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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 180「豊前の家」

屋内なのに戸外のよう、風通しのいい路地が部屋を結ぶ



 建て主は2人の小さな子どもを持つご夫婦。明るくて人目を気にせず過ごせる「中庭のある家が欲しい」と依頼されました。そこでまず「中庭とはそもそも何なのか」ということから問い直してみました。

 子どものころ、近所の路地を駆け回って遊んだ記憶があります。そこでは、軒先に植木鉢が置かれていたり、縁台で夕涼みをする人がいたりして、各家庭の生活が少しずつはみ出しているような感じでした。実は、こうした路地こそ、都市における「中庭」といえるのではないでしょうか。庭を路地に見立てることで「ロの字型」や「コの字型」ではない、新しい中庭がつくれるのではないかと思い至ったのです。

 では、どうやって路地を家の中に引き込むか? その答えが、ひとつの住宅を部屋単位に解体し、そのひとつひとつを独立した建物とする方法です。ここでは、建て主の要望に沿って、リビング、ダイニングキッチン、主寝室、子ども室、浴室、クローゼットの6つの建物をつくりました。間をつなぐ「路地」は、通常の廊下よりも幅を広くし、ガラスの屋根を架けています。

俯瞰図

 いたって単純な手法ですが、実際に設計してみると、さまざまな効果があることが分かりました。

 まず、この「路地」が、「中庭」としてとても使いやすいこと。部屋と同じ床レベルでつながっていて、雨も降り込まず、靴を履く必要もないので、ほとんど境界を感じず出入りできます。月や星を見ながら食事をしたり、お風呂上がりに夕涼みをしたりと、楽しみ方もいろいろです。子どもたちは、いつも三輪車で走り回っているようです。

 また、温熱環境もとても快適です。この家の「路地」には行き止まりがなく、そのまま外に抜けています(もちろん、エキスパンドメタルの扉で人の進入は防げます)。夏はガラス戸を開け放っておけば、家の中を自然の風が通ります。ガラス屋根の下に日よけを渡して「木陰」をつくることもできます。冬は扉を閉め切れば、温室のように日差しの暖かさを享受できます。各部屋は、外部ではなく「路地」に向かって窓を開いているので、室温を保ちやすく、調節も容易です。

 ひとつひとつの部屋は、用途に合わせて自由に設計できます。リビングは吹き抜けのような高い天井に、ダイニングキッチンは天井高を抑えて落ち着いた雰囲気に。それぞれ単独で一番気持ちのいい空間を考えることができました。建物自体は単純な箱形なので、建築コストがかさむこともありません。

 完成した住宅を見た人からは、よく、路地を指して「この外部空間がいいね」とほめていただきます。本当は「中」なんですが、どうも「外」のように見えてしまうらしいですね。厳密には「庭」のない家でありながら、実感としてはちゃんと「中庭のある家」になったようです。
(谷尻誠/suppose design office)


豊前の家

建築データ
  所在地: 福岡県豊前市
  家族構成: 夫婦+子ども2人
  竣工: 2009年11月
  敷地面積: 266.00平方メートル
  建築面積: 130.18平方メートル
延べ床面積: 130.18平方メートル
  構造・規模: 木造、平屋建て
  設計: suppose design office
(谷尻誠)
  施工: 大栄工業
  写真: 矢野紀行
連絡先  
  suppose design office
  代表: 谷尻誠
  住所: 〒730-0812
広島市中区加古町13-2-3F
  TEL: 082-247-1152
  FAX: 082-298-5551
  東京オフィス
  住所: 〒151-0063
東京都渋谷区富ヶ谷1-21-8-403
  TEL: 03-6416-8581
  FAX: 03-6416-8581
  E-MAIL: info@suppose.jp
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