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Housing File 172「ノビ・ノビ・クラス」

車好きのためのガレージと、家族の居場所の程よい関係



 建て主は大の車好き。愛車「フォルクスワーゲンTYPE3」を身近に置いて暮らす「ガレージハウス」を建てたいという依頼でした。とはいえ、妻は車いじりに加わるわけではないし、1階には両親が住む2世帯住宅でもあります。家族とガレージの距離が問題でした。

 そこで、ガレージを吹き抜けにし、2階の建て主夫妻の生活空間に直結させました。その吹き抜けの、ガレージとリビングの中間に、ロフト風の書斎を設けます。書斎はガレージと一体の空間なので、いつでも車が見下ろせ、気が向けばすぐに下りていけます。

 一方、2階リビングと書斎の間には1メートルほどの段差があり、ガラス入りのドアで隔てられています。書斎にいる夫とリビングにいる妻が、それぞれ気ままに過ごしていても、互いの様子をのぞくことはできる、適度な距離感です。

 ガレージと両親の住まいの境界はコンクリートブロックを積み、壁に厚みを加えました。さらに、ガレージに接する部分にはトイレやクローゼットを配し、生活空間に騒音が伝わらないように工夫しています。また、両親の寝室の上はデッキ、2階浴室の下はガレージにして、上下階で生活音が伝わりにくい配置にしました。

 2階へは、玄関直結の階段とガレージ内の階段の両方から行けます。玄関とガレージの間も、扉1枚で行き来可能。来客も通る表の動線と、家族だけが使う裏の動線を分けられます。この家に限らず、私はいつも、なるべく複数の動線をつくるように心がけています。

 2階LDKを囲むように、寝室や洗面、浴室を並べました。ここにも、リビングを通らず寝室から浴室まで行ける「裏の動線」があります。欧米では、主寝室に専用の浴室を設けるのが当たり前。それは難しくても、せめて寝室と浴室を直結させるように考えます。

 住宅を設計するときにいつも考えるのは、住む人と家が「どうかかわるか」ということです。私はこのことを、大地と人のかかわり「ランドスケープ」になぞらえて、「イエ・スケープ=IE Scape」と呼んでいます。家の中にいる人が、その視線の先に何を見るかを大事にしたい。

 たとえば、室内では、長い距離を見通せるほど気持ちがいい。この家では、階段室や書斎とリビングの間をガラス張りにし、こう配天井を連続させて視覚的な広がりをつくりました。また、窓を開けるにも、その窓の向こうに何があるかが問題です。隣の窓が見えては困りますが、窓の向こうに木製フェンスをつくるなど、工夫して開くことは可能です。

 家と人がうまくかかわれる家が「いい家」だ、というのが私の考えです。完成した瞬間のぴかぴかの状態ではなく、人が住み始め、気取らず暮らしている状態がしっくりとして美しい。そんな家づくりを目指しています。
(松永基/エムズワークス)


ノビ・ノビ・クラス

建築データ
  所在地: 神奈川県横浜市
  家族構成: 夫婦+両親
  竣工: 2008年6月
  敷地面積: 219.74平方メートル
  建築面積: 109.30平方メートル
延べ床面積: 188.80平方メートル
  構造・規模: 木造・地上2階建て
  設計: エムズワークス(松永基)
  施工: アイディエム
  写真: タナカシンイチ(協力:扶桑社「住まいの設計」)
連絡先  
  エムズワークス
  代表: 松永基
  住所: 〒231-0011
神奈川県横浜市中区太田町6-70 井上ビル3F
TEL 045-680-5339
FAX 045-680-5349
E-MAIL: ms@msw-arch.com
URL: http://www.msw-arch.com/
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