TOPLiving Styleこだわりのデザイナーズ住宅

こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 141「段の家」

自然に寄り添う段状の家、斜面の先に広がるパノラマ


ボリューム感を抑えたたたずまいの北側外観

八ケ岳の山麓に広がる別荘地内に建つ。道路側に対して圧迫感を与えないよう高さを抑え、地盤の傾斜に合わせて片流れ屋根をかけた


斜面から浮かび上がるように建つ木造建物

南面の外観。樹木の生い茂る急斜面からせり出すように建物を載せた。段状につくったコンクリート基礎の上に、木造建物が軽やかに浮かび上がっている


段状に広がる室内空間

室内空間も斜面に合わせて床を段状にした。玄関から続く右手の土間とワンルーム状のLDK「皆の間」を、広い縁側でつないでいる。家族は、床の上に直接座ったり寝転がったりして過ごすことが多いという


空間のボリュームに変化を与えた「皆の間」

パイン無垢(むく)板のフローリングが広がるLDK。段差や傾斜した天井によって、ワンルーム状の空間に変化を与えた。吹き抜けはそのまま右手の2階寝室につながり、ハイサイド窓を通して風が通り抜ける


外の景観をいっぱいに取り込む大開口

南面のガラス窓を片側に引き込むと幅6.75メートルの大開口になる。斜面を覆う樹林の先には、富士山や甲斐駒ケ岳が顔をのぞかせる。縁側のガラス天井には日よけのテントを設置。テントを下に垂らすと、皆の間と縁側の間仕切りになる


パノラマが広がる明るい浴室
浴室と洗面も南面させ、斜面の先に広がる景観をまるごと楽しめるようにした。角部分の窓を引き込み式にしているため、開放感はより高くなった

落ち着きのある空間とした2階寝室

吹き抜けを通じて皆の間とつながるロフト状の2階寝室。北側の細長い窓からは八ケ岳が見える。窓を小さくし、天井高を抑えることで、囲まれたような安心感をもたらす空間とした



 樹木が生い茂る南斜面の先に、富士山と甲斐駒ケ岳がくっきりとした姿を見せる。「段の家」は、素晴らしい景観を持つ自然に対し、寄り添うように建てた別荘です。

 敷地は、八ケ岳の山麓に開発された別荘地に位置しています。道路に沿って駐車場程度の広さがある小さな水平の地面が整備され、そのすぐ南側には急な斜面が続いていました。逆に、道路の北側には住宅が建ち並んでいます。

 こうした敷地と自然の環境を前に、あらがうでもなく、負けるでもない建物を生み出したいというところから設計を始めました。

 建物は、道路側から見ると少し地面へ埋め込むように1階を配置しています。西側にも下っていく斜面に合わせて斜めの屋根をかけ、建物のボリュームを抑えました。また開口を絞り、道路側に対して閉じた外観としています。

 一方、建物の中に足を踏み入れると風景は一変します。

 玄関に続く土間は南斜面に沿って段状に低くし、その先に大開口を通して雄大な景色が開けるようにしました。40代のご夫婦と小学生の子どもという3人家族が、都会から離れた生活を楽しむための住宅です。アプローチ部では、非日常的な空間に入る高揚感を与えたいと考えました。

 「皆の間」と呼ぶLDKも同じように段差をつけ、大開口に向かって空間が広がっていくようにしました。開口沿いには幅2.25メートルの広い縁側を確保し、内と外とをつなぐ中間領域としています。ワンルーム状の空間でありながら、床面や天井の変化によって場所の性格に差異をつけるよう心掛けました。

断面図
断面図

 木サッシを用いた開口部は、片側に引き込むと完全にオープンになります。またガラス天井になっている縁側には、可動式のテントを取り付けました。

 このテントを上げて天井に沿わせると日よけになり、下に垂らせば縁側と「皆の間」を仕切る引き戸式の吊り扉として機能します。可変性のある緩やかな間仕切りによって空間の大きさが変わり、寒い時期には「皆の間」の周囲を仕切って、そこだけを暖めるといった使い方もできるようにしました。

 実は、床面を段状にするという空間構成は、建物の基礎を検討していく過程で生まれました。

 フラットな基礎を斜面につくろうとすると、地盤の低い側に巨大なコンクリートの塊が出現することになります。これでは大量のコンクリートが必要になるし、外観上も威圧感がある。そこで斜面に合わせて基礎を分割し、段々に並べていく方式を採りました。床面は、この形に合わせてつくったものです。

 自然環境や敷地条件、建て主の生活スタイルやコストなど様々な前提条件を踏まえて設計を突き詰めていくと、やがてその場所にふさわしい建物が浮かび上がってきます。無理をなくすと、そこにあるべき空間の在り方が見つかるのです。

 このような“腑(ふ)に落とす”とでもいう作業が、その場所や家族ならではの必然性を備えた建物に結びつき、最終的には建物のオリジナリティーを生み出していくことにつながるのだと考えています。
(二瓶渉/アーキエア)

段の家

建築データ
  所在地: 山梨県北杜市
  家族構成: 夫婦+子ども1人
  竣工: 2006年9月
  敷地面積: 505.90平方メートル
  建築面積: 91.14平方メートル
延べ床面積: 115.79平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階
  設計: (建築)二瓶渉/アーキエア、(構造)名和研二/なわけんジム、(設備)山田浩幸/ymo
  施工: 宮沢工務店
  写真: 坂下智広
連絡先  
  アーキエア
  代表: 二瓶渉
  住所: 〒155-0032 東京都世田谷区代沢5-32-15
TEL 03-6908-3400
FAX 03-6908-3401
E-MAIL: sola@archi-air.net
URL: http://www.archi-air.net/
平面図
おすすめ情報(PR)