TOPLiving Styleこだわりのデザイナーズ住宅

こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 139「TWIST」

1階と2階の向きをずらし、外との適度な関係を生む


参道に面した角地の建物外観

敷地に対して建物を斜めに配置し、周辺と適度な距離感を確保した。右手の道路は近くに建つ寺への参道で、手前方向にのどかな参道風景が続く。この風景を楽しめるよう、1階と2階にはそれぞれ参道に対して開いた窓を設けた


前庭で外からの視線を遮る南面

南の参道側に面した庭は、1メートル土を盛った上に植栽を配した。路面と室内の高さを変え、道行く人の視線が気にならないようにするための工夫


空間の雰囲気を変えた1階の食堂と居間

吹き抜け状の1階食堂とリビング。床の色を変えた奥の居間は床に座って過ごすイメージの場所で、天井高さも低くしている。写真は竣工当時のもので、左手の窓から見える庭は工事前の状態


家の中央に延びるらせん階段

室内の動線の中心に、上下を結ぶらせん階段を設置した。1階左奥に続く玄関、右奥のキッチン、手前の食堂と居間をひとつながりの回遊動線上に配した「田の字形」プランとなっている


吹き抜けとらせん階段で一体化する空間

2階から吹き抜けを見下ろす。キッチンや食堂とのつながりを感じさせる空間構成。2階の廊下に面してトイレと脱衣室を配し、廊下部分(そで壁の裏側)に洗面カウンターを設置した


壁で仕切らず、つながりを重視した2階の寝室2
将来、子供部屋にすることを想定した寝室2。腰までの高さがある棚で吹き抜け空間と仕切り、1階部分との一体感をもたらすようにした。左の窓から見えるのは、建て主夫婦の寝室1に続くテラス

参道の風景が見える2階の寝室1

建て主夫妻の寝室。テラスを通して寺の参道風景が見える



 一見、ほぼ四角形の外観を持つ普通の住宅のように見えますが、中に入ると、外からは予想のつかないような変化と奥行きのある空間が待っています。それを生み出す仕掛けが、「平面のねじれ」と開口部の工夫です。

 新しい住宅地を横目に脇道に入り、竹林を抜けて坂を上ると、古い集落が現れます。その一角、南向きの角地に建物は位置しています。近くには古い寺が建ち、前の通りは生け垣の続く参道。参道の向こう側には畑と雑木林が広がっています。

 このように恵まれた環境の中、比較的余裕のある敷地に建物をどう配置するか。そこで、まず考えたのが、建物を参道に正対させず、少し角度を振って置く形でした。

 敷地に対して建物を斜めに振ると、西に面した横長の窓の先に、パノラマのように寺へ向かう参道の風景が見えます。また、斜めに視線の抜ける空地が建物の四周にできるので、交差点が少し広くなったような、抜けのあるたたずまいが生まれます。街中の建物のように「建物の壁で道ができる」のではなく、「田園風景の中にポンと据えたような」感じにしたいと考えたのです。

 こうして建物の四周にできた変形の空地は、場所ごとに異なる役割を果たします。

 道路に面した北側部分の空地は駐車場に、東の隣地に接する側は日差しも得られ、洗濯物干しにそれぞれちょうど良い。南側の空地は、参道に対する表の顔です。基礎をつくるために掘った土をそのまま使って道路面から1メートルの高さまで土を盛り、丘をつくりました。

 丘の土留めにはコンクリートを使わず、「蛇籠(じゃかご)」と呼ばれる金網を使って「緑の丘」とし、さらにその上に明るい生垣を施しています。これは、参道を歩く人の視線を遮り、室内にいる人が落ち着いて過ごせるようにするためです。

断面図

 内部空間でも、“角度の振れ”を活用しています。

 1階は建物の向きと、中の間仕切りの向きが異なって、様々な形の部屋が生まれています。加えて、玄関とキッチンと食堂・居間はそれぞれ床の高さを変え、地形の上を歩き回るように回遊できる平面にしています。

 一方で2階は、各部屋の向きと建物の向きをそろえました。つまり、1階と2階で部屋の向きをずらして重ねたのです。

 1階からは近くの参道風景が見えるので、これに正対させる。一方、2階は遠くの景色を意識して建物に角度を合わせる。こうした平面のねじれにより、単に空間の面白さだけでなく、それぞれ外との適切な関係を生み出すようにしました。

 斜めに振った1階の間取りは、そのほかの効果ももたらします。台形や変形四角形の空間を活用すると、効率的な使い方ができるのです。

 例えばトイレでは、空間の狭い側に便器を据え、広い側にゆったりとしたカウンターを配置できる。倉庫やキッチンまわりでも、長い壁面に沿ってカウンターや棚を配置すると十分な大きさを確保できます。逆に、狭い側に立つ人にとってはコンパクトな動線を得られます。

 しかも、細長い奥行きは視覚的にも広がりを与えます。壁の角度がずれ、奥の空間や外の風景が、移動に伴ってちらりと見えるため、奥行きの感覚を増幅させるからでしょう。

 もちろんこうした効果は、敷地の環境や広さ、建物の面積との兼ね合いで変わってきます。ただ、ちょっとした空間のずれやつながりの変化を上手に生かせば、一見シンプルな間取りでも、驚くような空間の効果が生まれるのです。
(粕谷淳司+粕谷奈緒子/カスヤアーキテクツオフィス)

中野のコートハウス

建築データ
  所在地: 茨城県守谷市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2007年1月
  敷地面積: 223.83平方メートル
  建築面積: 74.97平方メートル
延べ床面積: 128.72平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  設計: (建築)粕谷淳司+粕谷奈緒子/カスヤアーキテクツオフィス
(構造)小西泰孝/小西泰孝建築構造設計
  ランドスケープ
監修:
金光弘志/カネミツヒロシセッケイシツ
  施工: 小松建設
  写真: ※は吉村昌也
連絡先  
  カスヤアーキテクツオフィス
  代表: 粕谷淳司
  住所: 〒166-0002 東京都杉並区高円寺北1-15-10 UNWALL 001
TEL 03-3385-2091
FAX 03-3385-2097
E-MAIL: bingo@k-a-o.com
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