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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 167「K邸」

食堂の周りに空間を連ね、要介護の母を見守る




 「ここは“母の家”ですから」。打ち合わせ中、建て主から繰り返し耳にしたのがこの言葉でした。

 隣接する工場の経営者でもある建て主は、50代のバイタリティーあふれる女性。介護を必要とする母や兄と暮らしてきました。以前は少し離れた地域のマンションに住んでいたのですが、「昼間もできるだけ近くにいたい」と工場の敷地の一角に家を新築しました。

 食事をしているときなどは、そばで一緒に過ごす。寝ているときも、母の様子を常に把握できるようにしたい。日々の生活を通して母の様子を見守っていられる家にすることが設計の前提でした。もちろん、母や兄のベッドからトイレ、浴室へという動線を、コンパクトに納める工夫も必要です。

 また、この家には様々な人が出入りします。

 住み込みのメイドが、炊事や洗濯をはじめとする身の回りの世話をし、介護のヘルパーが定期的に訪れます。工場の手伝いをしている妹やその息子もしばしば泊まりに来る。仕事の打ち合わせにやって来る人、泊まりがけの客なども少なくありません。

 人の出入りに対応したパブリックな側面とプライベートな側面を両立させること、ゲストルームを含めた個室を4室用意することも設計の条件となりました。そこで、1階を生活の中心となるスペースとし、2階には建て主の寝室やゲストルームをまとめて並べました。

 1階の食堂は、家族が集まる場所です。食堂の周りを囲むように台所、居間、母と兄の寝室や水回りを配置。壁や天井高の違いによって緩やかに区分した小さなスペースが、吹き抜けの食堂の周りに房のようにぶら下がるようにしています。これにより、視覚的な広がりと個々のスペースの落ち着きを確保しています。

 1日の大半をベッドで過ごす母と兄の寝室は、引き戸を開け放つと食堂と一体化します。また2階の建て主の寝室には、吹き抜けに面して細長い窓を設置しました。夜の間も、窓を通して母の姿を直接見ることができます。


 玄関は、1階と2階にそれぞれ用意しました。夜、遅い時間に帰ってくる場合や建て主との打ち合わせに訪れる人などは、外から直接アプローチする2階の玄関を使えば1階の生活を煩わせることはありません。

 とはいえ、全般にオープンなのがこの家の人たちの特徴です。訪れる人はたいてい1階でお母さまに気軽にあいさつしていきます。家族だけでなく、いろいろな人が見守っていく。お母さまにとっても、こうした刺激が元気の源になることを願っています。

 このように独立性を持つ個室とオープンな共用スペースで構成した家は、高齢者や若者が集まって生活するグループホームやシェアハウス、親の家に住み続ける単身者との2世帯住宅などにも通じる要素があります。「集合集宅としての戸建て」というこれからの住宅の形ともいえるでしょう。

 家族形態やライフスタイルの多様化が進む社会に対し、いろいろな暮らし方を受けとめる住宅の形を提案していければと考えています。
(田中幸子/オープンヴィジョン)


K邸

建築データ
  所在地: 東京都武蔵村山市
  家族構成: 親+兄妹+メイド
  竣工: 2007年8月
  敷地面積: 199.62平方メートル
  建築面積: 97.21平方メートル
延べ床面積: 158.09平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  設計: (建築)田中幸子/オープンヴィジョン、(構造)腰原幹雄、佐藤孝浩、(照明)waterhole
  施工: 吉田工務店
  写真: 熊谷順
連絡先  
  オープンヴィジョン
  代表: 田中幸子
  住所: 〒156-0042
東京都世田谷区羽根木2-17-8-201
TEL 03-3327-2566
FAX 03-3327-2566
E-MAIL: info@openvision.jp
URL: http://www.
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