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Housing File 146「ライトシェルフのパッシブソーラーハウス」

太陽の光と熱を有効利用、車いすでも快適に暮らせる家


南面に日差しを調節する庇を延ばす

南側外観。右手前のスロープは車いすを使用する家族のため。玄関ドアは開口幅の大きな引き分け戸である。日差しを適度に遮るため、窓の上に庇(ひさし)を延ばしたほか、東西に袖壁を設けている


接客スペースを兼ねた玄関ホール

車いすをたたんで置いてもゆとりのある、たたきの広い玄関ホール。近隣の人などが訪ねてきたときも、短時間ならここで応対できるよう、簡易なテーブルセットを置く計画である


太陽の熱を床に蓄える南面の廊下

LDKと玄関を結ぶ廊下。床に黒いタイルを敷いて、日差しの熱を蓄える。左手には寝室が並び、廊下で蓄えた暖気を床下から吹き出して暖める。写真手前はトイレの入り口


車いすでも動きやすいよう工夫したLDK

LDK。車いすで調理を行うので、キッチンカウンターの下はオープンに。ダイニングテーブルは片側を収納、片側を柱と吊り材で支え、邪魔な脚を減らした。壁の向こうは浴室。上部をオープンにして、互いに声が掛け合えるようになっている


明るい場所で裁縫を楽しむ畳室

LDKの南側に位置する畳室。日当たりのいい場所にゆったり座って針仕事を楽しむための場所として用意した。車いすから畳に降りるときの補助として、壁に手すりと折りたたみいすが造り付けてある


太陽の光と熱を調節するライトシェルフ

廊下見上げ。上からかぶさっている半透明の窓のようなものは「ライトシェルフ」。太陽光を天井に反射させて家の奥まで届ける。乳白色のポリカーボネートを透かして下にも光を拡散する。夏は閉めて、日差しの熱を防ぐ



 それぞれにハンディキャップを抱える3人の兄弟が、助け合いながら暮らす家です。兄が家を管理し、姉が食事をつくり、弟は外に働きに出ています。設計時には要介護の母親も同居していました。

 姉は車いすを使うので、バリアフリーが前提です。幸い敷地にゆとりがあったので、建物は南向きの平屋にしました。緩やかなスロープを上って、引き分けの玄関扉にアクセスする計画です。介護サービスの人がすぐに母親のところに行けるよう、玄関の近くに寝室を並べました。

 寝室同士は引き戸で仕切られ、お互いに行き来ができます。欄間(らんま)部分はオープンにつながっているので、万一就寝中に異変があっても声が届きます。

 LDKは西側に配し、南に張り出しました。キッチンは車いすに座ったまま、カウンター下にひざを入れられる高さに調整した特注品。ダイニングテーブルは大黒柱と吊り材で支え、床にできるだけ障害物がないようにしています。

 LDKの南側には畳室。ここは姉が趣味の裁縫をする場所です。明るいところで姉に針仕事を楽しんでほしい、というのが家族のたっての希望。畳がやけることも承知のうえで、あえて南に敷きました。

 なるべくお金をかけずに快適な環境を保つため、この家では「パッシブソーラー」の手法を取り入れています。「受動的」という意味の「パッシブ」は、機械に頼らず、建物そのものの工夫で、太陽の熱や光の有効利用を目指す方法です。

 そのひとつは、玄関とLDKを結ぶ廊下の「蓄熱床」。南面の廊下の床に黒いタイルを敷き、日中、太陽の熱を蓄えます。そこから立ち昇る暖かい空気を、欄間付近でパイプに吸い込み、ファンを回して寝室の床下から吹き出す仕組み。リビングでも同様に、パイプとファンを使って、暖かい空気が循環するようにしてあります。
断面図

 もうひとつは、高窓部分に設けた「ライトシェルフ」。これは、日光を天井に反射させて、建物の奥まで届ける庇(ひさし)のようなものです。一般的には建物の外側に設けますが、ここでは高窓の内側に、内倒し窓のように開閉可能なものとして造り付けました。乳白色のポリカーボネートを2枚重ねにして木枠にはめ込んでいます。冬は開放すれば日光の反射と拡散の両方に作用し、空間全体を柔らかな熱と光で包みます。逆に、夏は閉めておけば断熱性を発揮して、強烈な日射を防ぎます。

 太陽の光は、室内に取り入れるばかりでなく、適度に遮る工夫も必要です。近年は中間期もかなり気温が高いので、暑くなりすぎないように気をつけなければなりません。この家では、窓の外側に張り出した庇と袖壁が強烈な日差しをカットします。蓄熱床のある廊下は、少し奥まっているので、夏の朝の光や西日は差し込みません。

 最小限のコストで最大限の空調効果を発揮する。パッシブソーラーなら、余分なエネルギーを消費することもありません。これからの住まいに必要な機能ではないかと考えています。
(宮崎豊/MDS建築研究所)

ライトシェルフのパッシブソーラーハウス

建築データ
  所在地: 神奈川県相模原市
  家族構成: 兄弟3人
  竣工: 2008年3月
  敷地面積: 498.88平方メートル
  建築面積: 148.36平方メートル
延べ床面積: 136.49平方メートル
  構造・規模: 木造、平屋建て
  設計: 宮崎豊/MDS建築研究所
  施工: 管野工房
連絡先  
  MDS建築研究所
  代表: 宮崎豊
  住所: 〒216-0004 神奈川県川崎市宮前区鷺沼1-12-3-304
TEL: 044-877-4383
FAX: 044-877-4383
E-MAIL: mds@
bekkoame.ne.jp
URL: http://www.
bekkoame.ne.jp/~mds/
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