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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 182「DOUBLE DECKER HOUSE」

大空間を段差や家具で使い分け、都市型の2世帯住宅



 この住宅は私の自宅兼アトリエです。1階に両親が住む2世帯住宅で、上下階がおのおの独立した家になっています。1階を「下の家」、2階を「上の家」と呼んでいます。建て坪は20坪を切っていますから、それぞれの「家」になるべく広がりのある空間を用意できるよう設計しました。

 敷地には約1メートルの高低差があるため、西の道路に面した「下の家」の玄関は地下1階に相当します。ここから1階の天井まではほぼ2層分のボリューム。天井高は高いところで4.27メートルあります。

 この空間を分断したくありませんが、生活上はいくつかの場所に分ける必要があります。そこで、床高・天井高を変えながら、場所が連続していくようなプランを考えました。

 玄関を入るとまず天井高を抑えたホールがあり、そこを抜けると天井の高い吹き抜けの居間に出ます。居間から1.2メートル上ってダイニングキッチン、さらに1メートル上って寝室、ギャラリーと続く、渦巻き状の動線です。

 道路に面した部分はコンクリートの高基礎に囲まれているため、室内にいると外の視線は気になりません。一方で、一番高い位置にあるギャラリーからは、生活全体が見渡せると同時に、外の通りも見下ろせます。街の活気を感じながら暮らすことは、都会に住む醍醐味(だいごみ)ではないでしょうか。

 「上の家」への出入り口は、南側の坂道を上ったところにあります。こちらは、切り妻の屋根の形をそのまま生かした家型の空間。寝室だけは壁で仕切っていますが、天井に近い部分は欄間状に空いているので、つながりが感じられます。

 「上の家」では、ひとつの空間の中で、家事、食事、打ち合わせ、仕事が行われます。そこで、それぞれの機能を、キッチン、対面カウンター、丸テーブル、四角いデスクに割り当てました。座る人数に融通が利く丸テーブルが打ち合わせ用、デスクが仕事用で、どちらも天板の下に図面や模型材料を収納できるようにデザインしています。壁で仕切らなくても、性格の異なる家具を置くことで、空間の色分けができました。

 「下の家」「上の家」ともに家全体の空気がつながったワンルーム的な空間ですが、冷暖房効率はかなり高くなっています。以前住んでいた小さなアパートよりも光熱費が少なくて済むほど。これは、試験的に使ってみたセルローズファイバー(天然の木質繊維)断熱の効果でしょう。また、「下の家」のコンクリート部分は外断熱。躯体(くたい)が蓄熱してくれるので、冬暖かく、夏は涼しく過ごせます。

 今は、建材ひとつとっても、それがどこから来て、どうCO2を排出しているか考えながらつくることが求められる時代です。そこで、この家を建てるにあたっては、つくるプロセスも含めてデザインしようと考えました。構造に使った杉材はすべて地元である東京・多摩産です。家族で実際に山に足を運び、伐採や製材の現場にも立ち会いました。

 この体験を通じて、林業の危機的な状況を痛感させられました。私たちは、輸入材ばかりに頼らず、身近にある良質な資源を、もっと有効活用するべきです。

 何より、森で見た木々が製材されて自分の街にやってきて、家の形に組み上がるのを見る感動はひとしおです。まるで森の一部がそのまま自分の家になったように思えました。この感動を、これから一緒に家を建てる人にも、ぜひ味わってもらいたいと思っています。
(長崎辰哉/アトリエハレトケ)


DOUBLE DECKER HOUSE

建築データ
  所在地: 東京都大田区
  家族構成: 夫婦+両親
  竣工: 2008年11月
  敷地面積: 95.40平方メートル
  建築面積: 62.85平方メートル
延べ床面積: 134.52平方メートル
  構造・規模: 地下1階・地上2階、木造一部鉄筋コンクリート造り
  設計: アトリエハレトケ(長崎辰哉)
  写真: 矢野紀行
(*のみアトリエハレトケ)
連絡先  
  アトリエハレトケ
  代表: 長崎辰哉
  住所: 〒145-0062
東京都大田区北千束3-13-14-2F
  TEL: 03-6316-7227
  FAX: 03-6317-6480
  E-MAIL: tn_haretoke@mac.com
  URL: http://web.me.com/
tatsuyanagasaki/
HARETOKE/TOP.html
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