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Housing File 142「我孫子の住宅 Kokage」

自由な居場所をつくる、樹木のようなユニット


郊外の環境を生かした平屋に近い建物

道路側外観。写真右手、南側に緑豊かな庭がある。1階にリビング、ダイニングや水回りなどの主な生活空間があり、2階は個室2つだけの、平屋に近い計画だ


樹木のようなユニットのすき間から自然光が差す

幹が枝を広げたような柱と天井のユニットの組み合わせで構成された1階空間。ユニット同士の間にいくつものすき間ができ、そこから空が見える。庭に面した部分は床から天井まで全部が開口になる


樹状ユニットで内と外が混在する

庭から建物を見る。屋外も屋内も、同じように樹状ユニットによってつくられており、内と外の区別があいまいに感じられる


一つ一つのユニットを照らし出す明かり

夕景。ユニットの広い面と天井には天然木が張られている。夜はユニットに取り付けられた照明がそれぞれを照らす。アジアンモダンの家具が配され、リラックスした雰囲気


深い色の壁に囲まれた2階寝室

開放的な1階とは打って変わって、しっとりと落ち着いた2階寝室。床・壁・天井は同じ素材・同じ色で、空間をくるむようなイメージに


個性的な障子でアクセントを加えた和室
2階にある和室は、畳の床に、和紙の壁と天井。花模様を浮かび上がらせた個性的な障子は、柄をくり抜いた板でプラスチック和紙を挟んだもので、裏表がない


 定年を前にしたご夫婦が、新しい生活を送るための建て替えです。これから家で過ごす時間が長くなることを前提に、2人一緒でも、各自好きなことをしていても、お互い気兼ねなく、自由な気分でいられる空間を提供したいと思いました。

 そのためには、リビングやダイニングなどに部屋の使い道を固定せず、そのときどきで居場所が選べる方がいいのではないか。また、例えば妻が料理に没頭し、夫が読書を楽しんでいるようなとき、お互いの姿が丸見えになるよりは、適度に隠れる距離感が欲しい。

 敷地は約80坪と、都心部に比べれば広く、南には丹精してきた緑豊かな庭があります。郊外ならではの環境を生かし、庭の木陰の延長のような、自然に近しい建物がつくれないかと考えました。

 一般的に建築には、頑丈で大きな箱をつくって、そこに窓を開けたようなイメージがあると思います。対して、この「我孫子の家」は、1本の柱と1枚の屋根でできたユニットを並べることで建物を構成しています。このユニットを私たちは「ツリー・ユニット」と名付けました。それぞれが1本の木のような、傘のような形です。

断面図

 各ユニットは正方形の屋根に対し、細長い壁状の柱を、それぞれ中心からずらした位置に取り付けています。全部で10のユニットは、一つ一つ形が異なります。

 これらのユニットを並べることで、細長い壁が大小様々なコーナーをつくり、同時に、全体がつながりながらも、適度に見え隠れする空間が生まれます。ユニットの屋根と屋根の間にすき間ができて、木漏れ日のように青空がのぞきます。

 まるで半戸外にいるような、明るく開放感のある空間。そこに、それぞれのコーナーの大きさや個性に合わせて、ダイニングテーブルを置いたり、キッチンを設けたり、あるいは浴室や洗面室に充てました。ちょうど森の木陰にいろいろな居場所をつくったように、大小の違いはあっても、どの場所にも日の光が差し込みます。

 照明はそれぞれの壁に、ユニット上部を照らすように取り付けました。壁の中には井戸水を循環させるパネルを仕込み、空間全体を柔らかく冷やす輻射(ふくしゃ)式冷房の機能を持たせています。つまり、このツリー・ユニットは、建物の構造体であり、空間を構成する要素であり、なおかつ照明と冷房の機能も兼ね備えているわけです。

 現代の住宅は、性能を追求し、高気密高断熱に向かうことで、壁が厚くなり、自然との関係が希薄になる傾向があります。しかし、本来人間は、自然に近い状態のほうが心地良く感じるのではないでしょうか。人工でありながら自然に近い空間をつくる方法を、ずっと模索しています。

 同時に、一つ一つの住宅をつくる目的は、あくまでも住む人の暮らしにあります。建築家の作為が先行してもつまりません。建て主と共感できる快適さ、居心地の良さを発見していきたいと考えています。
(末光弘和/一級建築士事務所SUEP.)

我孫子の住宅 Kokage

建築データ
  所在地: 千葉県我孫子市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2008年7月
  敷地面積: 267.80平方メートル
  建築面積: 107.40平方メートル
延べ床面積: 143.20平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階
  意匠設計: 末光弘和+末光陽子/一級建築士事務所SUEP.
  構造設計: 坪井宏嗣/坪井宏嗣構造設計事務所
  空調設備: 小林光
  電気設備: 塚田文哉/TWO-PLAN
  施工: 小川共立建設
  写真: 鳥村鋼一
連絡先  
  一級建築士事務所SUEP.
  代表: 末光弘和+末光陽子
  住所: 〒158-0094東京都世田谷区玉川4-21-1#203
TEL 03-3709-5915
FAX 03-3709-5915
E-MAIL: mail@suep.jp
URL: http://www.suep.jp/
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