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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 144「変形地・OFFSET」

敷地の極端な変形を逆手に、のびやかで変化のある空間を生む


線路そばに建つコンクリートのオブジェ

西側外観。隣にバス専用道路と線路が走る。騒音と振動を避けるため、こちら側には明かり採りの小さな窓だけを開けた。左側の2階テラスは、変形敷地のとがった形に沿っている


吹き抜けのダイナミックなエントランス

敷地が旗ざお状になっているおかげで、玄関は外部から死角になる。そこで、エントランスホールを大胆なガラス張りにした。親子2世帯の共用玄関で、2層吹き抜けの大きな空間である


まるで峡谷を行くような通路

中2階の2世帯共用部分から2階・3階を見る。写真正面は2階リビング。通路の上にかかるグレーチングの階段は、3階のチャイルドスペースとルーフテラスをつないでいる


斜めに変形した空間を有効活用

1階親世帯のLDK。天井の一番高いところは3メートル以上ある。外壁の一部を少し張り出してデスクを造り付け、スペースを有効に活用した


折り返しの動線が距離感をもたらす

2階の子世帯リビングから中2階の共用部と3階を見る。3階の奥にある寝室までが見通せる。上下に重なるフロアを折り返しながら通る動線が奥行きを感じさせる


南に庭を確保し密集地に光を導く
敷地の変形に沿って建物も変形させ、南に庭を確保した。線路のある西側以外はすべて隣家に囲まれた密集地だが、1階北側のリビングまで自然の光が届く


 敷地は路地を含む旗ざお状で、しかも「旗」にあたる部分も斜めに変形しています。周囲は隣家に囲まれ、唯一開けた西側はバス専用道路。その向こうには線路が通っていて、騒音や振動への対策も必要です。

 この変形地に四角い建物を置けば、使えない空地が生じるばかりか、南側にゆとりのない、暗い家になってしまいます。敷地全体を有効に使うには、敷地の形に柔軟に対応した方がいい。それには、木造より自由に形がつくれる鉄筋コンクリートが向いています。鉄筋コンクリートなら、騒音や振動にも耐えられるでしょう。

 斜めに入り組んだ敷地形状にメリットがあるとすれば、それは直角の整形地より長い対角線が引けるということです。様々な方向に延びた敷地境界線を「OFFSET」、つまり並行にずらしてアウトラインを引き、建物の外形を決定しました。

 建て主は、両親と娘夫婦の2世帯。建物内部をスキップフロアで4つのレベルに分け、1階を両親、中2階を共用、2階と3階を娘夫婦の専用スペースに充てました。天井高にメリハリをつけ、フロアを上下にずらすことで床面積を確保し、なおかつ建物全体の高さは抑えてコストダウンにつなげました。

断面図


 東側の玄関を入ると、敷地に沿った斜めのラインを縫うようにして西側奥のLDKにたどりつきます。吹き抜けの2階・3階は、スキップフロアの高低差もあいまって、まるで峡谷を上っていくような雰囲気です。さらに、2階でいったん折り返して3階へ上がる動線は、敷地からは想像できないほどの距離感を味わわせてくれます。

 2世帯住宅は、最小単位の集合住宅ととらえることもできます。集合住宅の利点は、エントランスや収納など、複数の世帯で分け合うからこそできる、豊かな共用部分にあるといえるでしょう。この住宅では、親子2世帯で玄関とゲストルームを共用し、ガラス張りのダイナミックなエントランスを実現しました。

 私がつくる住宅はコンクリートもあり木造もあり、素材もデザインイメージも統一感がないと受け取られるかもしれません。しかしそれは、一つ一つのプロジェクトに対して予断を持つことなく、そこで一番大事なことは何かを考え抜いてきた結果なのです。たとえばこの住宅では、厳しく特殊な敷地条件を、いかにしてプラスに転じるかが最重点課題でした。

 ほかの住宅では、景観や気候、または家族構成や暮らし方を重要視することもあります。要素も条件もそれぞれ個性のあるテーマに対し、最善の答えを求める方法は、外部環境と空間、空間と空間、家族と空間、家族同士などの「関係性をデザインする」ということではないかと考えています。
(奥村和幸/奥村和幸建築設計室)

変形地・OFFSET

建築データ
  所在地: 東京都国分寺市
  家族構成: 夫婦+両親
  竣工: 2007年2月
  敷地面積: 171.70平方メートル
  建築面積: 85.47平方メートル
延べ床面積: 169.56平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り、地上3階建て
  設計: 奥村和幸/奥村和幸建築設計室
  施工: 大新興業
  写真: 北嶋俊治/アーキフォト
連絡先  
  奥村和幸建築設計室
  代表: 奥村和幸
  住所: 〒181-0012東京都三鷹市上連雀4-19-10
TEL 0422-76-6833
FAX 020-4622-8926
E-MAIL: mail@oku-mura.com
URL: http://
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