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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 140「KMhouse」

住宅街の奥に静かにたたずむ、空気がゆったり流れる小さな家


路地の延長に設けたエントランスゲート

敷地の内側からエントランスゲートを望む。白いパーゴラ(日陰棚)の向こうは路地、右手に玄関がある。建物は旗ざお状敷地の奥に建ち、通りからはほとんど見えない


隣家の緑を借景する1階LD

1階西側は全面開口。窓の向こうに見えるのは隣家の庭だ。写真右側のリビングは、天井高を確保するため床を地面より低くしている


小さな空間に奥行きを与える開口や吹き抜け

玄関側から1階LDKを見る。キッチン裏手にはストックヤードがある。階段の左側は屋根までスリット状の窓が続く。光の陰影によって見えない奥行きが感じられ、小さな空間でも閉塞(へいそく)感がない


真っ白な空間に鮮やかな色が映える

リビングの床を除いて、内装はすべて白く仕上げた。キッチン左上の吹き抜けは、内側の壁がマゼンタ(紅紫)色に塗られており、高窓の光を反射して白い壁に色が映り込む


高窓から南の光を入れる2階

2階ホールから階段上の子ども室を望む。1階ダイニングの天井高を確保するため、子ども室の床を高くしている。隣家に囲まれた立地なので、天井近くに窓を開けて南の光を取り入れる


動く壁のような建具で開閉を操作
2階ホールから黄色い壁の奥にある主寝室方向を見る。2階は個室と水回り。それぞれ、建具が開いた状態を前提に設計し、必要に応じて閉め切れるようにした


 建て主夫妻は地元で長く雑貨屋を営んでおり、長男の小学校入学までに近くに家を建てたいと望んでいました。ようやく探し当てた土地は長い路地部分を持つ旗ざお状。周りには家が建て込んでいます。

 当初は自分たちで間取りを考えようとしたそうですが、どうにもならない。ぼくのところに相談に来た時は、「変な土地を買ってしまったかも」と落胆していました。

 しかし、実際に現地を訪れてみると、路地の向かいに隣家の緑豊かな庭があります。敷地の角には、家々の合間を縫って遠くまで視線が抜ける部分もある。十分気持ちのいい家ができると確信しました。

 提案したのは、路地部分を避け、敷地の一番奥まったところに正方形のこぢんまりした建物を配置するプラン。以前から住んでいる近隣の家に配慮して、周囲の視界を遮らないように、ひっそりと建つのがいいと思いました。

 建て主は少しでも日当たりの望める2階にリビングを持ってくるつもりだったようですが、ぼくは、パブリックな空間はできるだけ1階に配した方がいいと考えています。玄関を入ってすぐにプライベートな気配が漂うのはあまり快いものではありませんし、それを払拭(ふっしょく)する工夫を凝らすには面積が足りません。

 そこで、1階西側を全面開口とし、隣家の庭を借景にするリビングとダイニングに。建て主のたっての希望で3メートルの天井高を確保するため、リビングの床を地盤面より少し低くしました。

 ダイニングの床はリビングより60センチ高く、細い吹き抜けで2階の高窓につながっています。この吹き抜けの片側の壁を鮮やかなマゼンタ(紅紫)色に塗り、白い壁に反射する色の変化を楽しみます。

 階段は建物の東端に設け、北側に1・2階を貫くスリット状の開口を切りました。この部分は隣家と隣家のすき間にあたり、階段を下りながら遠くまで見通すことができます。

 正方形に完結した形ではありますが、このスリット窓と階段ホール、吹き抜けなどを通して、家の中を常にゆったりと空気が動くように計画しています。

 住宅を設計する際はいつも、通風はもちろん、視線が抜けたり、空間に奥行きが感じられたりすることを大事にしています。たとえ閉じた空間であっても、その先に続くものがなんとなく意識できれば、のびのびとした気分で過ごせるのではないでしょうか。
(今野政彦/今野政彦建築設計事務所)

KMhouse

建築データ
  所在地: 東京都武蔵野市
  家族構成: 夫婦+子ども1人
  竣工: 2007年9月
  敷地面積: 135.52平方メートル
  建築面積: 53.00平方メートル
延べ床面積: 105.12平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階
  設計: 今野政彦/今野政彦建築設計事務所
  構造監修: 小西泰孝/KSE
  設備設計: 五木田正和/Gn設備
  施工: 野中工務店
連絡先  
  今野政彦建築設計事務所
  代表: 今野政彦
  住所: 〒135-0033 東京都江東区深川2-23-8
TEL 03-3630-0537
FAX 03-3630-0537
E-MAIL: mail@kmarch.net
URL: http://www.kmarch.net/
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