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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 162「id house」

多彩な景色を切り取る、生活の場としての「海辺の家」


 目の前は太平洋。庭先から波打ち際まで歩いて行ける、リゾートのような立地です。しかしこの家は別荘ではなく、れっきとした生活拠点。建て主夫妻は近くの病院に勤務する医師で、海をこよなく愛するサーファーです。ビーチに面した家が欲しいと探し続け、ようやく見付けた土地でした。

 約300坪の敷地の海寄りに建物を置くことは、建て主の要望でした。ただ、別荘なら海だけ見て過ごすのもいいでしょうが、日常生活の場としてはかえって単調になりかねません。正面から水平線を見たり、海岸線を横から眺めたり、防風林の緑に目を向けたりと、窓の角度を変えて、景色の変化が楽しめる家にしたいと考えました。

 一方で、建て主は「四角い家」を望んでもいました。建物のプロポーションと室内の使い勝手、どちらをとっても四角い方が好みに合うという理由からです。しかし、四角い建物を普通に1棟置いただけでは、窓の向きが限定されてしまいます。そこで思いついたのが、必要な空間を複数の棟に分けてつなぐ方法。こうすれば、建物は四角くても、窓の向きは自由に決められます。

 南東に向けて置いた、一番大きな長方形の棟がLDKです。箱を四角くくり抜いて半戸外的な空間をつくり、そこに間口8メートルの窓を開いて、太平洋の眺望を望みます。この半戸外空間は、眼前の大自然と生活空間を適度に隔てる緩衝帯であり、強い日差しを調節する軒の役目も果たします。

 平屋のLDKに120度の角度で接する棟は、1階が玄関と多目的室、2階が夫婦の寝室とバスルームです。LDKよりも開口を絞り、多目的室の窓は防風林の緑と砂浜の眺めを、寝室の窓は海面の俯瞰(ふかん)を切り取りました。

 南北それぞれの別棟は、北が駐車場、南がジャグジーとゲストルーム。ゲストルームは、サーファー仲間が遊びに来るときのために用意したものです。家族のスペースとは分かれていますが、デッキ伝いにLDKと行き来できます。海からジャグジーに直行でき、その上に寝室があるという、リゾートホテルさながらのゲストルームです。

 4つの棟の配置は、中からの景観だけでなく、外からの景観も念頭に置いて決めました。道路から敷地に入ってS字を描くアプローチを進むと、建物のすき間に海がちらちらと見え隠れします。それが、玄関に着くとまったく見えなくなり、LDKに入った途端、眼前に海の景色がぱあっと開ける、という仕掛けです。

 建て主夫妻が入居して1年ほどたちますが、大小のウッドデッキを利用してミニコンサートを開くなど、新居での生活を楽しんでいるようです。あまりの居心地の良さに友達が遊びに来すぎ、夫婦でゆっくり落ち着くヒマがないと、うれしい悲鳴をあげていました。

 将来は、ほかにも四角い棟を建て増ししようか、という計画もあります。リフォームを手掛ける機会が多いせいか、建てておしまいではなく、住んでから手を加えることも想定しながら設計するようになりました。最初からかっちり決まった建物よりも、自由に変えていける可能性を含んだ建物をつくりたいと思います。

 リフォームでは、既存のものをどう生かすかが大切ですが、考えてみれば、新築も同じではないでしょうか。この住宅では、海の眺めや日差しや気候の変化など、敷地がもともと持っている特性をどう生かすかを考えました。リフォームと新築とは手掛ける範囲こそ違いますが、設計の基本は同じだと思えるのです。
(岩間航/岩間航設計事務所)


id house

建築データ
  所在地: 千葉県南房総市
  家族構成: 夫婦+犬
  竣工: 2008年4月
  敷地面積: 999.32平方メートル
  建築面積: 184.48平方メートル
延べ床面積: 188.99平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  設計: Co Urbanism & Architecture
  施工: 加藤工務店
  写真: 尾崎誠
連絡先  
  Co Urbanism & Architecture
  代表: 岩間航
  住所: 〒167-0042
東京都杉並区西荻北3-1-9山屋ビル3F
TEL 03-5382-1097
FAX 03-5382-1097
E-MAIL: co@tasuorg.com
URL: http://www.c-u-a.com/
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