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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 170「Roll Wall House」

1枚の長い壁を2巻き半、裏表異なる仕上げで変化を生む




 60代後半の建て主は、自ら事業を興し、一代で会社を大きくした人。豪放磊落(らいらく)にして多趣味な、とても魅力的な人物です。その人からみれば若造にすぎない私に「我が家の設計は君に任せよう」と言われれば、奮起しないわけにはいきません。

 建て主は芸術好きで、数多くの美術品を集めています。設計中にも、建築中にも、シャンデリアやレリーフやステンドグラスなどの工芸品・美術品を購入しては、住まいに取り入れたいと持ち込まれました。建物は、様式も素材も様々な、これらの品々を受け入れられるものでなければなりません。

 また、建て主の人物像を思えば、外観には、何かしらの象徴性、威厳のようなものを与えたいところです。強いコンセプトを持ち、外から見て存在感がある、そんな建物をつくろうと考えました。

 「Roll Wall House」は、1枚の長い壁を2周半、ぐるぐると巻くことで出来上がっている建物です。その巻いた壁の間に生まれる空間を、手前から順に、エントランス・ギャラリー、リビング、ダイニング、キッチン、浴室、和室に充てました。壁を巻き込んだ中心が中庭。ここから室内に光を取り入れます。

 壁の外側は素焼きのタイル、内側は塗装で、それが巻かれていることで、家の中にいろいろな面が現れます。壁に開けた通路や中庭に面した窓を通して、様々な景色が展開します。

 壁の高さは玄関側の端が9メートルと最も高く、そこからだんだん低くなって中庭部分では7.5メートルまで下がります。このことで、玄関に迫力を与えると同時に、中庭に光が入りやすくしました。外に対しては閉じ、内に向かって開くことで、セキュリティーの確保にもつながっています。

 建て主と私とでは、世代も趣味も違います。この仕事では、異質な価値観を調整し、無理にひとつにまとめるより、あえて共存させ、対比させることを選びました。それが、多様な趣味・嗜好を受け入れる建築の度量、ひいては建築の社会性につながるのではないか、と考えたからです。

 住宅は、一義的には建て主の所有物ですが、家族や友人・知人を通じ、社会にも開かれるものです。住宅の設計は、建て主の私的な思いに応えるだけでなく、建て主自身が社会に対しても明快に説明できるものであるべきです。この仕事を通じて、私自身も、そのためのヒントがつかめたように感じています。
(中佐昭夫/ナフ・アーキテクト&デザイン)


Roll Wall House

建築データ
  所在地: 東京都足立区
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2008年8月
  敷地面積: 230.89平方メートル
  建築面積: 113.85平方メートル
延べ床面積: 180.58平方メートル
  構造・規模: 鉄筋コンクリート造り・地上2階建て
  設計: ナフ・アーキテクト&デザイン(中佐昭夫+遠藤千裕)
  施工: 大勝建設
  写真: ナカサアンドパートナーズ
連絡先  
  ナフ・アーキテクト&デザイン
東京事務所
  代表: 中佐昭夫
  住所: 〒158-0083
東京都世田谷区奥沢2-12-3丸長ビル303
TEL 03-5731-7805
FAX 03-5731-7806
E-MAIL: tokyo@naf-aad.com
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