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Housing File 171「望楼の家」

“望楼”から得る光と眺望、軒下に抱かれた中庭が内外を結ぶ



 長く住んできた平屋を建て替え、平屋の上に小さな2階部分を載せた家をつくりました。

 1階は年配の建て主夫妻のための生活空間、2階は成人した息子さんの部屋です。平屋部分と2階部分にはそれぞれ向きの異なる片流れ屋根を架け、大きな屋根の上に“望楼”が突き出しているような形にまとめました。“望楼”に当たる2階の南面には大きな窓を設け、目の前に広がる穏やかな山の景色を楽しめるようにしています。

 建て主は、建て替えに際しても平屋を強く望みました。年配の人にとっては特に、階の上り下りをしないで済む平屋は生活しやすいものです。ただし、弱点もあります。1フロアの面積が大きくなるため建物の中央に光が差し込まず、暗くなってしまいがちなのです。

 そこで新しい家では、2階の大きな窓から取り入れた光を、階段の吹き抜けを通して1階部分へ落とし込むようにしました。“望楼”は、明かり取りの役目も果たしているわけです。

 1階は、縁側に続く木製デッキの「中庭」を中心に据えました。室内の床とフラットに続く中庭は、大きく張り出した軒の下に広がり、軒先には視覚的な境界となる列柱が並びます。外部でもなく、室内でもない。外と内を結ぶ中間領域として位置付けました。


配置図


 この地域では、1日おきに宴会をするなど、近所の人たちが頻繁に出入りする昔ながらのコミュニティーが今も息づいています。市街化調整区域に位置しており、長く農業を営んできた人が多いからでしょう。外から直接上がれる中庭は、こうした地域の人たちが集まりやすいようにと考えたものです。

 室内では、この中庭を囲むように生活の場を配置しました。パブリックゾーンとなる東側には、暖炉のある居間と食堂。プライベートゾーンの北側と西側には、2つの和室と水回り、納戸を並べています。

 デザイン上は、木の素材を積極的に見せているのが特徴です。

 南面に向けて大きな開口を設けた居間・食堂は、片流れ屋根の架構をそのまま露出しています。225ミリ間隔で並べたカナダツガの垂木(たるき)が、一種のリズム感とひだのようなニュアンスを生み出します。また2階の階段吹き抜けに渡したスノコ状のブリッジや、開口部の引き戸など、随所に格子状のしつらえを取り入れました。

 木の家というと、ともすると素朴な味わいのイメージを描きがちですが、ここで意識したのは現代的なデザインの展開です。細部の処理や縁側を持つ間取りの構成など、伝統的な和の要素をベースにしながらも、軽快でモダンな空間を表現できたのではないかと思います。
(飯塚豊/i+i設計事務所)


望楼の家

建築データ
  所在地: 神奈川県平塚市
  家族構成: 夫婦+子ども1人
  竣工: 2009年9月
  敷地面積: 425.86平方メートル
  建築面積: 106.74平方メートル
延べ床面積: 117.20平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  設計: (建築)飯塚豊/i+i設計事務所、(構造監修)江尻憲泰
  施工: 青木工務店
連絡先  
  i+i設計事務所
  代表: 飯塚豊
  住所: 〒150-0001
東京都渋谷区神宮前3-42-3 林ビル301
TEL 03-5411-2484
FAX 03-5411-2482
E-MAIL: yutakaiizuka2000@yahoo.co.jp
URL: http://iplusi.exblog.jp/
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