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Housing File 186「伊勢の静居」

増改築を繰り返して住み継ぐ、新旧の棟が集まる3世代の家



 125坪の敷地に、30歳代の夫婦と幼い子ども、高齢の父親の3世代4人で暮らす住まいです。祖父の代から受け継いできた家は、増改築を繰り返した結果、少人数の家族には大きすぎ、住みづらいものになっていました。全部建て替えることも検討しましたが、結果的に一部を残して改修し、一部を改築することになりました。

 改修・改築を選んだ理由は2つあります。ひとつは、建て主が、この場所を離れて仮住まいするのを望まなかったこと。この家に住みながら、時間をかけて少しずつ、新しい生活に移行するプランを立てることになりました。もうひとつは、建て主がこまめに建物に手を入れてきたので、まだ新しい部分がたくさんあったこと。残すものと変えるものを選別する必要がありました。私たちの仕事は、こうしたプロセスの一切をコントロールすることでした。

 既存の建物は大きく3種類に分けられます。一番古い木造部分、比較的新しい鉄骨部分、そして、過去に増築した木造の防音室。このうち、現行の耐震基準にのっとって建てられた鉄骨部分を残して改修することにしました。一方、木造の2つは老朽化が進んでいたため、倉庫以外は取り壊すしかありませんでした。

 改修の手順はこうです。まず、鉄骨部分を改修して新たな住居とし、木造部分から鉄骨部分へ引っ越していただく。その後、木造部分を取り壊し、鉄骨部分を増築、さらにその隣に離れの防音室を建てます。最後に、住居と防音室、既存の倉庫の3棟をつなぐように別棟のカーポートを建て、全体がひとつの建物に見えるようにまとめました。これら一連の工事には1年半を要しています。

改修前・改修後イメージ

 住居部分は、既存の構造体を残しながらも、中はがらりと変えました。床の一部を抜いて吹き抜けをつくり、リビングの中央にダイナミックな階段を設けています。玄関との間にモダンな和室を増築し、客間としてもリビングの一部としても使えるようにしました。

 取り壊した防音室の扉は、父親の寝室の扉に付け替えています。改修時、まだ新しかったIHクッキングヒーターやエコキュート、太陽光発電も再利用しました。
 
 過去のものを工夫して使っているだけでなく、将来に向けての仕掛けもあります。建て主は、大学で彫刻を学び、現在は美術の先生をしている、器用でセンス抜群の人。これまでもDIYで住まいに手を加えていたほどで、新居にはたくさんの夢を描いています。今回は実現できなかったものも、いずれ実現できるよう、家のあちこちに配線や配管を用意しておきました。

 この家にとって、今回の改修は、長い歴史の中の通過点に過ぎません。建て主は、工事中も住み続けながら、取り壊し、改修、増築と、建築の過程をすべて体験し、記録に残していました。そのことはきっと、家への愛着をさらに深めたことでしょう。これからもずっと、大切に住み継がれていくことを願っています。
(高橋元氣+高橋つばさ/元氣つばさ設計事務所)


伊勢の静居

建築データ
  所在地: 三重県伊勢市
  家族構成: 夫婦+子ども1人+父
  竣工: 2009年5月
  敷地面積: 413.53平方メートル
  建築面積: 159.64平方メートル
延べ床面積: 253.94平方メートル
  構造・規模: 鉄骨造り2階建て(改修)+木造平屋(増築)
  設計: 元氣つばさ設計事務所
  施工: なかむら建設
  写真: 坂下智広
連絡先  
  元氣つばさ設計事務所
  代表: 高橋元氣+高橋つばさ
  住所: 〒103-0001
東京都中央区日本橋小伝馬町6-14 万文堂ビル2A
  TEL: 03-5877-6079
  FAX: 03-6324-5909
  E-MAIL: info@gt-aa.com
  URL: http://www.gt-aa.com/
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