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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 166「モンタージュ」

広間を小部屋が囲むプラン、時と人の動きでシーンが移り変わる




 区画整理の途上にある、真新しい分譲地。建て主は、近くの街から移り住んできた、70代と50代の夫婦です。まだ何もないこの場所に150坪の敷地を購入したのは、「自宅の敷地内に、趣味の農作業を楽しむ畑が欲しい」という動機からでした。

 近隣にどんな家が建つかはまだ分からず、決まっているのは区画と道路ぐらい。将来の環境変化に左右されないようにしながら、建て主の要望をかなえる方法を考えました。

 敷地の東に交通量の多い道路があるので、建物を西側に寄せ、東を畑に充てて緩衝帯にします。夫婦2人暮らしで敷地にはゆとりがありますから、建物は平屋にしました。平面はニュートラルな正方形です。この正方形の中を、どう仕切っていくかが課題でした。

 建て主から求められたのは、夫の書斎と妻の趣味室、すでに独立した子どもたちや親族が来たときのための客間が2つ。親族以外にも、日ごろから、夫婦それぞれの友人・知人が入れ替わり立ち替わり訪ねてくるそうです。

 そこで、私たちがイメージしたのは、広場を中心とした集落のような住宅です。

 まず、正方形の建物の中に、やはり正方形の、広間のようなリビング・ダイニングを置きます。天井高は2間(3.6メートル)と高くし、がらんと大きな箱状の空間をつくりました。

 このリビング・ダイニングの周囲に、書斎や趣味室、キッチン、寝室、浴室などの各部屋をぐるりと並べます。その間に挟むようにして、東西南北の各辺に1カ所ずつ、テラスを設けました。部屋と同じ奥行きを持ち、半透明の外壁に守られたテラスは、家の内側のように感じられる外部空間です。

  リビング・ダイニングと周囲の部屋やテラスとの間には壁がなく、すべて窓や引き戸で開け閉めできる関係です。一方で、周囲の部屋同士は壁で仕切られ、行き来はできません。家の中でどこに行くにも、何をするにも、いったんリビング・ダイニングを通って次の場所や行為に移ることになります。

 中心にあるリビング・ダイニングは、部屋と部屋を隔てつつ、同時に部屋同士を結びつける接点です。たとえば、夫は書斎に親しい友人を招き入れ、妻は妻で客間にご近所仲間を集めているようなとき。それぞれ、リビング・ダイニングに通じる引き戸を閉めてもいいし、開けたままでもさほど気兼ねなく過ごせるでしょう。それでいて、互いがどうしているかも、なんとなく伝わってくるはずです。

 リビング・ダイニングのシーンは、周囲の部屋の建具の開け閉めや、そこにいる人の動きで変化します。同時に、四方にあるテラスを介して入ってくる光や風も、刻々と移り変わります。直接外部に面していなくても、時間と人の動きによって、多彩な表情が生まれる空間なのです。

 住まいに望むことは、建て主によって本当に様々です。それぞれの希望からその本質をくみ取り、空間として実現することが私たちの仕事だと思います。特に、部屋と部屋の関係、家族同士の関係をどう結び、どう離すかは、いつも注意深く考えます。空間の多様さ、メリハリ、その豊かさが、そこで営まれる暮らしの豊かさにつながると思うからです。
(小泉一斉+千葉万由子/Smart Running)


モンタージュ

建築データ
  所在地: 埼玉県東松山市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2009年3月
  敷地面積: 519.44平方メートル
  建築面積: 140.50平方メートル
延べ床面積: 139.56平方メートル
  構造・規模: 木造、平屋建て
  設計: Smart Running
  構造設計: A.S.A 鈴木啓
  施工: 日祥工業
  写真: 平井広行
連絡先  
  Smart Running
  代表: 小泉一斉+千葉万由子
  住所: 〒222-0002
神奈川県横浜市港北区師岡町245-29-306
TEL 045-546-2477
FAX 045-546-2477
E-MAIL: info@smart-running.net
URL: http://www.
smart-running.net/
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