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こだわりのデザイナーズ住宅 Back number

Housing File 183「太子堂T邸」

家の中心は開放的なダイニング、縦格子で光の変化をもたらす



 外との一体感をもつ開放的なダイニングとキッチンを生活の中心に据えた家です。料理が好きな建て主夫妻の要望でした。

 また、以前住んでいたのが3階建ての家だったこともあり、今回は水平方向に広がりをもつ、大らかな家が求められました。そこで、中庭の周りにコの字形の建物を配し、中庭との連続性を感じさせる家を提案しました。

 南の道路から中庭に入ると、西側に玄関とリビングの棟、東側に水回りと書斎の入る棟が並びます。2つの棟をつなぐ北側の棟がダイニングです。西側の棟からダイニングにかけて片流れの屋根をかけ、東側の棟の2階に主寝室と子ども部屋を重ねました。

 ダイニングの南北両面の開口は、完全に開け放せるガラス戸としました。北側は隣接する住宅の植栽が見えるので、細長く設けたテラス越しに、緑を借景として取り入れました。ダイニングの床は庭や北側のテラスと同じ花こう岩張りで仕上げ、窓を開け放つと内外が一体化するようにしています。視線も風も南北に抜ける、大らかで気持ち良い空間にまとめました。

 ダイニング空間のアクセントとなるのが、片流れ屋根を支える縦格子。れっきとした構造体でありながら、格子の寸法と数を工夫することで、リビングとの間を緩やかに仕切るパーティションとなっています。上部にはトップライトを組み込み、格子を通して光を取り入れています。

 このパーティションは、2枚の縦格子をX字形に組み合わせたものです。縦格子は日本の伝統的なデザイン要素の1つですが、斜めに組み合わせると現代的な感覚になります。ボリューム感が加わると同時に、すき間から漏れる光がモアレを生み、面白い視覚的効果を得られるのです。

 奥に続くリビングは、ダイニングとは対照的な空間にしました。片流れの高い天井に、フローリングの床。窓は最小限に抑え、“こもって”過ごす感覚の落ち着いた空間としています。料理や食事、パーティーなどを行う活動的なダイニングが“動”であれば、こちらはゆっくりくつろげる“静”の空間です。

 家全体を通して、仕上げの素材はできるだけ石や木といった本物を使うようにしました。例えば床は、ムクのフローリングをオイルやワックスで仕上げたものです。

 なぜこうした素材にこだわるかというと、完成した時点が一番きれいな家ではなく、年を重ねることによって味わいが増す家であってほしいからです。

 家族が生活していく間に、建物にも少しずつその痕跡が刻まれるでしょう。でも、本物の素材をきちんと手入れしていけば、使っていくほどに深い味が出てくる。そんな日々の気遣いが反映されていくような、良い時間の重ね方をする家を提供したいと思っています。
(山中祐一郎/S.O.Y.建築環境研究所)


太子堂T邸

建築データ
  所在地: 東京都世田谷区
  家族構成: 夫婦+子ども1人
  竣工: 2010年4月
  敷地面積: 220.14平方メートル
  建築面積: 120.15平方メートル
延べ床面積: 157.68平方メートル
  構造・規模: 木造、地上2階建て
  設計: (建築)山中祐一郎、野上哲也/S.O.Y.建築環境研究所、(構造)岡村仁/空間工学研究所
  施工: コラム
連絡先  
  S.O.Y.建築環境研究所
  代表: 山中祐一郎
  住所: 〒162-0056
新宿区若松町33-6 菱和パレス若松町 11階
  TEL: 03-3207-6507
  FAX: 03-3207-6508
  E-MAIL: info@soylabo.net
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