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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 158「蓮野の家」

低い屋根越しに森を望む、新しい世代の「和」の家


風景に溶け込む下見板張りの建物

北側外観。中央の奥まった部分に玄関がある。外壁は伝統的なスギの下見板張り。集落内のほかの古民家の色調に合わせ濃灰色に塗装した


ほの暗い空間の先に緑を切り取る

玄関は外の冷気を遮断するため筒状の独立した空間になっている。正面の低い窓越しに向こう側の雑木林の景色が見通せる。沓脱(くつぬぎ)石と左手前の古びた建具は建て主が親元から持ってきたもの


玄関を挟んで空間を振り分ける

東側の廊下から玄関を挟んでLDK方向を見通す。玄関を中心に、来客も訪れるLDKと家族だけのプライベートな空間が振り分けられている


奥行きを生かし屋根の構造を見せるLDK

奥行きの深いLDKは、急こう配の屋根構造が印象的な空間。屋根がぐっと低くなったその先に、日光を浴びた雑木林の緑が見える


V字型の建物のコーナー部を利用した書斎

書斎コーナー。写真左の黒く塗った壁は玄関。V字型に連なる屋根構造を見せるため、天井の上を開けている。写真右下のにじり口から、隣の予備室に出入りできる


縁側に沿って畳の個室が並ぶ和の構成

建物の東の端から縁側を見通す。主寝室、予備室はいずれも和室で縁側に沿って並んでいる。外は隣接する神社の杜(もり)に続く雑木林


 新潟市郊外の田園地帯に建つ家です。建て主は地元出身の若い夫婦で、親元から独立するために土地を購入しました。この場所を選んだ最大の理由は「隣に神社があること」だそうです。若いけれども、古いもの、日本の伝統的なものが好きなので、住まいも「和」を目指すことになりました。

 敷地は200平方メートル超と、都会ではなかなか望めない広さです。これだけゆとりがあるなら、そのゆとりを生かして家の中に距離感をつくりたい。そこで、平屋の建物を、敷地の輪郭をなぞるようにV字型に配置しました。

 敷地の南は崖地で、雑木林が広がっています。建物の中を歩いていくと、移動につれて雑木林との間隔が近付いたり遠のいたりします。また、場所によって風景の切り取り方を変え、それぞれ違った眺めと雰囲気が楽しめるように考えました。

 玄関は建物の中央部、V字型の要の位置にあたります。中に入ると、暗い筒のような空間の正面に、低く開いたピクチャーウインドーが目に飛び込みます。ここから右手に行くとLDK、左手に行くと畳の個室が並ぶプライベートゾーンです。

 南北に奥行きのあるLDKは、急こう配の屋根の構造を現した天井が特徴です。その屋根が延びていく向こうに、雑木林の緑が見える。開口はあえて絞って小さく見せました。

 一方、プライベートゾーンは縁側に沿った全面開口。和室、縁側、濡れ縁と続く純然たる和の構成です。その外には建て主が望んだ神社の杜(もり)の景観が広がります。

 この住宅は、私にとって初めて「和」を意識して設計した建物です。そのために、地元の伝統的な建築物をいくつも見学し、写真に撮って研究を重ねました。とはいえ、それをただ踏襲するのでは自分がつくる意味がない。私なりの解釈で「和」を表現しようと試みました。

 日本の建築は、結局「屋根」に尽きると思います。この住宅では、屋根の美しさを意識させる空間づくりを目指しました。北から南に下がる片流れの屋根を架け、軒先をぐっと低くしています。それが、景観を絞り込み、際立たせることにもつながりました。

 建て主からは最初「暗くなってしまうのでは」と抵抗感を訴えられました。けれども、暗いことはよくないことでしょうか。暗いからこそ外の景色が明るく美しく見え、暗いからこそ落ち着くこともあります。

 人はとかく「住まいは明るくなくてはならない」などという固定概念に縛られがちです。建築家として設計に取り組むからには、こうした固定概念をとことん問い直していきたい。根拠のない思い込みや自己規制から解き放たれたとき、まったく新しい自由な空間の可能性が開けるのです。
(金子勉/金子勉建築設計事務所)


蓮野の家

建築データ
  所在地: 新潟県聖籠町
  家族構成: 夫婦+子ども1人
  竣工: 2008年10月
  敷地面積: 219.10平方メートル
  建築面積: 86.95平方メートル
延べ床面積: 86.95平方メートル
  構造・規模: 木造平屋
  設計: 金子勉建築設計事務所
  施工: そりっど
連絡先  
  金子勉建築設計事務所
  代表: 金子勉
  住所: 〒160-0023
東京都新宿区西新宿4-28-19山下ビル2階
TEL 03-3379-7898
FAX 03-3379-7898
E-MAIL: design-studio.
kaneko@nifty.com
URL: http://homepage3.
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