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Housing File 163「鶴原の住宅 ― 終の栖(ついのすみか)―」

コンパクトな生活と適度な負荷で、老後を気持ち良く暮らす


 60代の夫婦が、結婚以来住んでいた家を建て替えました。

 年配の夫婦のための家といえば、段差をできるだけなくしたバリアフリー化を考えがちです。でもこの家ではあえて段差をつくり、適度な負荷を与えました。立ち座りや階段の上り下りなど、元気なうちは日常の動きを通して足腰を鍛えておくことが大切と考えたからです。

  たとえば、居間にはテーブルではなく座卓を置きました。キッチンと居間には35センチの段差をつくりました。これは、キッチンで作業する人と座卓に座った人の視線の高さをそろえる目的もあります。

 なお、筋力は鍛えた方がいいでしょうが、機能の老化が避けられない部分に対する配慮は必要です。

 家の中の温度差によるヒートショックを防ぐため、浴室と洗面所を居間に直接つなげることで温度の急激な変化をなくしました。

 また視力の低下に対応するため、将来必要な照度を確保できる照明を設置しました。ただし現在これらをすべて点灯すると明るすぎるので、調光器を付けて明るさを調整できるようにしています。

 玄関の下駄箱やキッチンカウンターなどは、手すりを兼ねられるように80センチの高さに設定しています。

 ご主人は大人数の兄弟の長男に当たり、何年かに1度親戚が集まって法事を行います。そのため大きな部屋を確保することが設計の前提となりましたが、普段は夫婦2人だけですから大きな部屋は要りません。

 そこで、平屋の建物の中央に居間を配置し、引き込み式の障子を介して和室を並べました。日常的には、夫婦は昼間をワンルーム状の居間とキッチンで過ごし、夜は和室で休みます。大勢集まるときには、襖(ふすま)を開いて20畳の大広間として使う。泊まり客の際は、居間が客の寝室になります。

 空間に可変性を与えることで、多様な使い方に対応できるようにしました。

 この家のもう1つの特徴は、室内空間を北側に向けて開いたことです。

 敷地の東隣は将来マンションが建つ可能性のある駐車場で、南や西の隣は目の前に家が建っています。一方、道路に面した北側は築100年ほどの古い家が向かいに建ち、庭の樹木も見えるという環境でした。

 こうした立地を考慮して、北側に向けて居間を配し、床から天井までの大きな開口を設けました。開口を通して、道路を含めた空間の広がりや向かいの家の緑を視覚的に取り込んだのです。開口の大きな引き戸を開けると、北側の庭と室内は一体化します。

 室内は片流れの屋根をそのまま生かした傾斜天井とし、南側に採光のための高窓を開けました。ロフトの上面には鏡面加工したステンレス板を取り付けていますので、夏には高い高度から差し込んだ光が天井に反射して室内全体を明るく照らします。冬は太陽高度が低くなり、光は北側の奥まで入り込んできます。

光の入り方
夏期 冬期

 天気によって光の入り方や室内の明るさが変化し、季節による日の長さの移ろいも感じ取れる。また、屋根の先に雨樋(あまどい)をつけていないので、軒先から雨が落ちる音も楽しめます。室内にいながらにして外の様子がよく分かると、建て主にも好評です。
(松浪光倫/松浪光倫建築計画室)


鶴原の住宅 ― 終の栖(ついのすみか)―

建築データ
  所在地: 大阪府泉佐野市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2007年10月
  敷地面積: 134.60平方メートル
  建築面積: 65.22平方メートル
延べ床面積: 61.13平方メートル
  構造・規模: 木造、平屋建て
  設計: (建築)松浪光倫/松浪光倫建築計画室、(構造)中屋太志/エスアンドエフ
  施工: コアー建築工房
連絡先  
  松浪光倫建築計画室
  代表: 松浪光倫
  住所: 〒530-0047
大阪市北区西天満4-9-2 西天満ビル413
TEL 06-4307-4682
FAX 06-6809-4682
E-MAIL: info@mma-design.com
URL: http://www.mma-design.com/
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