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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 15 「y-Y HOUSE」

陽光を求めた3階リビングの家、らせん階段を透過する都市の光

Y字柱が支える傾斜屋根
西側の窓サッシは、採光のため極力細く計画。斜めの骨組み(丸鋼)の落とす影が、部屋に表情を生む。室内を明るく見せるため、床材は白肌のパイン材、家具はシナ合板を使用
らせん階段による公・私室の立体分離
写真正面は作業スペース。左はトイレ。作業スペースの背板のブルーが、室内のアクセントとなっている。デッキ部分のFRPグレーチングは、トップライトの光を下階へ導く
「見せる」浴室&洗面室
ショーウインドー感覚で、白で統一された浴室&洗面室。ロールスクリーンを下ろせば、視線を遮ることができる
外と内の融合空間
戸外と段差のない玄関は、現代風の土間。ガレージ(写真奥)の引き戸を開ければ、玄関は半ば戸外空間となる
セットバックしたガレージ
道路の幅が狭いため、隣家の車の出し入れを考慮し、ガレージを1.2メートルセットバック。西面の折りたたみ戸と北面の引き戸ともに全開閉が可能
街と融合する住宅
道路に面したガラス張りの建物は、自己主張しながらも街と一体化する。建物は、意匠上できるだけ目立たぬよう、東側の太い柱(150×150)と、西側の細い柱(100×100)のH型鋼で支えている

 横浜市のほぼ中心、住宅と工場が混在する地域。施主は30代半ば、夫婦ともにコンピューター関係の仕事に就き、昨年初めにお子さんが生まれたばかりの3人家族です。立地は、南側と東側を隣接する建物にふさがれているため、限られた日照をいかに室内に採り入れることができるか、それが設計上、最大のポイントとなりました。

 住宅密集地にあって、かろうじて道路に面した北面と西面。北側からの日射は期待できないため、西側からの日照が得られ、採光上有利な最上階の3階をリビングスペースとしました。その上で、西側を高くした傾斜屋根とし、壁の上にガラスをはめ込んだ大きな窓を設置しました。

 採光のため、窓枠にはできるだけ細いサッシを使用し、屋根の重みは、サッシに沿ったロッドを含む、変形Y字柱によって、壁の躯体へ吸収させています。この断面形状から「y-Y HOUSE」のネーミングが生まれました。


  住戸のプラン構成は、らせん階段を垂直コアとして、居室空間とユーティリティー空間を各階とも分離しました。3階はリビングと作業スペース、キッチン、トイレ。2階は寝室と浴室、洗面室に、それぞれ分離しています。

  その上で、限られた採光を最大限に生かすために、階段の踏み板は、オープンメッシュに、両サイドのデッキ部分はFRPグレーチング(*)とし、最上階のトップライトからの光を下階へ導いています。また、メッシュの階段は、室内空気を対流させるという効果を発揮します。

 リビングスペースを3階に置いたため、2階に寝室と浴室&洗面所といったプライベートスペースを配置するプランとなりました。来訪者はどうしても2階フロアを通過せざるを得ませんが、ここは思い切って発想を転換。ユーティリティーの内装を白で統一し、まるでショーウインドーをのぞくような、「見せる」浴室&洗面室としました。洗面の大きな鏡は、室内に広がりを持たせるとともに、階段を移動する自分すら、鑑賞の対象となるかのような、空間演出装置になっています。

  玄関は50ミリメートル角の白いタイル貼りで、上階から降り注ぐ光を反射し、室内を明るく保ちます。戸外と段差のない玄関は、らせん階段によってトップライトからの光を受け、さながら路地を思わせます。そして、この玄関に面した南側の予備室は、ご両親が泊まることを考慮したコルクタイル貼り。仕切りの引き戸の枠は木製で、自然光が注ぐ白いモダンな空間に、木調の柔らかい雰囲気を加えました。

 車好きの施主の要望により、ガレージと玄関の間の引き戸を開ければ、1階のガレージとらせん階段が一体化し、家中どこにいても車の存在が感じられるプランとしました。ガレージの西面は折りたたみ戸、北面は引き戸によって全開閉が可能で、マルチユースの空間となっています。

  また、現代的な土間としての玄関を路地と見立てれば、外に開いた大きな開口部は、街と住まいが融合するための装置となります。街とのかかわり、人間とのかかわり合いがあってこそ、住空間はより豊かなものになるのです。

  いかに制約の多い敷地条件、建築条件であっても、設計者は、施主の生活スタイルにこたえる質の高い空間を提供する義務があると考えています。むしろ、困難な条件のなかから、新しい発想やアイデアが生まれてくるものです。「y-Y HOUSE」も、ギリギリの設計条件の中から生まれた、現代感覚あふれる都市住宅作品のひとつとなりました。
(松葉 力・テレデザイン)

*FRPグレーチング:FRP(ガラス繊維強化プラスチック)を格子状に溶接したもので、ビル・船舶などの床板や、道路・橋梁などの歩廊用床板などに使われる土木建築材。身近なものでは公園や道路の溝ふたが挙げられる。


「y-Y HOUSE」


建築データ
  所在地: 神奈川県横浜市
  家族構成: 夫婦、子ども1人
  竣工: 2002年12月
  敷地: 81.50平方メートル
  建築面積: 41.82平方メートル
  延べ床面積: 108.91平方メートル
  構造・規模: S造、地上3階建て
  工事費: 坪75万円(諸設備すべて含む)
  設計: 松葉 力、小川靖子/テレデザイン
  構造: 我伊野威之、青木秀太郎/
G.DeSIGN(我伊野構造設計室)
  施工: 菅野 仁/菅野住建
家具: 橋本史一/サンダンス・ウッドワークス
  写真: 野秋達也
連絡先
  テレデザイン
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東京都港区三田2-12-5オープンスタジオNOPE
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