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Housing File 137「西原の家」

緑道や桜と共にある家、庭を通じて外とつながる


緑道とのつながりを大切にした外観

目の前に緑道と歩道が通っている敷地に建つ。緑道には、建物の正面に桜の木が植わっている。塀(へい)を低く抑えて緑道側に開き、建物と外部のつながりを重視したつくりとした


一部の角度を振って視線の流れを操作した建物

L字形の建物は角度を少し振って木のルーバーを取り付け、外からの視線が直接入らないようにした。2階の木のルーバー内側は建て主夫妻の寝室。屋根には太陽光パネルを設置している


上下で互いの気配を感じられるようにした階段室

1階と2階を結ぶ階段室。1階は母親、2階は建て主夫妻が利用するスペースに分けている。玄関からそのままつながる階段室は、上下階を結ぶ重要な空間でもある。視線の透過する仕様にして、できるだけ互いの気配を感じられるようにした


緑道の景色を取り込む2階リビング

2階のリビングには大きな開口を確保し、緑道を借景として取り込んでいる。窓には引き込みの格子戸を取り付け、景色や光を柔らかに入れるようにした


家具で緩やかに仕切ったダイニングと書斎

2階の東側はキッチン、ダイニング、リビング、書斎がワンルーム状につながった空間とし、造り付けの家具で緩やかに仕切っている。写真はダイニング側から書斎方向を見たところ。ゲートボール場となっている隣地に向けて細長い開口をつくり、視覚的な広がりを与えた


少しずつずらして配置したキッチンとダイニングまわり
2階ダイニングからキッチンを見る。家具で仕切った空間を少しずつずらして配置し、各スペースに個別性と落ち着きを生み出している


囲われたベランダが続く2階の寝室

木のルーバーによって外部からの視線を遮っているベランダと寝室。緑道の木をルーバー越しに楽しめる


 奥様の実家を建て直した家で、50代の夫婦とお母様の3人が暮らしています。

 敷地の特徴は何といっても、目の前に緑道が通っていること。かつての玉川上水を暗渠(あんきょ)にしたもので、家の正面には立派な桜の木が伸びています。敷地を初めて見た瞬間、私たちは「緑道と桜を家に取り入れたい」と感じました。

 この思いは建て主にも共通したものでした。以前の家には高い塀(へい)があり、外の緑道に対する視線を断っていました。建物自体も庭いっぱいに広がっていて、外とのつながりがなかった。「桜と共にある家にしたい」というのが、建て主の第一の要望でした。

 そこで今回は建物をL字形に配置し、緑道側にまとまった庭を確保しました。また緑道側と敷地の間の塀は高さ50センチの腰壁とし、庭と緑道側が視覚的につながるようにしました。1階や2階には緑道や桜を見られる大きな窓を開け、庭を通して緑道の景色を取り込んだのです。

 こうしたつくりは、緑道から見た風景も一変させます。

 従来の緑道沿いは、建ち並ぶ家の壁が連続している状況でした。そんな風景の中、緑道と視覚的に一体化した“ポケット”が生まれると、道に広がりやリズム感が加わります。道行く人の視線を引き込むことで、家の防犯性が高まるという効果も得られます。

 実際、小さな“空き”の空間があると、立ち話の場所にもなりやすいようです。通りがかりの見知らぬ人に声をかけられた、という建て主の話も聞きました。

 特に首都圏の家づくりでは、どうやって外との結びつきをつくっていくかは重要なポイントです。空間としてのつながりのほか、生活そのものをどう外部と関係づけていくか。

 ここでは、家の前を通る人の視線がかえって庭をきれいに保つことにつながり、庭と緑道の間で育まれるちょっとしたご近所同士のやり取りや、あいさつなど、今確実に失われつつある日常の行為が建て主の生活にうまく重なっていけばいいなと思います。

 高い塀を作らないことはほんの小さな変化です。でも、家々がしっかり街路を見守る構造を取り戻すことで、街路にも共有意識や社会性が戻ってくるのではないかと信じたいのです。

 建物内部は、1階をお母様のスペース、2階を建て主夫妻のスペースとして利用しています。

 1階はコンパクトな空間で日常生活を完結できるよう、玄関を入った横にお母様用のリビングや寝室、浴室を集めました。リビングの先にはデッキをつくり、そこで物干し作業もできるようにしています。デッキの向こうには正面に桜が見えるので、花見の際には特等席になるんですよ。

 夫妻のための2階は、階段を挟んで昼と夜のスペースを分けました。

 昼間過ごすスペースは、キッチンとリビング、ダイニング、書斎をひとまとまりの空間に納めました。基本的にはワンルーム状ですが、家具で空間を分節しています。座ると家具に囲まれ落ち着くし、立ち上がると視線が通る。別の場所にいても互いの存在を意識し合えるような関係をつくりたかったのです。

 家具で緩やかに区切った空間は、少しずつずらして配置しました。空間に入り、突き当たって横を見るとその先の空間が見える。さらにその先には、外の景色がつながっていきます。
(安藤和浩+田野恵利/アンドウ・アトリエ)


西原の家

建築データ
  所在地: 東京都渋谷区
  家族構成: 夫婦+親1人
  竣工: 2007年8月
  敷地面積: 144.70平方メートル
  建築面積: 85.72平方メートル
延べ床面積: 165.07平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階
  設計: (建築)安藤和浩+田野恵利/アンドウ・アトリエ、(構造)一條典/構造設計舎
  施工: 滝新
連絡先  
  アンドウ・アトリエ
  代表: 安藤和浩+田野恵利
  住所: 〒350-0113 埼玉県和光市2-4-3-405
TEL & FAX 048-463-9132
E-MAIL: aaando@
helen.ocn.ne.jp
URL: http://www8.
ocn.ne.jp/~aaando1/
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