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こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 17 「HB HOUSE」

沈む夕陽を屋上から眺める家、木の使い方にこだわる住空間

タイル敷きの20畳ある広間
1階は20畳の広間。床はセラミックタイルで床暖房が入っている。このタイルは室内で犬と一緒に暮らすことを考えて選択した。素足でも足触りが柔らかい。北側半分のスペースは、天井を下げ、暖炉のある落ち着いた空間とした

室内と同質のタイルがテラスまで続く
南側のテラスに面して、大きな開口部を設けた。テラスの床には、室内と同質のタイルを使用。ガラス戸、網戸、雨戸の3つの建具を両脇の壁に収納してしまえば、リビングの一部として利用できる

海が見える緑化した屋上テラス
海を眺めることができる屋上には、セダムという植物を植えた。木造のため、軽くするために土を使わずマットに苗を植え込んでいる。屋上緑化は屋根面の断熱にも有効であり、総重量が瓦屋根と変わらないこの方法は、木造住宅に広く応用できる

玄関脇の洗い場
犬2匹と海で遊んでくると砂だらけになるため、どうしても玄関に洗い場が必要になる。ここでは床の一部をグレーチングにして排水できるようにした
テラスに面した木曽ヒノキでしつらえた浴室
階段や建具はすべてカバ材を使用。納まりにまでこだわる施主の希望で、家具の納め方を応用
海が見える緑化した屋上テラス
この家は納め方一つひとつを大工さんと十分話し合った。斜めにデザインした手すりの納まりを検討するために、20分の1の詳細模型までつくったバルコニー

木と左官仕上げの壁でデザインした外観
壁は内外ともに左官仕上げとした。カバ材との相性もよい。いたるところに職人が手間をかけてつくった跡が残るデザインを心がけている

 湘南海岸から徒歩1分、なだらかな山の南側に広がる住宅街にこの家は建っています。施主は40代の夫婦で、愛犬2匹と暮らす大広間のある家を望んでいました。また、素材にカバの木を使いたいという要望があったことから、建具や家具など、肌身に直接触れる部分にカバ材をうまく使い、生活の中で木のぬくもりが感じられる住まいにしようと考えました。

 初めて敷地を訪れた時、海と山の両方が近くにある立地の良さを生かしたくなりました。周囲には家が建て込んでいましたが、屋根の上からならば2階建てでも海が見えるはず。施主も同じように感じていたようで、屋上テラスをもつ木造2階建てをつくることで考えは一致しました。

 ひんぱんに屋上テラスを利用したくなるような仕掛けとして、テラスを緑化することにしました。通常の方法のように土を盛るのでは重くなり、木造には不向きです。ここでは、土の代わりに軽いマットを敷き、それにセダムという植物を植え付け、瓦屋根と変わらない重量で緑化する方法をとりました。

 完成した後、夕涼みにこのテラスに出てみると、思った通り、海に沈んでいく夕陽が見えました。反対側には山の緑が見えます。通常、木造の家では、ほとんど使用されることのない屋上。木製ベンチに腰掛け、ぼんやりと美しい景色を眺めることができる贅沢な場所となりました。

  一方、20畳の広間にした1階は、南側のテラスに面して高さ2メートル、幅5メートルの大きな開口部をつくりました。犬が歩き回ることから、掃除がしやすいようにと選んだ床材は、セラミックタイル。素足で歩いても感触がやわらかく、冷たさを感じさせない素材です。テラスの床にも同質のタイルを使い、開口部の建具を両脇の壁に収納してしまえば、広間とテラスが一体の空間となるようにしています。

 この広間は北側と南側で天井の高さを少し変えました。北側はご主人の要望である暖炉を設けたことから、落ち着いた雰囲気を出そうと天井高を下げています。逆にテラスに面した南側は、日光が入る天井の高い開放的な空間としてつくりました。ワンルームの中でも、場所によって、それぞれ違う雰囲気をつくることを心がけたのです。

  階段・扉などの建具は、すべて施主の要望だったカバ材を使いました。しかも、ただ使ったというのではなく、家具デザイナーに協力してもらい、納め方をそれぞれ工夫しています。具体的に言うと、例えば階段の踏面(ふみづら)と蹴上(けあげ)のぶつかる角。板の端を凹凸型にカットし、ジグソーパズルのピース同士をつなぐ要領で組み立てているのです。

 こんな方法をとったのは、細かい部分にまでこだわりを見せる施主の希望があったからでした。こうした納め方は木製家具にはよく見られるデザインですが、大工さんからはまず出てこない発想です。

 家具デザイナーに協力を得る一方で、大工さんとともに納め方を試行錯誤した個所もたくさんあります。2階の木製バルコニーの手すりもその一つで、背もたれにもなるようにと、外側に傾斜したデザインにしたのですが、どう納めてよいか悩みました。結局、20分の1の詳細模型をつくり、それを土台に大工さんと部材の納め方を検討してつくりました。

 私は数寄屋建築をつくる設計事務所に勤めていた経験から、職人の仕事を尊重するようにしています。どんなに良い設計をしようとも、彼らが長年培ってきた技術なしには実現できません。一つひとつの部材の納め方にこだわり、彼らとともに最も美しいかたちを模索していく。その時、ものをつくっていることを実感するのです。

 とは言え、家は施主があってつくるもの。最初から「こうあるべき」と自分の設計を押し付けるのではなく、まだ見ぬ家の姿を施主と一緒に探っていく姿勢を大切にしたいと思っています。毎回違う嗜(し)好の施主がいて、違う職人たちが集まってくる。そのなかで新しい形をみんなでつくりあげていくことが、家づくりの醍醐味(だいごみ)ではないでしょうか。
(加藤哲也・加藤哲也建築設計事務所)


「HB HOUSE」


建築データ
  所在地: 神奈川県三浦郡
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2002年10月
  敷地: 155平方メートル
  建築面積: 59平方メートル
  延べ床面積: 117平方メートル
  構造・規模: 木造、2階建て
  総工費: 約3000万円
  設計: 加藤哲也(加藤哲也建築設計事務所)
  構造: 構造設計舎
家具: オリジナルキッチン:H・B(アッカビー)
施工: 栄港建設
写真: 滝浦秀雄
連絡先
  加藤哲也建築設計事務所
  代表: 加藤哲也
住所: 〒234-0054
神奈川県横浜市港南区港南台7-17-12
  TEL: 045-832-1640
  FAX: 045-832-1696
  E-MAIL: katotetu@tc5.so-net.ne.jp
  HP: http://www003.upp.so-net.ne.jp/t-kato/
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