TOPLiving Styleこだわりのデザイナーズ住宅

こだわりのデザイナーズ住宅

Housing File 18 「新屋敷の家」

RC3階建ての戸建て住、中庭を囲むコの字プラン

RC3階建ての軽快な住宅外観
道路との境にガラスとFRPのグレーチングを採用。前庭を設けて、3階建て部分をセットバックさせた。ガラス越しに見える前庭の緑が印象的。外壁の一部をタイル張りにし、小さな四角い窓をあけた個性的な外観

中庭の緑が迎えるエントランス
玄関の開口をL型に大きくあけ、エントランスから中庭に視界をひらく。シンボルツリーとしてヤマボウシを植えた。夜、帰宅する人をあたたかく迎える照明

光と風が心地よいリビング&ダイニング
中庭に大きく開放したリビング&ダイニングには、トップライトの光が注ぐ。日差しを遮るときには、手動でブラインドが掛けられる仕組み。壁にあけた窓は、風の通り道

柔らかな配光がインテリアを引き立たせる
リビング&ダイニングには、床暖房を設置。ナラ材の床に合わせ、白を基調とした内装のカラーコーディネートによって、清潔感のある空間を演出する。壁はマジックコート

ユニークな着想から生まれた多目的ルーム
1階の多目的ルームには、2階からしかアクセスできない。通常の階段はなく、ポールとはしごだけ。子どもも大人も楽しめる仕掛け

ガラスに囲まれたバスルーム
洗面脱衣室と浴室はガラスで仕切った一体感のある空間。大きな窓を設け、河川緑地を借景として楽しむ

光に浮かぶモダンハウジング
夜景を重視し、屋外照明にも細心の注意を払った。前庭の樹木をライトアップ

 敷地は、熊本市の繁華街まで徒歩5分。そばに白川が流れる緑豊かな住宅地です。建て替えの進む周囲の住宅はほとんどが2階建てですが、施主は、駐車スペースや庭などゆとりのある外部空間を求め、3階建てを希望されました。当初、北側の小道によって、斜線規制を受ける可能性があることを懸念しましたが、調査の結果、その道は河川用地内であることが分かり実現しました。

 プランの作成にあたっては、敷地両側に家が近接していることから、プライバシーの確保と快適な住空間を実現するため、中庭を中心に、建物はコの字型に囲む配置としました。また、RC造で3階建ての建築ボリュームを感じさせない、軽快なデザインを心がけました。

 1階は2台分の駐車スペース、広々としたエントランス空間と多目的ルーム、来客用の和室で構成。さらに、前庭や中庭など、敷地の半分以上が外部空間です。南の庭に面した多目的ルームは、音を気にせずピアノが弾ける空間です。また、子どもたちが飼っているカメなどの爬(は)虫類や小動物を飼育する場にもなっています。

 2階には、リビング&ダイニングと寝室、バスルームを配しました。リビングは、中庭に向けて大きな開口部を設け、十分な採光を確保するとともに、隣家に接する側を閉じて、プライバシーの問題を解決しています。そして、3階は子どもたちの個室スペースです。

 多目的ルームの上は、デッキのような広いベランダ。外から見ると部屋のように見えます。中庭に面し、子どもの遊び場になったり、お茶や食事をすることを想定してデザインしました。

 実は多目的ルームには、1階からはアクセスできません。必ず2階のベランダからステップダウンして入るのですが、普通の階段はありません。消防士が滑り降りるような棒と、垂直に設置したはしごだけ。のぼり棒に子どもたちは大喜びで、大人でも慣れるととても便利だそうです。1階にも出入り口は設けましたが、室内からしか開閉できません。

 友達が来れば、2階から下りて、扉を開けて招き入れます。これは、1階に居室を設けなかったため、子どもの出入りを確認でき、親子のコミュニケーションがきちんとはかれるように、との考えからです。

 北側は、川幅約50メートルの白川が流れていて、人目を気にする必要がありません。そのため、浴室、洗面脱衣室はかなり開放感なプランです。スペースはそれほど広くないので、脱衣室と浴室をガラスで仕切って、窓を大きく設けました。河川沿いの豊かな緑を借景に、心地よいバスタイムを楽しめます。

 この家の特徴は、プライバシーを守りつつ、格子やガラスによって、外部とのつながりを重視したこと。機能的な面では、風の通り道をきちんと計画したことです。部屋の両側が外に面するプランとし、開口部を設けて風が抜けるようにしました。昨年は大変暑い夏でしたが、夜は冷房を一度も使わなかったそうです。

 施主のご家族は40代のご夫婦と3人の子ども。奥様は、両親が住まいにこだわりを持った方で、建築家の設計したモダンな戸建て住宅で育ちました。モダンリビングをコンセプトとしたその家には、大きな吹き抜けがあったそうです。設計にあたっては、実家での暮らしの経験をもとに、いくつかの問題点について解決を求められました。

 まず、音の問題。大きな吹き抜けのある空間は、テレビやピアノの音が反響し、絶えず音を気にしながら生活していたとのこと。次に、照明。吹き抜けで昼間は明るい空間が、十分な照明が備えられていなかったため、夜が快適ではなかったとのこと。

 最近の傾向として、吹き抜けのワンルーム的空間が好まれていますが、実際に子ども時代からそうした家に住んでいた人にとっては、我慢を強いられ、住み心地のよい空間ではなかったことを知りました。

 施主には、私の設計した家を数件見てもらい、互いの住宅に対する考えを確認しました。そのうえで、「新屋敷の家」には1年の設計期間を掛けています。この家では、音の問題はサッシの取り付け方法で解決し、照明については、十分な配光を考え、設計しました。

 住宅設計では、クライアントの住空間体験をもとに、潜在的な要求まで聞き逃すことなく、対話を重ねることが大切です。相互信頼のうえにどこまで聞き出せるか、それが、満足して住んでもらう家づくりのヒケツです。
(大場浩一郎・アトリエスクエア)


「新屋敷の家」


建築データ
  所在地: 熊本県熊本市
  家族構成: 夫婦、子ども3人
  竣工: 2002年7月
  敷地: 265.38平方メートル
  建築面積: 140.23平方メートル
  延べ床面積: 281.44平方メートル
  構造・規模: RC造、3階建て
  設計: 大場浩一郎(アトリエスクエア)
  施工: 岩永組
連絡先
  アトリエスクエア
  代表: 大場浩一郎
住所: 〒810-0014
福岡県福岡市中央区平尾3丁目22-3平丘ビル3階
  TEL: 092-524-3181
  FAX: 092-524-3181
  E-MAIL: square1@at-square.com
  HP: http://www.at-square.com/
おすすめ情報(PR)