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Housing File 176「静岡の家 case007」

あえて北向きに開いた平屋、景観と家庭菜園を楽しむ



 敷地は静岡駅から車で20分ほどのところ。川沿いの国道に面し、背後には里山を控えています。もと農地だったところを宅地に転用したもので、両隣には田んぼが広がっていて見通しのいい場所です。それだけにやや無防備な印象もあり、建物の周りはきちんと塀(へい)で守る必要がありました。

 南が国道、北が山なので、この家はあえて北に向かって開いています。「緑の景色を眺めながら暮らしたい」というのが建て主夫妻の要望でした。庭で家庭菜園を楽しもうという計画もあります。

 敷地は約300平方メートルとゆとりがあるので、ゆったり暮らせる平屋を提案しました。平屋なら、家庭菜園に影を落とすこともありません。山と庭を望む北側にLDKを、南側に個室を配し、個室の前にはデッキと木製フェンスを設けて目隠ししました。

 LDKに薪(まき)ストーブを置くことも、建て主のたっての希望です。リビングからも食卓からもストーブが見えるようにしたい、ストーブで料理もしたい、などの条件から、ストーブを要の位置に置いたL型のプランが導き出されました。

 L字型の開口の外には、やはりL字の「縁」があります。これは、屋根がかかっていて窓が全開でき、半戸外的に使える空間。昔ながらの縁側よりも奥行きがあり、椅子やテーブルを置くこともできます。この「縁」の両側に網戸を入れてあり、両方閉めると蚊帳(かや)の中にいるようで、ちょっと面白い雰囲気になります。山の近くで虫が多いので、二重の網戸が役に立っているようです。

 縁には木製の雨戸も設けるなど、日本の伝統的な建具を取り入れています。間仕切りには、風を通す夏用の簾戸(すど)と冬用の建具を重ねて入れました。昔は季節ごとに夏冬の建具を入れ替えたのでしょうが、今の家には建具をしまっておく場所がありませんから、初めから2枚入れておいたわけです。

 暖房は、パネル方式の輻射(ふくしゃ)熱暖房を用いました。床暖房は、靴を脱ぐ日本人の住み方に合わないように思えて、あまりお勧めしていません。ともすると足裏が熱く感じられて、輻射熱の効果が実感しにくいからです。床仕上げに柔らかくて厚みのある材を選べば、暖房なしでも足下はさほど冷えません。

 住宅の設計に際して、建て主はたいてい、要望のリストを作っているものです。もちろんそれは重視しますが、リストの内容は建て主なりの「答え」であって、その背景にある思いはわかりません。背景が分かれば、もっといい「答え」が見つかる可能性もある。そこで、私はいつも、家族1人ひとり、個別に話を聞くようにしています。そうすれば、要望リストの本当の意味も分かるし、家族の間の温度差も分かります。その全体を調整してより良い答えを考え出すのが建築家の役目ではないでしょうか。
(岩川卓也/岩川卓也アトリエ)


静岡の家 case007

建築データ
  所在地: 静岡県静岡市
  家族構成: 夫婦
  竣工: 2009年7月
  敷地面積: 299.97平方メートル
  建築面積: 104.73平方メートル
延べ床面積: 103.17平方メートル
  構造・規模: 木造平屋建て
  設計: 岩川卓也アトリエ(岩川卓也)
  施工: 山崎工務店
  写真: 畑 亮
連絡先  
  岩川卓也アトリエ
  代表: 岩川卓也
  住所: 〒157-0073
東京都世田谷区砧1-25-6-303
TEL 03-3416-8927
FAX 03-5913-8773
E-MAIL: takuya@iwakawa.net
URL: http://www.iwakawa.net/
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