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Housing File 165「若草の家」

自分でつくり、守り、暮らす、隙(すき)を残した未完の家




 「自分でつくり、守り、子どもと楽しく暮らしていける家」。北海道出身の建て主が描いていたのは、そんな家のイメージでした。

 家は、必ずしも建ち上がった時が完成ではありません。生活しながらメンテナンスし、自分たちに合うように手を加えていく。家族の成長に合わせて少しずつ変化し、完成させていくものです。

 今回の建て主は、特にそうした志向を強く抱いていました。それなら、住んでいく間に手を入れる余地を残しておこう。いわば、隙(すき)となる部分をつくろうと考えて設計に取り組みました。

 内外の空間には、やや荒々しい質感を持った木材を表に出して、時間とともに変化していく家の“下地”になるようにしました。

 こうした考えを象徴するのが、リビングダイニングまわりのレッドシダーの壁です。一般にデッキ材として使われている木を、左官下地の「木摺(ず)り壁」のように2センチのすき間をおいて横張りにしました。これなら直接クギを打ったり、何かを張ったりすることが簡単にできるし、すき間に板を挟めば棚板にもなります。

 リビングダイニングの大開口の下に設けたパイン材のカウンター収納も、棚板や扉を用意しませんでした。本棚にしてもいいし、別の使い方をしてもいい。自分たちの好きなように使っていけるように、自由度を残しました。

 未完成の部分を残し、家族が手を加える余地を与えたつくりは、2階の主寝室や子ども室でも共通しています。普通なら仕上げ材の裏側に隠れてしまう構造用合板と間柱をそのまま見せたのは、その一例です。

 ただし、部屋の全面に木を使ってしまうと印象が重たくなってしまいます。大切なのは、未完成の程度をいかにコントロールするか。そこで、クロス張りの白い壁や天井を要所に配して、バランスの良い空間とすることを心がけました。

 家の構成としては、1階をパブリックゾーン、2階をプライベートゾーンという形に分離しました。

 1階のリビングダイニングとスキップフロアで続くフリースペースは、ワンルーム状の大空間です。ひとつながりの部屋ながら変化のあるスペースを用意し、4人の家族が集まって思い思いに過ごせるようにしました。

 フリースペースは、その一角に2階へ上がる階段を設けた踊り場のような場所です。外には、同じ高さのデッキテラスが続きます。立体的な空間は2階と1階、あるいは外と内を結びつける中間領域となり、子どもたちの活動を促します。

 この夏に竣工した家の生活はこれからです。子どもたちは大きな空間を上り下りして遊ぶことでしょう。大勢の人を呼ぶときには、フリースペースの階段がちょうどいいベンチにもなります。

 家族の成長と共に、これからどのようなアクティビティーが行われ、家がどのように変化していくのか。私も楽しみにしています。
(奥野公章/奥野公章建築設計室)


若草の家

建築データ
  所在地: 山梨県南アルプス市
  家族構成: 夫婦+子2人
  竣工: 2009年7月
  敷地面積: 255.17平方メートル
  建築面積: 75.35平方メートル
延べ床面積: 117.23平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  設計: (建築)奥野公章/奥野公章建築設計室、(構造)間藤早太/間 藤構造設計事務所
  コーディネート: いえプロ
  施工: アルコ
  写真: 牛尾幹太
連絡先  
  奥野公章建築設計室
  代表: 奥野公章
  住所: 〒153-0042
東京都目黒区青葉台2-17-12 メゾン青葉台301
TEL 03-3461-7203
FAX 03-3461-7205
E-MAIL: info@okuno-room.com
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