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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 150「trifurcation・三叉の家」

三方に枝分かれする建物で、内と外の多彩な関係をつくる


放射状に開くユニークな建物

南側外観。敷地は約70坪あるが、路地状部分や擁壁を除けば建物が建てられるのは45坪ほどしかない。そのうえ、一部は鋭角に変形している。そこで、建物を中央から放射状に広がる「三叉」の形にし、方位によって変化する内と外の関係をつくりだした


来客を迎え入れるガラス張りの玄関

敷地は旗ざお状で、前面道路から駐車スペースを通って玄関に至る。地形に高低差があるため、玄関は地下1階。地下はフロア全体がアトリエで、ドアも壁もガラス張りになっており、来客も入りやすい


多目的に使える地下空間

地下1階は天井際にぐるりと窓が回っていて自然光が入り、風通しも良い。現在はアトリエに使っているが、ゆくゆくは親との同居のために使うことも想定している


多彩な方向に開く吹き抜け空間

1階中央部から室内を見渡す。写真左奥が東側に開くダイニングとキッチン、右手は南向きのリビング。2階とも吹き抜けでつながっている


見え隠れしながらつながる場所

1階ダイニングから吹き抜けを見上げる。奥には1・2階を貫く高い窓が開く。右手の壁のカーブの奥には、もうひとつ別の空間が続いている


ブリッジで分かれるプライベート空間
2階はブリッジによって各部屋に分かれる。写真右奥は寝室、左側は浴室に至る。手前は引き戸で開閉できる自由度の高いスペースになっている


 敷地はいわゆる「旗ざお状」ですが、郊外なので、周辺はあまり建て込んではいません。一方で、建物を敷地境界線から1メートル以上内側に後退させなくてはならないルールがあるうえ、敷地の一方の角が鋭角に変形し、道路や隣地との間に不規則な高低差があります。この中に建物をどう配置するか、いくつもの模型をつくって検討しました。

 建物は中心から3つの翼が延びる、「三叉路」の形をしています。上から見るとY字型で、建物の周りに3つの庭が生まれます。そのそれぞれに、方位や隣地との関係に応じた、異なる性格を与えました。

 西南の庭は、敷地の鋭角部分の距離を生かしたメーンの庭。東南の庭は家庭菜園に充てます。敷地の南側は擁壁になっているので、柱を立ててウッドデッキを渡し、2つの庭をつなぐテラスをつくりました。残る北側は裏庭で、給湯器や室外機置き場、物干し場に使います。

断面図

 敷地は前面道路より高いため、玄関は地下階に設けました。建て主夫妻はともに自宅を拠点に仕事をしており、地下階は夫のアトリエです。

 1階と2階は吹き抜けでつながる、一体感のある空間になっています。ただ、中央から3方向に枝分かれしているので、全部が丸見えになることはありません。地下からの階段は1階中央に入り、そこから東がダイニングキッチン、南がリビングと、緩やか に領域が分かれます。妻は、1階西側に延びる翼を引き戸で仕切って仕事場にしています。

 2階は吹き抜けにかけたブリッジを通って3方に分かれます。西側は浴室、東側は寝室で、南側は現在のところオープンスペースですが、引き戸で独立させられるようになっています。

 下にパブリックな空間を配し、上へいくほどプライバシーの度合いが高くなる構成は、この住宅が仕事場を兼ねているからです。しかし、玄関は公私を分けず、あえてひとつにしました。家族に限らず、仕事の依頼主や取引先、友人や近隣住人など、さまざまな人を生活空間まで招き入れ、もてなしたいというのが建て主の願いだったからです。

 これからの時代は、住まいに仕事を持ち込むことは特別ではなくなると思います。自営業でなくとも、在宅勤務を採り入れている企業もあります。また、高齢化が進めば、介護のために家族以外の専門スタッフが出入りすることも増えるでしょう。住宅はプライベートな場として閉じたままではいられず、社会に向かって開く方向に向かうだろうと考えています。

 そこで、玄関ドア1枚で内と外を分けるのではなく、家の中に中間的な領域を設けておくといいでしょう。たとえば、この住宅では、地下階が中間領域に当たります。現在は夫のアトリエですが、将来は親を住まわせられるように、浴室用の配管を用意してあります。また、子どもたちの部屋に使うこともあるかもしれません。

 中間的な領域があれば、家族構成や生活スタイルが大きく変わっても対応できます。同時に、部屋の機能を入れ替えられるようにしておくことも、これからの住宅に必要な視点ではないでしょうか。
(桑原茂/桑原茂建築設計事務所)

trifurcation・三叉の家

建築データ
  所在地: 神奈川県川崎市
  家族構成: 夫婦+犬1匹
  竣工: 2008年5月
  敷地面積: 235.03平方メートル
  建築面積: 66.57平方メートル
延べ床面積: 149.01平方メートル
  構造・規模: 鉄骨、一部鉄筋コンクリート造り、地下1階・地上2階建て
  建築設計: 桑原茂建築設計事務所
  構造設計: オーノJAPAN
  施工: 栄港建設
  写真: 太田拓実
連絡先  
  桑原茂建築設計事務所
  代表: 桑原茂
  住所: 〒215-0021神奈川県川崎市麻生区上麻生3-10-55
TEL 044-281-9961
FAX 044-281-9962
E-MAIL: info@swerve.jp
URL: http://www.
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