもできます。将来も応用可能な、都市住宅の新しい工法を発見できたと思っています。
(森清敏+川村奈津子/MDS一級建築士事務所)

鉄の家

建築データ
  所在地: 東京都港区
  家族構成: 夫婦+子ども2人
  竣工: 2007年1月
  敷地面積: 84.23平方メートル
  建築面積: 50.30平方メートル
延べ床面積: 154.44平方メートル(ロフト部分を除く)
  構造・規模: 鉄骨造り、地下1階地上3階
  設計: 森清敏+川村奈津子/MDS一級建築士事務所
  構造設計: アラン・バーデン/ストラクチャード・エンヴァイロンメント
担当:神野昌也(元所員)
  施工: 広橋工務店
  写真: 上田宏
連絡先  
  MDS一級建築士事務所
  代表: 森清敏、川村奈津子
  住所: 〒151-0053 東京都渋谷区代々木5-8-6-502
TEL: 03-3465-6648
FAX: 03-5941-8590
E-MAIL: info@
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