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Housing File 173「生駒の家」

雁行した空間と鮮やかな色使いで、“楽しい住まい”に



 「カフェやホテルのような、非日常的な住まいが欲しい」――。

 それが若い建て主夫妻の要望でした。平日は仕事で忙しい夫妻にとって、家は休日にゆったりとくつろぐ場所。そこで、住宅としての細かい機能を突き詰めるというよりは、過ごすこと自体を楽しめる家を目指しました。

 ガルバリウム鋼板波板で外壁を覆い、カギ形に雁行した建物は、それだけで目を引くかもしれません。でも、こうしたデザインは、敷地の制約から必然的に生まれた形でもありました。

 194平方メートルほどの敷地は、奈良県生駒市の落ち着いた住宅街に位置しています。台形の敷地は北に面した道路から2メートルほど高く、道路から斜面を介して立ち上がっていました。また、法規上、建物の外壁は敷地境界から1.5メートル後退させる必要がありました。

 加えて、駐車場は2台分確保することが求められ、南側には庭も設けたい。これらの条件を満たしたうえで建物を配置していくと、平面は自然に雁行する形になったのです。

 建物は、鉄筋コンクリート造りの地下室の上に、地上2階の木造部分を載せています。地下室は奥様が週末に開く予定の英会話教室に利用し、地上階を生活空間に充てました。1階は寝室、水回りと予備室。2階がワンルーム状のキッチン、ダイニング、リビングです。

 工事費を抑えるため、建物のスパンは1.5間(2730ミリ)に統一しました。その結果、幅3メートル弱の細長い帯状空間になりましたが、平面を雁行させているため視界に奥行きと変化を与えています。座る場所、立っている場所ごとの目の高さに合わせて配した大小の窓も視線の抜けを確保し、実際以上の広がりを感じさせます。

 もう1つ、空間に変化をもたらすのが、2階ダイニングの横から付き出したガラス張りの小スペースです。ここだけ1階部分から外に張り出し、南の庭の上に浮かんでいるように見せました。壁と天井には鮮やかなピンク色の塗装を施し、遊び心を加味した空間としています。

 ちなみにこのピンク色は、カラフルな色使いで有名だったメキシコの建築家ルイス・バラガンが設計した家から想起したもの。建て主夫妻にバラガンの家の写真をお見せしたところ、ひと目で気に入ってもらい、この色を使用することになりました。南側から入ってくる強い光がピンク色の壁に反射し、室内に広がります。

 内装は、床から壁、天井まで白を基調としています。加えてピンク色の壁や、ダイニングの壁に用いた濃灰色の石、階段や什(じゅう)器に使った木の素材感などによって空間を引き締めました。

 私は工務店を選ぶ際、建て主に最終的に判断してもらう方法をしばしば採用しています。通常は実施設計を終えてから見積もりを取るのですが、その前の基本設計時に概算の相見積もりをして候補を絞ります。そして、建て主が候補となった工務店を直接訪れて話をし、最終決定するのです。

 ある程度コストのめどが立った場合、建て主と工務店の気が合うことも重要です。また、建て主自身が工事に対する参加意識を高めるきっかけにもなると考えています。

 生駒の家でも建て主が工務店を選び、竣工まで気持ち良く作業を進めることができました。こうした家づくりのプロセスへの配慮も、家を大切に使い続けてもらうために必要なことではないでしょうか。
(井上久実/井上久実設計室)


生駒の家

建築データ
  所在地: 奈良県生駒市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2009年8月
  敷地面積: 194.34平方メートル
  建築面積: 52.26平方メートル
延べ床面積: 114.29平方メートル
  構造・規模: 木造・鉄筋コンクリート造り、地下1階・地上2階建て
  設計: 井上久実/井上久実設計室
  施工: じょぶ
  コーディネ
ート:
ザ・ハウス
  写真: 冨田英次
連絡先  
  井上久実設計室
  代表: 井上久実
  住所: 〒546-0041
大阪市東住吉区桑津2-6-15
TEL 06-6719-5258
FAX 06-6719-5274
E-MAIL: kumi@a-net.email.ne.jp
URL: http://www.ne.jp/
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