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Housing File 152「恋ケ窪の家」

両親の家と「中庭」を共有、日だまりと自然な交流を生む


奥まった敷地に建つ小さな家

敷地は旗ざお状で、周囲は隣家に囲まれている。中庭に面した大開口は北側なので、写真右手上のルーフテラスからも光を補えるよう、屋内全体を連続した空間にしている


家族が集まる日だまりの庭

中庭からダイニングを見る。写真手前に両親の家があり、この庭は2つの家に日光を届ける役割と、両世帯の交流の場としての役割を持つ


少しずつ変化しながら連続する空間

1階南側コーナーにあるリビングからダイニング方向を見る。ダイニング左手は大開口でテラスにつながり、キッチンとは一部対面する。右手の低い壁は段差のあるワークスペースで、そこから吹き抜けの階段で2階までつながる


段差やコーナーを利用して多様な「場所」をつくる

キッチンからワークスペース、ダイニングを見る。ワークスペースの奥のコーナーにソファを造り付け、落ち着きのあるリビングスペースとした。ソファの上に開いた窓から建物の角方向に視線が抜けるので、狭さを感じさせない


少しずつレベル差を設け、上下階を緩やかにつなぐ

2階からワークスペースを見下ろす。ダイニングのレベルから数段高いワークスペース、折り返しの階段へと、空間がつながりを保ちながら少しずつ上昇していく


“フレキシブルに使う2階空間
2階のプレイルーム。子どもたちが成長したら家具などで仕切ることを想定している。引き戸の向こうは寝室。中央の階段の奥はサンルーム兼浴室に続く

日の光を楽しむサンルーム兼浴室

ルーフテラスに面したサンルーム。右手奥が洗面、写真左にガラス張りの浴室がある。サンルームの光は、2階プレイルームの白い内装に反射し、1階まで柔らかく照らす



 建て主は、まだ幼い2人の子どもを持つご夫婦です。以前は奥さまのご実家の敷地の一角にあった古屋にお住まいでしたが、老朽化によって建て替えることになりました。そのためには、それまで母屋と一体だった敷地を分割しなくてはなりません。母屋の建ぺい率を守りつつ、前面道路につなぐ路地部分も必要です。

 こうして分割すると、敷地いっぱいに建てても建て坪は13坪ほど。なおかつ、周りには隣家が建て込んでいます。以前の住まいは日当たりが十分でなく、冬の寒さをなんとかしたい、と望んでおられました。一方で、日ごろからお隣に住む奥さまのご両親とも足繁く行き来しているようで、両家の仲の良さが自然に伝わってきます。

 この条件下で「日の光を感じる暖かい家」というご希望をかなえるために、何ができるだろうか、と考えました。家の中にいつでも日光が降り注ぐサンルームをつくること、快適な暖房システムの提案、そして、北側にあるご両親の家の日当たりを損なわず、2つの家がつながりを保ち、一緒に暮らしている実感が得られることがテーマになりました。その結果、「2つの家の間に日だまりとなる中庭をつくり、そこに向かって開く家」という発想が生まれました。

配置計画ダイアグラム

 ご両親の家の縁側に向かい合う北側部分を「中庭」として日だまりをつくり、広いデッキテラスを設けます。建物はこの庭を囲むL字型に配置しました。リビング・ダイニングは中庭に面して4メートルの幅で開く引き込み戸を持ち、気候のよい時期は戸を開放してデッキテラスとつながります。テラスは親子2世帯の交流の場となり、夏はテーブルを出して戸外での食事を楽しんでいるようです。

 建物の延べ面積は70平方メートルと小さいので、壁で仕切って部屋をつくるのではなく、性格づけされたさまざまな「場所」を配していく方法をとりました。食べる場所、くつろぐ場所、勉強する場所など、それぞれの場所に応じた空気感、居心地の良さを与えながらも、全体としては連続した空間になっています。

 1階は、南から、コーナーにソファを造り付けたリビング、中庭に面したダイニングと続き、そこから2段ほど上がると、本棚とデスクで囲まれたワークスペースがあります。吹き抜けの階段を上がるとオープンなプレイルーム。そこから、さらに少し上がるとルーフテラスに続くサンルーム・浴室に続きます。

 サンルームは1年中太陽の光を感じることのできる明るい場所になっています。冬は、1階の床下全体に設置したラジエーターパネルの中を温水が循環し、床面を温めながら輻射(ふくしゃ)熱で家全体を暖めます。夏は、1階の涼しさを利用して2階との温度差による対流をつくり、下から上へと自然に風が抜ける構成です。

 なるべくエアコンに頼らず、太陽熱や蓄熱体を利用する「パッシブ(受動的)エネルギー」の利用や、建物の中に自然な風の流れをつくるデザイン、高断熱な建物は、私が設計に取り組むとき、常に大切に考えるテーマです。

 このほか、建築の中に明るいところと暗いところをつくり、空間に変化と豊かさを生むこと、また、植物や木漏れ日や水の揺らぎのような自然の要素を取り入れながら、長く愛されるデザインを実現すること、そして、人間をはじめとする「生命」の豊かさを映し出す「多様性」を建築で表現すること……いずれも、大事にしているテーマです。具体的な実現方法は建物の条件、敷地によって異なりますが、今までもこれからも、変わらないテーマとして追求し続けていくだろうと思います。
(田口知子/田口知子建築設計事務所)

恋ケ窪の家

建築データ
  所在地: 東京都国分寺市
  家族構成: 夫婦+子ども2人
  竣工: 2008年6月
  敷地面積: 89.12平方メートル
  建築面積: 43.60平方メートル
延べ床面積: 70.36平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  設計: 田口知子建築設計事務所
  構造設計: 坪井宏嗣構造設計事務所
  施工: 小山工務店
  写真: 上田宏
連絡先  
  田口知子建築設計事務所
  代表: 田口知子
  住所: 〒141-0022東京都品川区東五反田5-22-5-214
TEL 03-5447-2420
FAX 03-5447-2435
E-MAIL: taguchi@t-taguchi.com
URL: http://www.
t-taguchi.com/
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