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Housing File 151「是政ハウス」

借景と厚い壁の活用で、狭小敷地を最大限に生かす


背後に緑地が広がっている敷地環境

西側にあるバスロータリーから望む。左端に見えるのが今回の家。南側に隣接して住宅が建ち、残りの2方向に緑地が広がっている


陰影のある見せ方を意識した西側外観

前面道路から見上げた様子。スギ羽目板とガルバリウム鋼板を張り分けた。外壁を通常より厚い215ミリとし、開口部サッシを外面から奥まるように設置することで、彫りが深く陰影のある外観とした


緑地に対して開いた2階リビングダイニング

府中市が管轄する東側の緑地に向けて開口とバルコニーをつくった。借景を活用し、限られた敷地面積に建つ住宅に視覚的な広がりを与えた


空間のアクセントになる造り付け収納

階段からリビングダイニングを見る。窓の上の造り付け棚は、扉の数枚を有彩色に塗装した。木などの素地を生かした色調の一部に色を加え、空間のアクセントとしている。右側に見える棚は、厚い外壁を掘り込んでつくった収納


手作りの要素を盛り込んだ階段まわりと什器(じゅうき)

階段の目隠しとなる2階リビングダイニングの造り付け棚。ラーチ合板を使用した棚は大工が製作し、コストを削減している。黒い手すりは鍛造した鉄によるもので、知り合いの作家に依頼した


“もう1つの庭”となる屋上テラス
限られた面積を最大限活用するために設けた屋上テラスへの出入口。階段室は斜線制限をかわしつつ、緩やかな曲面を描いている。テラスからは、多摩川の広大な河川敷を望むことができる

コンパクトにまとめたサニタリー

浴室、洗面、トイレを集約した水回り。壁の一部をくぼませて収納を確保した。壁面の緑は、鏡に映り込む姿をきれいに見せる色として選んでいる



 木造2階建ての既存建物を改修してほしいという依頼が、今回のプロジェクトの始まりでした。検討してみると構造上の補強などが必要となり、費用がかさんでしまう。むしろ建て替えたほうがいいという話になり、新築しました。

 設計に際しては、2つの大きなテーマがありました。

 1つは、53.74平方メートル弱という狭小な敷地を最大限生かすこと。2つ目は、建て主が10年後くらいをめどに海の近くへ移住する計画を持っているため、その後は貸し出すという前提であること。つまり、賃貸住宅としての一般性を持たせる必要がありました。

 これらの課題に対し、次のように考えました。

 まず狭小敷地の活用について。敷地の南側にはすぐ目の前に住宅が建っていますが、東と北の2方向には府中市が管轄する緑地が広がっています。これらの緑地には、将来的に建物が建つ可能性はほとんどないことが分かりました。

 そこで、隣の住宅が近接する南側からの採光にこだわらずに、広がっている緑地の方向へ住戸を開きました。敷地内には庭を確保せず、緑地を積極的に借景する。同時に、なるべく空間を広く見せるために、内部の活動と外部空間が関連性を持つようにしました。

 具体的には、1階の寝室とフリースペースの外側に、東の緑地に向かって敷地境界線に沿うようにデッキテラスを張り出しました。また空間の広がりをこれ以上水平方向には延ばせないので、縦方向に開きました。地上の庭の代わりに、屋上にルーフテラスをつくったのです。ここでは物干しをしたり、多摩川の河川敷を眺めながらビールを飲んだりできるようにしています。

 さらに、収納を確保するための工夫も施しました。

 1階の寝室とフリースペースには両側から使える押し入れを用意し、床下の一部も収納として活用しています。

 加えてリビングやサニタリーには、通常より厚い215ミリの外壁を利用し、壁を掘り込んだ棚をつくりました。限られた空間の中、壁の外側に出てこない掘り込み収納は室内をすっきりと見せるためにも効果的です。

 壁厚の大きな外壁は、設備配管などの通り道としても利用しています。壁内に空気層が生まれるため断熱効果を期待できますし、開口部サッシを外側に飛び出さない内付けにできる。その結果、彫りが深く陰影のある外観を得られます。

 次に、賃貸住宅としても利用できる普遍性を持たせるためにはどうするか。

 ここでは家の中央を貫くように階段を配置し、両側に多様な使い方が可能な大小のスペースを配置しました。1階と2階合わせて4つのスペースを用意したのです。

 現在は、1階の2つのスペースを寝室とフリースペースに充て、2階では大きなスペースにリビングダイニング、小さなスペースにキッチンとサニタリーを入れています。2人の小さな子どもがいて、近い将来寝室が2つ欲しいと考える建て主のライフスタイルに合わせたものでした。

 一方、10年後に賃貸住宅とする場合は、例えばサニタリーを1階のフリースペース部分に置き、2階を広いリビングダイニングとキッチンとして使うことも可能です。基本となる空間の骨格をつくっておけば、今後様々な利用に対応できる柔軟性が生まれます。

 最終案に至るまでには、20近い案を検討したでしょうか。特に狭小住宅の場合、住み手のライフスタイルに何が必要かという優先順位を過不足なくつけることは、限られた面積を最大限活用するために欠かせません。

 時間を惜しまず、建て主夫妻とざっくばらんに議論できたことが、2つの命題への解答に結び付いたといえるでしょう。
(上原和/上原和建築研究所)

是政ハウス

建築データ
  所在地: 東京都府中市
  家族構成: 夫婦+子ども2人
  竣工: 2007年7月
  敷地面積: 53.74平方メートル
  建築面積: 26.83平方メートル
延べ床面積: 53.70平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  設計: 上原和/上原和建築研究所
  施工: 小松工務店
連絡先  
  上原和建築研究所
  代表: 上原和
  住所: 〒184-0004 東京都小金井市5-37-14
TEL 042-401-1248
FAX 042-401-1249
E-MAIL: uehara@k-uehara.com
URL: http://www.
k-uehara.com
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